第66話 シアの服の調達
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昼食を食べ終えたところで、思い出したようにドーナさんがあることを問いかけてきた。
「そういえば、さっきのシュベールサーモンの卵って食べないのかい?」
「あれは味が染み込むまでまだ時間がかかるので、今日の夜食べましょう。」
「だからドーナちゃんも今日の夜は一緒にご飯食べようね~?」
「ま、別にいいよ。大した予定もないし。」
「じゃあけって~い。お酒もたくさん用意しなきゃね柊君っ!!」
「そうですね。」
シュベールサーモンのメスを手に入れるという目的を達成し、今度はエミルに帰るためにまたシュベールの町の中に戻り、馬車を待っている途中、俺はあることを思い出した。
「あ、ドーナさん。馬車が来るまでまだ時間ありますか?」
「ん?まだあるけど……どっか行きたい場所でもあるのかい?」
「はい、実はシアの服を買ってあげたくて。」
「あ〜……よくよく見たらかなりボロボロだったんだねぇ。」
「そういうことなら、このミカミちゃんにお任せだよっ!!」
そう胸を張りながら、ミカミさんはシアの顔の前へと飛んでいく。
「この私がシアちゃんにピッタリな服を選んであげよう。柊君っ、任せてくれるかい!?」
ふんすふんすと鼻息を荒くしているミカミさん。こうなったこの人はもう止まらないし、止められない。
まぁ、こういうことは俺よりも詳しいのは間違いないし……ここは任せよう。
「じゃあお願いしても良いですか?」
「まっかせてくれたまえ!!さっ、シアちゃ〜ん、お洋服見に行こ〜♪」
「あっ……あぅ。」
少し戸惑いながら、シアは俺の方に視線を向けてくる。そんなシアの頭をポンポンと撫でながら、安心するように声をかけた。
「大丈夫、ミカミさんに可愛い服選んでもらっておいで。」
「ヒイラギお兄ちゃんは来ない?」
「俺も一緒がいいのか?」
そう問いかけると、シアは何度も何度も首を縦に振って頷いた。
「……わかった。じゃあみんなで行こう。ドーナさんもちょっとだけ付き合ってもらっても良いですか?」
「アタシは構わないよ。ただ待ってるだけってのも暇だしねぇ。」
ドーナさんはそう言って笑ってくれた。そして結局みんなで服屋へと赴くと、早速ミカミさんが目にも留まらない速さで動き、色々な服をかき集めてくる。
「シアちゃんなら、こういうフリフリのワンピースも似合うと思うなぁ〜。ショートパンツにパーカーを合わせても良いね!!」
まるで着せ替え人形のように、ミカミさんはシアに色々な服を合わせていく。
「あっ!!ちゃんと獣人用に、こういう尻尾が通る穴が空いたパンツもあるんだ〜。可愛いねぇ〜。」
一人で盛り上がって、買い物かごにポンポンと服を放り込んでいくミカミさん。その様子をシアと一緒に眺めている最中、シアに一つ質問をしてみた。
「シアはコレが可愛いとか、そういう服無い?」
「えっ……う〜ん。」
そう問いかけると、シアは近くにあった子供用の服のコーナーを吟味し始める。すると、1枚のTシャツを手にして、それをじっと見つめていた。
「それが気になる?」
「うん、このお魚さんが可愛い。」
シアが手にしていたTシャツには、中央にデフォルメされた大きな魚の絵が描かれていた。多分、この魚はシュベールサーモンだと思う。
「じゃあコレも買おうか。」
そんなこんなで10点近くシアの着替えを購入した後、シアはミカミさんに連れられて試着室へと向かっていった。
「それにしてもあの子も可愛そうだねぇ。同族のイザコザに巻き込まれるなんてさ。」
試着室で着替えをしているシアを待っている最中、ドーナさんがポツリと言った。
「国王を決めるんなら、誰にも迷惑のかからない方法でやりゃあ良いのにねぇ。それこそ一番強いやつが王になれるんなら、腕自慢を集めて大会でも開きゃいいのに……。」
「間違いないですね。」
「まぁ、向こうには向こうの文化ってやつがあるから、アタシらが口を突っ込むのは野暮ってもんなのかもしれないけど……ちょっとあんまりだよねぇ。」
そう話していると、試着室のカーテンがシャッと音を立てて開き、さっきの魚の絵が描いてあるTシャツと、ショートパンツに着替えたシアが姿を現した。
「ねぇねぇ、どうどう?めちゃくちゃ可愛くなったよね〜?」
ミカミさんの言葉に頷いていると、シアは少し恥ずかしそうにしながらも、笑みを浮かべる。
「え、えへへ……ヒイラギお兄ちゃんありがとう。み、ミカミお姉ちゃんも……。」
「いっ、今私のことミカミお姉ちゃんって言った!?うへへへ〜、いいよぉ〜。何回でもお姉ちゃんって呼んで〜♪」
お姉ちゃんと呼ばれたことが凄く嬉しかったようで、ミカミさんはシアのことをめちゃくちゃに撫で回していた。
「っと、そろそろ馬車が来る時間だよ。関所に向かおうか。」
「分かりましたドーナさん。ミカミさんも、撫でるのは何時でもできますから、行きますよ。」
「あっ、ヒイラギお兄ちゃん待って〜!!」
そしてシアと手をつなぎながら、俺達は関所に向かい、またエミル行きの馬車に揺られることになったのだった。
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