第53話 明日に備えて美味しい料理を
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まず手を付けるのはアヒージョの仕込みだ。アヒージョに使うのはクラーケンのゲソと、海辺でたくさん採ってきた貝類。それと香り付けとなるガリク。
「まずは火を起こさないとな。」
想像魔法を使って、俺はその場に4つの火を起こした。そのうちの1つの火で、採ってきた貝を塩茹でにしていく。
一度貝を茹でることで、アヒージョに使う身を外しやすくなる。
「お湯が沸く前にクラーケンのゲソを一口サイズに切っておいて……ガリクも微塵切りに。」
ガリクを微塵切りにしたら、2つ目の火に深底の鍋を置いて、その中にたっぷりオーリオオイルを注ぎ入れた。
「ここに微塵切りにしたガリクを入れて、じっくりと香りをオーリオオイルに移していく。」
オーリオオイルにガリクの香りを移している最中に、先ほど火にかけていた鍋のお湯が沸いた。
「よしよし、二枚貝も殻が開いてるな。取り出していこう。」
鍋から貝を取り出して、身を外していく。今回使うのは身の部分だけにして、肝とか内臓の部分は全て綺麗に取り除いた。
……今回料理に使わないのをいいことに、ミカミさんが巻貝の肝を美味しそうにつまみ食いしていたことには、今回は目をつぶっておこう。
「そしたらクラーケンのゲソと貝の身を、オーリオオイルの中に入れて、じっくりと煮込む。」
ひとまずアヒージョの仕込みは一旦終了だ。次に取り掛からなきゃいけないのは……。
「次はイカフライの仕込みと……お刺身の仕込みを同時にやってしまおうか。」
まな板の上にブロックに切ったクラーケンの身を置いて、フライに使う用の身は塩胡椒で味をつけて、小麦粉と卵を絡めた後、パン粉をたっぷりとまぶしていく。
お刺身に使う身は、薄皮をしっかりと取り除いた後、薄くそぎ切りにしてお皿の上に盛り付けていった。
「これでよし。さ、次は肉だ。」
まな板の上に血抜きしたミミックのタンと、さっき解体したワイバーンのモモ肉を置いた。
「タンの方は血抜きが上手くできてるな。意外とこうして見ると、筋っぽいところも少なそうだし、このまま少し厚めにスライスしてしまおう。」
ミミックのタンは柔らかそうなので、少し厚めにスライスして、塩胡椒でしっかりと下味をつけておいた。
「で、次はワイバーンのモモ肉。」
「出たっ、美味しいやつ!!」
いざワイバーンのモモ肉の仕込みに入ろうとすると、巻貝の肝をモグモグと口に入れながら、ミカミさんがこちらに飛んできた。
「コレで何を作るか決めたの?」
「はい、さっきはステーキにしましたけど、今回は唐揚げにしようかなって思いました。」
「唐揚げかぁ〜、コレはいよいよお酒が欲しくなって来たね。」
「あれだったら、さっき採ってきたピキュールを搾りますか?」
「おっ、いいね〜お願いするよ。」
「分かりました。」
そしてワイバーンのモモ肉を、一口サイズよりも少し大きめに切り分けて、それにも塩と胡椒でしっかりと下味をつけた。
「これで仕込みは一旦終了。後は全部一気に仕上げるだけだ。」
朝市で購入してきたフライパンと、アヒージョに使っている鍋よりも大きな深底の鍋を火にかけて、フライパンには少量の油を……深底の鍋にはたっぷりとオーリオオイルを注ぎ入れた。
「油が温まったら、小麦粉をまぶしたワイバーンのモモ肉を入れていく。」
それと同時進行で、フライパンでミミックのタンも焼いていく。
すると、瞬く間に良い香りがこの空間に充満し始め、みんなの視線が出来上がりつつある料理に釘付けになっていった。
「こうして見ると、やっぱりヒイラギの本分は料理人なのかもねぇ。めちゃくちゃ美味そうだよ。」
「あはは、ありがとうございます。」
そして一つ一つ完成した料理を皿に盛り付けていき、料理を中心にしてみんなで座った。
「ドーナさんもお酒飲みます?一応さっき採ったピキュールを搾ったやつもあるんですけど。」
「んっ、じゃあせっかくだしもらおうかねぇ。」
「ご、ご主人っ……様っ!!私の分は…………。」
「ルカの分もちゃんとあるよ。」
みんなドリンクはピキュールの搾った果汁に決めて、各々グラスを手に取った。
「じゃ、乾杯といくかい。」
「いぇ〜い乾杯!!」
「はい、乾杯です。」
「……乾杯。」
乾杯でグラスを軽く合わせた後、みんな一斉に料理を食べ始めた。
「私はまずこのお刺身から食べてみよ~っと。」
そしてミカミさんは、何かを探すそぶりを見せると、お刺身の隣に置いてあるレモモを絞った果汁と塩を混ぜたものを発見し、ハッと何かに気が付いた。
「そ、そうだったぁーっ!!しょ、醬油が……ないっ!!」
「あ、だから渋々それを醤油の代わりにしたんです。」
「うぅ……お刺身には醤油が欲しいなぁ。」
残念そうにそう呟きながらも、ミカミさんはクラーケンのお刺身にレモモ塩をつけて口に運んだ。すると、少し悲しそうに何度か頷いた。
「うん……うん、これでも十分美味しいけど、やっぱり醤油が欲しいね柊君……。」
「な、何とかそれは頑張ってみます。」
そんな悲しそうな表情を浮かべているミカミさんを、ドーナさんとルカは不思議そうに眺めている。
「な~に悲しそうにしてんだい?めちゃくちゃ美味いけどねぇ、この生のクラーケンもさ。」
「同意する。だが、私はこのパンくずをつけたクラーケンの方が好みだな。」
「違うんだよぉ2人ともぉ~、私と柊君にはお刺身にはこれっていう絶対的な調味料があったの~。少し悲しくなったから唐揚げ食べよっかな。」
俺達にとっては一口サイズでも、ミカミさんにとっては塊の肉にかぶりついているような感じで、豪快にかぶりついているように見えてしまう。
「んんっ!?これ最高に美味しいよ~、お酒が進んじゃうね。」
みんなが美味しく食べているのを確認したところで、俺は一番気になっていたミミックのタンに手を伸ばした。
「レモモの果汁をちょんとつけて……いただきます。」
ミミックのタンにレモモの果汁をちょんとつけて口に運ぶ……。
「ん~っ、これは高級なタンを食べてるみたいだ。脂がすごく乗ってて、プリッと噛んだ後にとろけるみたいだ。」
「あ、次アタシもそれ食べてみるよ。気になってたんだよねぇ。」
ドーナさんもミミックのタンを食べてみると、その美味しさに表情を緩ませていた。
「これこれ、マイネの店で食べたやつとおんなじだよ。またこうやって食べれるとはねぇ~。しかもダンジョンの中で……。こういう美味いのを食うと、明日頑張る気になれるよ。」
そうして俺達は美味しい料理をたくさん食べて、明日に待ち受けるダンジョンの守護者との戦闘に備えるのだった。
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