第50話 付与魔法vs付与魔法
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レヴァの刀身に魔法陣が刻まれると、青い炎がレヴァからブワッと吹き出した。
「おぉ……出来た。」
不思議な事に、こんなに近くに炎があるのに熱さはまったく感じない。これ、本当に使えるのかな……。
そんな疑問を抱いていると、デュラハンが赤い炎を纏った剣を構えながら、こちらに一気に距離を詰めてきた。
「っ!!」
体を屈めながら、体勢を地面スレスレまで低くしてこちらに迫ってきたデュラハンは、下から斬り上げるようにロングソードを振ってくる。
それに対して俺の体がとった行動は、真っ向から刃をぶつけ合うという行動だった。
しかし、刃同士がぶつかりあって鍔迫り合いの状態になるかと思いきや、俺の予想に反して青い炎を纏ったレヴァが、デュラハンのロングソードをアッサリと切り落としてしまった。
「さっすが。」
そしてそのままデュラハンにレヴァが迫り、切っ先が鎧に触れた瞬間……デュラハンの体が青い炎に包まれる。
「おぉっ!!」
デュラハンは青い炎に包まれると、一瞬にして灰になって消えてしまったのだ。
「うん、こういう魔法の使い方も面白いな。」
役目を終えたレヴァは、元の形に戻っていく。レヴァを鞘に戻してマジックバッグにしまっていると、こちらにドーナさん達が歩み寄ってきた。
「ヒイラギの魔法のレパートリーはどうなってるんだい?威力の高い攻撃魔法だけじゃなくて、エンチャントまでこなすって……。」
「どうどうドーナちゃん?惚れ直しちゃった?」
「ったく、バカ言ってんじゃないよ。」
からかいに行ったミカミさんを、ドーナさんが軽いデコピンで弾く。
「あいたぁっ!!」
その衝撃でくるくると吹き飛んで、ミカミさんは俺の手の中にスポッと収まった。
「いたたたた、う〜っ……暴力はんた〜い!!」
たんこぶを作って涙目になりながら、ミカミさんはドーナさんに抗議する。
「そんなの暴力の内に入んないだろ。ほら、ヒイラギも怪我がないんだし、早く先に進むよ。」
そう言って先に進んでいくドーナさんの後についていこうとすると、ミカミさんがクイクイっと俺の袖を引っ張った。
「柊く〜ん、回復魔法ちょうだ〜い。」
「回復魔法って言われても、どうやれば?」
「ん〜、多分……このたんこぶが引っ込むように思って魔法を使えばできると思う。」
「えっと……こんな感じですかね。」
頭の中でミカミさんの頭にできたたんこぶが、シュッと縮まって元に戻るようなイメージを想像すると、ミカミさんの前に緑色の魔法陣が現れた。
「おっ、きたきた。」
その魔法陣からキラキラと緑色の光が現れて、ミカミさんのたんこぶのところに降りかかると、みるみるうちにたんこぶがなくなっていった。
「う〜ん♪さっすが私の柊くんっ、すっかり良くなったよ。ありがと〜。」
「治ったなら何よりでした。」
そんな俺とミカミさんのやり取りを眺めていたドーナさんは、呆れたようにため息を吐いてポツリと一言口から言葉をこぼした。
「もう驚くのも疲れたねぇ……。」
「なになにドーナちゃん、そんな大きなため息ついちゃって〜。疲れた?柊君に治してもらう?」
「い〜ら〜な〜いっ!!」
それから海賊船の中をくまなく見ながら歩き回っていると、船の甲板の中心に下に続く階段を俺達は発見した。
「ん、船内をくまなく探してみたけど……特にお宝はなかったねぇ。」
「ね〜っ、こういう海賊船ならお宝を溜め込んでいる部屋があってもよさそうなものだけど、そういうの見当たらなかったもんね。」
「ヒイラギも何も感じなかったんだろ?」
「はい、俺も特に何も……。」
「じゃあやっぱりこの階層は、これで終わりってことなんだろうねぇ。」
ドーナさんは一度階段の奥をのぞき込んでから、こちらに再び視線を向けてきた。
「結構この階層で時間食ったけど、どうする?ここで1回休んでいくかい?」
「い、いやぁさすがにここではちょっと遠慮したいです。できれば次の階層とかで休憩は挟みたいですね。」
「わかった。」
ドーナさんは1つ頷くと、マジックバッグから時計のようなものを取り出した。
「今の時刻が16時……理想は次の階層の攻略は手早く終わらせて、安全な場所を見つけてキャンプするのが一番だね。」
「手早く攻略するカギになるのは、柊君の直感だね。」
「その通り、どこまでヒイラギの直感が冴えてるかで攻略の速さは変わってくると思うよ。」
「な、なんか責任重大なような……。」
「まっ、アタシはヒイラギの直感は信用してるよ。1階層も2階層も、ヒイラギがいなかったらもっと時間がかかってただろうからねぇ。」
そう言ってニコリとドーナさんは笑うと、俺の肩を優しく叩いてくれた。
「次も頼りにしてるよヒイラギ。」
「あ、ありがとうございます……。」
そんなドーナさんの指をきゅっとミカミさんは握ると、可愛いものを見るような目でドーナさんを見つめながら一言言った。
「ど、ドーナちゃん……もも、もしかして今のは遠回しな告白ってや……むぎゅっ!?」
「無駄話をする前にとっとと先に進もうか……ねぇ?ミカミぃ?」
額に青筋の浮かぶ偽物の笑顔で、ドーナさんはミカミさんの事を鷲掴みにすると階段を下っていってしまった。
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