第68話 マイネが持っていたある食材
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マイネさん手作りだという、クッキーのようなお菓子を食べながら、シュベールに滞在していたときのことを話していると、マイネさんが釣りのことについて聞いてきた。
「それで〜、釣りの方はどうだったのかなぁ?いいお魚は釣れた?」
「んっふっふ〜、マイネちゃん。私たちはちゃんとやり遂げたよ〜?」
「おぉ~っ、ということは……やっぱり釣れたんだねぇ〜。おめでと〜う。でで、卵はもう食べたぁ?」
「卵は今、柊君が美味し〜くしてくれてる……んだけど…………。」
「ふぇ?何か、残念なことでもあったの?」
落ち込んでいるミカミさんに、マイネさんは不思議そうに問いかけた。
「いやね……実は、シュベールサーモンの卵は白米と一緒に食べたかったんだけど、獣人族の国にしか無いみたいでさぁ。」
そうぼやくようにミカミさんが言うと、マイネさんがにへらと笑った。
「白米が欲しいの〜?」
「えっ!?」
「ちょっとまっててねぇ〜。」
するとマイネさんは、キッチンの奥の方へと向かって行った。それから少しすると、何かが詰まった紙袋を重そうに運んできた。
「白米ってコレのことかなぁ〜?」
そう言ってマイネさんが袋を開くと、その中には精米された白米がたっぷりと入っていたのだ。日本人のよく知るあの形……とは少し違うけど、間違いなくこれはお米だ。
「お米ーーーっ!!」
「やっぱりコレだったんだねぇ〜。いやぁ、ミルタ君からこの前面白そうな在庫を引き取ってて良かったよぉ。」
「それ私達が買い取るよ!!いくらで売ってくれる!?」
そう食い気味にミカミさんが質問すると、マイネさんはその白米をスッとこちらに差し出してくれた。
「おばさん、残念だけどこれの使い道わかんないから、ヒイラギ君達にあげる〜。」
「良いの!?」
「うん。でももし良かったら、それを調理するところを見せてほしいなぁ〜?」
「お安い御用だよ!!ねぇ柊君っ!!」
「はいっ、任せてください。」
時間もそろそろ仕込みを始めても良い時間だし、お手本を見せるがてら、ご飯を炊こう!
そうと決まれば早速仕込みを始めようか。
「マイネさん、厨房を借りても良いですか?」
「もちろん良いよぉ〜。」
そしてマイネさんの厨房を借りて、早速お米の調理を始めていく。
「まずは軽くお米をお水で、こうやってお米同士をこすりつけるように洗います。」
炊飯前の大事な作業……米研ぎ。さっきお米を見た限り、精米技術はかなり高いようだったから、あまり過度に研ぎすぎないように気を付けよう。
「このぐらいで洗うのは止めときます。」
「まだ少しお水が濁ってるけど、これでいいの?」
マイネさんが流した水を指差して問いかけてくる。
「はい、あんまり洗いすぎるとお米が割れたり、旨味が流れちゃうので、この辺で止めておきます。」
「なるほどね。」
「そしたらこのまま綺麗な水に浸けて、30分ぐらいおきます。」
「それは何のために~?」
「これをしておくと、お米が芯までふっくらと炊き上がるんですね。」
「ほむほむ……。」
俺の言葉を事細かにマイネさんはメモしていく。そして30分後、お米を水から取り出して計りで量を計った。
「1.2kg……だから、1.68Lのお水で炊きます。」
「そのお水の量は決まってるの?」
「えっと、お米を計る時ってグラムとリットルで計るんです。」
「ほうほう……。」
「それで、目安はグラムで計るなら1.4倍の水を……リットルで計るなら1.2倍の水をって法則なんです。まぁ、コレも食べる人の好みによるんですけど……。」
あとは土鍋で炊く……とか炊飯器で炊くとかそういう器具の違いでも水の量などは変わってくる。
今回は土鍋でもなく炊飯器でもない……ただの深底の鍋で炊飯をするから、基本に習って計量をした。
「まずはこの深底の鍋にお米を敷き詰めて、計量した水を注ぎます。そしたらこれを強火にかけて、沸騰させていきます。」
マイネさんの厨房の火口の火力はかなり高く、あっという間にポコポコと沸騰してきた。
「沸騰してきたら蓋をして、弱火に落として……今回は15分ぐらいじっくりと火を入れます。」
カタカタと沸騰して蓋が鳴る音をよく聞きながら、15分タイマーをかけて待っていると、マイネさんが鍋を凝視しながら質問をしてくる。
「これ……中でポコポコ沸騰してるけど、蓋取らなくていいの?」
「大丈夫です。下手に蓋を開けると、中の温度が下がっちゃって、芯が残っちゃうので……。」
「な〜るほど〜。」
そして15分を知らせるタイマーが音を立てる頃……鍋の蓋も音も段々と大人しくなってきていた。中の水分が少なくなってきている証拠だ。
「そしたら、一瞬……10秒ぐらい強火にして鍋の中の温度を引き上げてから、火を止めて蒸らします。」
「蒸らす時間はぁ?」
「コレも15分蒸らします。」
「ん〜っ、手がかかるねぇ〜。」
「でもその分美味しさは一入ですよ。」
本当は炊飯器とかがあれば楽なんだけど……もしかしたら米を食べる獣人族の国にはあるかもしれない。もし行く機会があったら探してみよう。
じっくりとお米を蒸らし終えて、ようやく蓋を開けると、中から粒が立ち、艶々ときらめくご飯が姿を現した。
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