第46話 ワイバーンのモモ肉
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ワイバーンの解体をするのは初めてだが、今まで経験した技術を応用すれば何とかなる……はず。
「まずは刃が入るか確認……。」
レヴァの切っ先をワイバーンに当ててみると、ワイバーンの鱗と皮が一緒にするりとリンゴの皮のように剝けてしまった。
「刃が入るかどうかは問題なさそうだな。後はモモ肉の根元の関節まで包丁を入れて、切り落とす。」
これでワイバーンのモモ肉が片方取れた。これと同じようにもう片方の足も切り取ってしまう。いざワイバーンの足を手に持ってみると、かなりずっしりとしている。
「こうやって見ると、大きな鳥のモモ肉みたいな感じに見えなくもないな。」
なんか美味しそうに見えてきた。ローストチキンみたいに焼いて、豪快にかぶりつきたい気分だ。
「このままだと大きいからもう少し細かく解体しようか。」
大きなワイバーンのモモ肉を、普通の鶏肉のモモ肉と同じぐらいの大きさにさらにカットしていく。そのついでに血がたまっている血管を綺麗に取り除いていった。
「柊く~ん、な~にしてるの~?」
「あ、ミカミさん。今ワイバーンのモモ肉を食べられるように下処理してたんです。」
「えっ、ワイバーンの肉も食べれるの?」
「はい、さっき鑑定を使ってみたら、モモ肉は食べれるって書いてあったので、せっかくなら食べて見たくないですか?」
「うん、めっちゃくちゃ気になる。」
「ちょっと試食用に一本焼いてみようと思います。」
想像魔法で火を起こし、マジックバッグからフライパンを取り出した。火の上にオーリオオイルを馴染ませたフライパンを置いて、温めている最中にワイバーンの肉に下味をつけていく。
「今回は肉そのものの味を楽しみたいから、味付けはシンプルに塩と胡椒だけでいきます。」
「いいね~、食べたことのない食材の価値を把握するにはそれが一番だと思うよ。」
満遍なくワイバーンの肉に下味をつけた後、熱々になったフライパンに投入した。すると、ジュウゥ……と肉の焼けるいい音が辺りに響く。それを聞きつけたドーナさん達もこちらにやってきた。
「もしかしてワイバーンの肉を焼いてるのかい?」
「そうです、良かったらドーナさんもどうですか?」
「ん、ちょっと昼飯がもの足りなかったから、ありがたくもらうよ。」
「ご、ご主人様……わ、私の分は……。」
おずおずとしながらルカは自分の顔を指さして問いかけてきた。
「もちろんルカの分もあるよ。」
そうルカに言うと、彼女は子供のようにぱぁっと表情を明るくさせた。なんか、彼女が元一匹狼っていうアサシンギルド最強の暗殺者だったっていうのが、こういう一面を見ていると疑問に思えてくるな。
そしてみんなワイバーンの肉を焼いている光景に釘付けになっていると、俺たちのいる空間が、肉の焼けるジュウという音や脂の弾けるパチッパチッという心地の良い音だけが響く、不思議な空間へと変貌を遂げてしまっていた。
それがしばらく続くと、ワイバーンの肉にこんがりとした焼き色がつき、辺りにいい香りが充満し始めた。
「ふぉ……めちゃくちゃいい匂いがするね。」
「さっき飯食ったばっかだけど、なぁんでこう肉が焼けてるところを見ると腹が減ってくるんだろ。不思議なもんだよねぇ。」
「も、もうそろそろ、わ、私の理性が……。」
みんなが涎を必死に飲み込みながら、焼きあがる瞬間を待ち望んでいる。
「うん、そろそろいいかな。」
ワイバーンの肉をフライパンから取った後、俺が購入していた白いパンに挟んでサンドイッチにしてからみんなに配った。
「これがドーナさんの分、これがルカの分。最後にこれがミカミさんの分です。」
「ありがと~柊君っ!!」
「ありがとうヒイラギ。」
「いただきます、ご、ご主人様。」
そしてみんなで一斉にワイバーンの肉を挟んだサンドイッチにかぶりついた。
「んんん~~~っ!?なにこれ美味ぁっ!!」
「竜種の肉は美味しいってマイネから聞いてたけど、マジで絶品だねぇこれは……。」
「~~~っ!!こんな美味い肉食べたことないっ……。」
みんな絶賛しているワイバーンの肉は、今まで食べてきた肉の常識を覆すほどに美味しい肉だった。食感はまるで上質なヒレ肉を食べているかのようで、噛むとじゅわっと甘く旨味の強い肉汁が溢れ出してくる。
「これは今日の夜が楽しみだなぁ。」
「ちなみにさ、今日の夕ご飯はこのワイバーンの肉と、ミミックのタンを使って何を作るの?」
「ミミックのタンはタン塩にしようかなって思ってて、このワイバーンの肉は……ちょっとまだ未定です。」
「んふふ、夕ご飯のお楽しみってやつだね?俄然楽しみだよ!!」
「ダンジョンを探索しながら夕ご飯のメニューは考えておきますね。」
そしてみんなお腹を膨らませたところで立ち上がると、階段の周りに集まった。
「うっし、腹も膨れたし、そろそろ探索に戻ろうかねぇ。」
「次が3階層ですね。」
「そ、何が待ち受けてるかわかんないから気持ちを切り替えていくよ。」
今度は上機嫌なドーナさんを先頭に、俺達は3階層へと続く階段を下って行った。
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