第62話 獣人の国にあるモノ
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一先ずシアのことを俺が預かることになり、ミカミさん達との顔合わせも終わったところで、ミカミさん達に任せていた釣りの釣果について俺は問いかけてみた。
「そう言えばミカミさん、シュベールサーモンは釣れました?」
「あ、そうそう!!柊君が帰ってきたら見てもらおうと思ってたんだよね~。ルカちゃん、持って来て~。」
そうミカミさんが声をかけると、ルカがこちらに3匹のシュベールサーモンを持ってきた。
「この大きめのやつはドーナちゃんが釣り上げたやつで、残りの2匹はルカちゃんと私が釣り上げたやつなんだけど……どう?」
「う~ん、残念ですけど全部オスみたいですね。」
「あちゃ~残念。」
ミカミさんが残念がっていると、俺の後ろに隠れていたシアが残念がっているミカミさん達を見て首を傾げる。
「そ、そのお魚さん、すごく美味しかったよ?」
「実は、俺達が狙ってるのはこの魚のメスだったんだよ。」
「オスとメスで何か違うの?」
「メスのお腹に入ってる卵がすごく美味しいらしくてさ、だからメスを狙っていたんだ。」
「……じゃあ、そのお魚さんはいらないの?」
「そんなことは無いさ。シアも食べてわかったと思うけど、オスはこの身がとっても美味しいんだ。だから全部料理にするよ。」
そう言うと、シアの表情がぱぁっと明るくなった。
「そう言えばさ~、シアちゃんのお口周りからずいぶん懐かしい香りが漂ってるんだけど、さっき何をシアちゃんに振る舞ったの?」
「あ、ちゃんちゃん焼きを作ったんですよ。」
「うわぁ~、めちゃくちゃ美味しいやつじゃん。お米があれば最高だったね。」
「あぁ~、間違いないですね。」
そんな会話をしていると、シアが恐る恐る口を開いて、とんでもない情報を話してくれた。
「お米……シア知ってる。」
「「えっ!?」」
「シアの国でみんな食べてるよ。」
その情報を聞いて俺とミカミさんは思わず二人で、お互いの顔を見つめあってしまった。
「お米があったのは良かったけど……。」
「問題は獣人の国が今大変なことになってるってことですね。」
少し悩んだ末、ミカミさんはドーナさんにあることを質問した。
「ねぇねぇドーナちゃん?」
「なんだい?」
「この国ってさ、獣人の国と貿易とかってしてないの?」
「前は結構盛んに貿易してたはずだけど、向こうがあんな感じになってからは、移民も断ってるし……貿易もやってないと思うけどねぇ。」
「う~ん、じゃあ今は無理かなぁ。」
がっくりと肩を落としているミカミさんに、ドーナさんはある可能性を話し始める。
「もしかすると……ミルタ商会なら、獣人の国から入って来た物品とか、まだ在庫があるかもねぇ。」
「それっ!!どこにあるの!?」
「ミルタ商会の本店は王都にあるけど、ミルタ本人なら10日に1回ギルドに物資を運びに来るよ。」
「じゃあその日にギルドに行ったら会える?」
「普通に会えるよ。何なら後でアタシが会いたいやつがいるって伝えとく。」
「助かる〜、お願いするよ。」
「ん、じゃあ10日後の午前中には来るはずだから、忘れんじゃないよ?」
「わかってるわかってる〜。そんな大事なイベント忘れるわけ無いよ〜。ねっ、柊君?」
「はい、ミカミさん。」
もしお米が在庫であったらかなり嬉しいな……。あったとしても数量が限られてそうだけど、それでもお米を食べられるのなら一向に構わない。
「さて……柊君、どうする?もう少しシュベールサーモンを狙って釣りをしてみるかい?」
「ドーナさんは、まだ時間大丈夫ですか?」
「ん、アタシのことは心配いらないよ。」
「それじゃあ、もう少し続けたいです。お昼時までまだ少し時間がありそうですから。」
「オッケー、それじゃあ続行〜!!」
各々自分の持ち場について釣りを再開していく、俺はシアの手を引いて、さっきまで使っていた釣り竿を握らせてみた。
「シアは釣りってやったことあるか?」
そう問いかけると、シアはフルフルと首を横に振った。
「じゃあ試しにやってみよう。この餌をつけた糸を湖に落として、お魚が食いつくのをじっと待つんだ。」
「お、お魚が食べたらどうすればいいの?」
「グイって手前に引っ張って、お魚を陸に釣り上げるんだ。俺がついてるから一緒にやってみような。」
「うんっ!!」
餌をつけた糸を湖に落として、近くにあった倒木に腰掛けると、俺の膝の上にちょこんとシアが乗っかってくる。
シアの頭を撫でながら魚が釣れるのを待っていると……突然、湖の水面で大量のシュベールサーモンがあわただしく飛び跳ね始めた。
「ん?なんだ?」
それとほぼ同時、シアの手にしていた釣り竿が大きく曲がり、危うくシアは湖の中に引き込まれそうになった。
「ひにゃっ!?」
「おっとっと、大丈夫?」
「うん、で、でもすごく……お、重い~っ!!」
「手伝うよシア。」
俺もシアと一緒に釣り竿を引っ張るが、さっき釣り上げたオスのシュベールサーモンとは比べ物にならないぐらい強い引きだ。
一瞬世界を釣り上げてしまったのではないかと不安になったが、確かにこの糸の先で何かが激しく暴れているのが伝わってくる。
何とか糸を切られないように、慎重に慎重に……少しずつかかった魚をこちらに引き寄せていった。
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