第54話 ダンジョンの守護者
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食事をみんなで楽しんだ後……ドーナさんはマジックバッグからテント等のキャンプ用品を取り出して、組み立てようとしていた。
「あ、ドーナちゃん。それ多分必要ないと思うよ?」
「……そういえばヒイラギの魔法でなんとかなるって、言ってたねぇ。どうするつもりなんだい?」
「ふっふっふ〜、それは今からのお楽しみ〜。」
ニヤリとミカミさんは笑うと、ピキュールの果汁を全て飲み干して、俺の方に飛んできた。
「さぁ、柊君っ……キミの想像力をフル活用する時だよ。」
「何をすれば良いんです?」
「その前に……私達が泊まっていた宿の部屋の構造を覚えているかい?」
「一応頭には入ってますけど。」
「それを魔法で再現してほしいんだ。多分、この地面とかを変形させて、アレを再現するイメージを脳で想像できればいけると思うんだよね。」
「なるほど……。」
俺はミカミさんに言われたイメージを、頭で必死に思い浮かべた。
(地面を粘土みたいに柔らかくして……あの部屋を創り出す。)
イメージしてから少し経つと、ドーナさんの驚く声が聞こえてくる。
「な、なんだい!?地面が動いて……。」
「大丈夫だよドーナちゃん。そこから少し離れて見守っていよう。」
眼を閉じて必死にイメージを頭の中で膨らませているから、目の前で何が起こっているのかわからない。ただ、マジックバッグを改造したときのように体から一気に何かが抜けていった感覚を感じたから、一度目を開けると……この空間にさらに一つ新たに個室が出来上がっていた。
「ふぅ、何とか出来た……みたいですかね?」
「ちゃんと再現ができてるか確認するために、試しに中に入ってみよっか。」
そしてその部屋の中に入ってみると、細かい内装の再現はできていなかったものの、寝具やクローゼットなどはしっかりと再現できていた。
「うんうん、ベッドまでちゃんと再現できてるね。……毛布の素材がレンガなのはちょっとあれだけど、ベッド自体はなんか案外低反発みたいで寝心地は悪くなさそうだね。」
「毛布ぐらいなら貸してあげれるよ。一応何枚かストックは持って来てるからさ。」
「あ、それ助かるよドーナちゃん。」
「ん、別にいいんだよそれぐらい。……ところで、この部屋にはベッドが一つしかないけど、ここにはヒイラギとミカミが寝るのかい?」
「もちろん、ドーナちゃんとルカちゃんの分の部屋も作るよね柊君?」
「へっ!?も、もちろんです。」
内心魔力が足りるかなぁ……とかなり不安だったが、なんとかもう2つ同じ部屋を創り上げて、今日は各々その部屋の中で一夜を過ごしたのだった。
翌朝、軽く焼いたパンをお腹に詰め込んでから、俺達はダンジョンの守護者がいるという部屋に繋がる扉の前に立った。
「さぁてと、みんな準備はいいかい?」
「ばっちりだよ~、ねっ?柊君?」
「はい、いつでも大丈夫です。」
「ルカは……って聞くまでもなさそうだねぇ。」
みんなの準備が整っていることをドーナさんは確認して、扉に触れた。すると、まるでこちらを誘うように独りでに扉が開いていく。それとほぼ同時に、俺はこの奥から嫌な気配を感じ取った。
「……何かいる。」
暗闇で向こうの様子は見えないけど、間違いなく何かがいる。しかも俺たちに敵対している何かが……。
警戒を強めていると、守護者の部屋に立てかけられていた夥しい数の松明に一斉に火が灯り、部屋の中が明るく照らされ、中央に鎮座するそれの姿が露わになった。
「ハッ、こいつはちょっと予想外だねぇ……。このダンジョンの守護者が強いことは予想はしてたけど、まさかキマイラが出てくるかい。」
ドーナさんがキマイラと呼んだそれは、獅子の頭と黒山羊の頭……そして大蛇の尻尾を持つ異形の魔物だった。
「こいつはちょっとヤバいよ。下手したらアタシよりレベルが上かもねぇ。」
顔から一つ冷や汗を流しながらも、ドーナさんは両手にガントレットを装着した。それを見て、意外そうにミカミさんが問いかける。
「ありゃ、ドーナちゃんも手伝ってくれるの?」
「……まさかだけど、ミカミはアレにヒイラギだけで勝てるって思ってるのかい?」
「うん。」
あっけらかんとしてそう即答したミカミさんの反応に、思わずドーナさんは頭を抱えながらため息を吐いた。
「はぁ……なら試しにやってみるかいヒイラギ?」
「えっ?」
「ヤバそうだったらすぐに助けに入るから安心しなよ。」
「え、えぇ……。」
ミカミさんのそんな言葉が引き金となって、俺は一人で戦うことになってしまった。とぼとぼとキマイラに向かって歩いて行くと、肩に座っていたミカミさんがビシッとキマイラの方を指さして言う。
「さぁ、柊君っ!!イリスちゃんが用意したプレゼントのために、この試練……サクッとクリアしちゃおう!!」
「そんなサクッとクリアできればいいんですけどね……。」
マジックバッグからレヴァを取り出して、キマイラの方に近づいていた時……キマイラの獅子の頭と黒山羊の頭の4つの瞳が俺を捉え、何の声とも形容しがたいけたたましい咆哮をあげた。
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