第49話 現れた幽霊船
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「あ、柊君っあそこに大きな巻貝がへばりついてるよ。」
「本当ですね。これも夕食に使いましょうか。」
寄り道ばかりして食材をかき集めている俺とミカミさんの姿を見て、ドーナさんは一つ呆れたようにため息を吐いた。
「ヒイラギとミカミを見てると、とてもダンジョンを調査しに来た奴には見えないねぇ。どっちかって言うと、マイネみたいに食材を買いに来た奴みたいに見えるよ。……アンタもそう思わないかい?」
そう言ってドーナさんは隣にいたルカに声をかけていた。
「同意する。ご、ご主人様たちには警戒心というものが存在していないように見える。」
「……にしてもまさか、アサシンギルドのトップ暗殺者が今はメイドをやってるとはねぇ。」
「あんな要求をされては暗殺の仕事は受けれない。」
「そんな要求をした奴らの下でメイドをするのは、アンタにとってどうなんだい?自分の得意な仕事を奪われた恨みだって無いわけじゃないんだろ?」
「この妙な仕事を与えられて多少の抵抗はあるが、恨みはない。アサシンギルドの重役に比べて、ご主人様の金払いは悪くないからな。」
「結局は金で動くってわけかい。」
「ご主人様たちのことも信用しているわけではないが、金を払わない奴よりは信用できるからな。」
「ま、そりゃあそうだ。」
そんな会話をしていた2人のところに戻ると、ミカミさんがドーナさんのところに飛んでいく。
「2人とも何を話してたの~?」
「ヒイラギとミカミがダンジョン調査に来てるやつらには見えないって話してたんだよ。」
「あっはっは、いやぁ~ついつい楽しくてねぇ~。ねっ柊君?」
「はい、な、なんかすみません。」
「いや、いいんだよ。今のところ別に魔物が襲って来てたわけでもないし、仮に襲ってきてもアタシ達なら問題ないだろうからねぇ。」
それからは十分な食材も集まったので特に寄り道をすることなく、ダンジョンの階段を探して歩き回っていたのだが、突然さっきまであんなに雲一つない快晴だったこの場所に濃い霧が満ちてきたのだ。
「ん?なんか妙だねぇ。」
「海辺で霧かぁ……なかなかホラーっぽいシチュエーションだね。」
ぽつりとミカミさんがそんなことを言うと、一寸先も見えないような濃い霧の中から巨大な船が現れた。どうやら砂浜に座礁してしまっているらしい。
「これは船ですかね?」
「船は船でもただの船じゃない。こいつは海賊船だねぇ。」
「ずいぶんボロボロみたいだけど、ドーナちゃんどうする?」
「まぁ、何の意味もなくここにあるわけじゃないだろうし、ちょうど中に入れそうな穴もある。入ってみようか。」
船底に開いた大きな穴を通って船の中に入ってみると、心なしか空気がひんやりと冷たくなったような気がした。
「うっ、なんか急に寒くなったような……。」
「おや、柊君……もしかしてこういうホラーな雰囲気の漂う場所は苦手かい?」
「そりゃあ、あんまり得意ではないですよ。お化け屋敷とかもあんまり入ったことないですし……。」
「大丈夫さ、こういうそれっぽい場所って、意外と出てこないって相場が決まってるんだから。」
そうミカミさんが言った直後、俺は嫌な予感を感じ取った。
「な、何か来る?」
「え?」
嫌な予感のする方を見つめていると、何もない空間から鎧を着こんだ首のない人型の化け物が現れた。
「なるほどねぇ、デュラハンか。アンデッド系の魔物が出てきたねぇ。」
「ど、ドーナさん、あれって普通に倒せるんですか?」
「別に普通に倒せるけど、アンデッド系の魔物は体のどこかにある核を壊さないと、何回でも復活するんだ。そこだけ気をつければ、大丈夫だと思うよ。」
「わかりました。」
俺はレヴァをバッグから取り出してデュラハンに近づいた。すると、俺の肩にいたミカミさんがデュラハンの姿を見て一言呟いた。
「いかにも西洋系のお化けだね。私に普段の力があれば近づくだけで消し炭にできると思うんだけどなぁ。」
「是非ともやってほしいですよそれ……。」
「最初この世界に来た時に言っただろう柊君?この世界にいる私の分身には神の力というものが存在しない。だから力になりたくてもなれないんだよね~。」
「ちゃんと覚えてましたよ。ただ無いものねだりしたくなっただけです。」
レヴァを構えると、さっきワイバーンを倒した時とは違い、柄がぐんと伸びて薙刀のような形状に変わった。
「ん?そのレヴァも柊君があんまり近づきたくないってことをわかっているみたいだね。」
「それはありがたいんですけど、さっきの日本刀と違って、こっちの方がもっと扱いなんてわかんないんですよ。」
そう言うと、レヴァはまた形状を変えて日本刀のような姿に落ち着いた。
「うん、これならさっき扱い方はわかってるから戦える。」
レヴァを構えると、デュラハンがいわゆるロングソードと呼ばれる形状の武器を構えて、こちらに走ってきた。
「……っ、鎧を着てるのに意外と速い。」
あっという間に距離が縮まると、デュラハンは突きを放ってくる。それを一歩横に動いて躱すと、レヴァでデュラハンの右腕を切り落とし、蹴りを腹部に叩き込んだ。
「ふぅ……これで武器は奪った。」
そう思っていたのも束の間、デュラハンの切り落とされた腕から黒い煙が出て、床に落ちていた右腕を覆い、それが切り落とされた腕をデュラハンの元へと運んでいく。すると、切り落とされた右腕がデュラハンの腕の切断面にピタッとくっついてしまったのだ。
「そういうのも治るのか。」
こいつのどこに核があるんだろう……。奴の体の隅々に目を向けていると、ロングソードに向かってデュラハンは手を翳した。直後、魔法陣がロングソードに刻まれて炎をまとってしまったのだ。
「そういう魔法……カッコイイな。」
俺がそう思った次の瞬間、レヴァの刀身に魔法陣が刻まれて光を放ち始めた。
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