表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生料理人の異世界探求記  作者: しゃむしぇる
第一章 新たな生と異なる世界~ヒュマノ編~ 一節 職業魔物ハンター
60/301

第60話 ちゃんちゃん焼き

ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。


 早速俺はその場に火を起こし、マジックバッグから大きめのフライパンとまな板を取り出した。


「まずは本命のシュベールサーモンから調理していこう。」


 シュベールサーモンは、鱗をしっかりと落として、内臓を抜き、3枚に下ろしていく。


「おっ、大きな白子がでてきたな。」


 オスだから、お腹の中には大きな白子が入っていた。これは後で食べよう。


「後は3枚に下ろした身に塩と胡椒を振りかけておく。」


 綺麗なオレンジ色の身に塩と胡椒を振りかけていると、シアが鼻をムズムズとさせていた。


「は……くっしゅん!!」


「はは、ごめんな。胡椒が飛んでいっちゃったか。」


 シアに一言謝りながら、俺は調理を続けていく。


「後は骨を抜いて……切り身にしてフライパンに並べる。」


 そのフライパンの中には、シュベールサーモンの切り身が隠れるぐらい葉野菜をどっさりと入れて、上から少し塩とオーリオオイルを振りかけた。


「これでひとまず下準備は終了。」


 そのフライパンはまだ火にかけずに、俺はまた別の深底の鍋を火の上に置いた。そしていよいよあの魔法瓶の出番だ。


「味噌。」


 味噌と口に出すと、魔法瓶の中が味噌でいっぱいになる。それをスプーンで取り出して鍋の中にたっぷりと入れた。


「次は味醂と日本酒に……それから砂糖。」


 不思議な事に中の調味料が入れ替わる度に、前に入っていた調味料は綺麗にパッと消え、新しいものに入れ替わっていた。


「後はこれをじっくりと火にかける。」


 合わせ味噌を火にかけていると、香ばしい香りが鼻をくすぐったのか、シアが必死に鼻を鳴らして、鍋をのぞき込んでいる。


「凄くいい匂い……。」


「もうちょっとでできるからな。」


 合わせ味噌のアルコールを飛ばしたところで火から下ろし、今度はさっきシュベールサーモンとたっぷりの葉野菜を入れたフライパンを火にかけて蓋をした。


「後は葉野菜とシュベールサーモンに火が入るまで、待機だ。」


 この待っている間に、シアと少し会話をしてみよう。


「シア、少し聞きたいんだけど……キミはどうしてこんなところに?」


「えと、シアは荷物に隠れて人間さんの国に入ってきたの。」


「え?」


「シアの住んでた国……今、みんな王様になりたくて、どこでも戦いになってて。」


「……そういうことか。」


 内戦……いや権力争い?とにかく今、獣人の国はお互いがお互いを傷つけ合うような場所になっているらしいな。


「だ、だから……シアは殺されたくなくて人間さんの国に逃げてきたの。」


 また瞳に涙を浮かべているシアの頭を撫でながら、俺はまた1つ質問を投げかけた。


「わかった。シアのお母さんとお父さんは?まだ向こうの国にいるの?」


 そう問いかけると、シアはフルフルと首を横に振る。


「シア、ずっと独り。お父さんも、お母さんも知らないの。」


「……ごめん、少し辛いこと聞いちゃったな。」


 これ以上質問を投げかけるのは止めておこう。無駄に傷を掘り返すだけだ。


 シアの複雑な事情を少し理解したところで、フライパンの中に敷き詰められていた葉野菜がしっとりとし始めていた。


「んっ、そろそろいいかな。」


 フライパンの蓋を開けると、葉野菜に火が通った甘い香りと、魚の皮が香ばしく焼けている、いい香りがぶわっと溢れ出してきた。


 その香りがシアの鼻に届くと、さっきまで悲しそうな表情だった彼女の表情が少し和んだ。


「ふわ……すっごくいい匂い。」


「後はここにさっきの合わせ味噌をたっぷりとかける。」


 合わせ味噌をたっぷりと回しかけて、味噌と全体に絡むように葉野菜を混ぜていると、シアはもう我慢できなさそうで、必死に涎を飲み込みながら、尻尾を左右にブンブンと振っている。


 お皿にシュベールサーモン2切れと、葉野菜を盛り付けて、シアに手渡した。


「はい、お待たせ。シュベールサーモンのちゃんちゃん焼きだ。」


「こ、これ食べても良いの!?」


「あぁ、まだたくさんあるからお腹いっぱい食べると良い。」


「あ、ありがとう!!()()()()()()()()()!!」


 俺には兄弟がいなかったから、お兄ちゃんと呼ばれるのに慣れていなくて、少しこそばゆい。


「えと……い、いただきます!!」


 余程お腹が減っていたのか、シアはシュベールサーモンに豪快に齧り付こうとした……だが。


「ひにゃぁっ!!あ、あっつい。」


「ちょっと冷ましてあげようか?」


「う、うん……。」


 シアからお皿を受け取って、息を吹きかけながら粗熱を冷まし、少し湯気がおさまったところでまた彼女に返した。


「はい、これで多分大丈夫だと思う。」


「えへへ、ヒイラギお兄ちゃんありがとう。」


 そして、少し冷めたシュベールサーモンのちゃんちゃん焼きにシアは思い切り齧り付くと、言葉を発する暇もなく、凄まじい勢いで食べていった。


「美味しい?」


 そう問いかけると、シアは何度も大きく首を縦に振って頷く。


 あっという間に、お皿に盛り付けていたちゃんちゃん焼きを食べ尽くすと、少し物足りなさそうにシアはこちらを見た。


「おかわりいる?」


「うん!!」


「わかった。」


 結局、シアは今回作ったちゃんちゃん焼きを一人で全部食べ尽くしてしまった。


 幸せそうな表情で、お腹もまん丸に膨らんでるし、これでお腹がいっぱいになってくれたなら良しだ。


この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ