第43話 2階層 森林ステージ
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イリスさんからの奇妙な贈り物をもらったところで、いよいよ俺達は階段を下って2階層へと歩みを進めた。
2階層へと続く階段を下りきると、今度俺たちを迎えてきたのは鬱蒼とした森だった。
「ここ、ダンジョンの中ですよね?」
「そのはずだけど……上を見上げると空が見えるね。」
不思議なことに、ここはダンジョンという地下の世界のはずなのに上を見上げると、青空が見えているのだ。
「ダンジョンの中は、地下の世界ってわけじゃなくて、そもそも違う空間らしいんだよねぇ。」
「へぇ、じゃああの空も本物ってことなんだ。」
「前にダンジョンの空が見えるところで、どこまで上に上がれるかって実験があったんだけど、本来壁があるはずの場所よりも、さらに上まで上がれたらしいんだ。」
「な~るほどね。……それで、さっきは迷路のゴールに行けばよかったわけだけど、今回はどうすればいいの?」
「基本的なダンジョンの攻略の流れは全部同じだよ。階層のどこかにある階段を見つけて、どんどん下に行くだけさ。」
「この鬱蒼とした森の中から階段を探すんですか……。」
ダンジョン攻略が簡単じゃない理由が少しわかった気がする。ドーナさんの話では上の空はどこまでも続いてるみたいだし、この森がどこまでも広がってる可能性もあると思う。
「時間はかかるだろうけど、ダンジョンの階段がある周辺は必ず開けてる場所だから、見つけられないことは無いよ。それに今回は豪運のヒイラギもいるし、案外簡単に見つかりそうな予感がするんだよねぇ。」
そして、またしても俺が先頭に立って、直感の赴くままにこの階層を探索することになった。しばらく進んでいると、目の前に果物が実っている木が見えてきた。
「あっ!!何か果物が実ってるよ柊君っ!!」
この世界の果物にすっかり魅了されているミカミさんは俺の肩から飛び立つと、果物が実っている木に向かって飛んでいき、桃のような果物に全身でしがみついた。
「ん~~~っ、よいしょっ!!」
そして全身の力を使ってその果物をもぎ取ると、こちらに運んで来た。
「柊君、剥いてちょ~だい?」
「これ、毒とかありませんか?ちゃんと食べられる果物です?」
「多分大丈夫だよ。なんせ、私の直感がこれは美味しいって言ってるからね!!」
ミカミさんはそう言ってるけど、本当に大丈夫かなぁ……。少し不安になりながらも、調理用に購入したナイフを取り出そうとマジックバッグに手を入れた。するとマジックバッグから出てきたのは、さっき異常な行動を見せたイリスさんからの贈り物の包丁だった。
「あれ?取り出そうと思ったものと違う。これじゃないんだけどなぁ。」
気を取り直して、俺はもう一度調理用に買ったナイフを頭の中で思い浮かべながらマジックバッグに手を入れるが……。
「……何も出てこない。お前……まさかさっきみたいに取り込んだのか!?」
右手の包丁に向かってそう問い詰めるが、相手は包丁だ。反応なんか返ってくるわけがない。
「ありゃ、柊君が買ったナイフも取り込まれちゃった?」
「そうみたいです。」
「なんでまた柊君の刃物ばっかり取り込むんだろうね?もしかして、自分だけ使ってほしいからとか?」
「まっさか、包丁にそんな感情があるはずが……。」
そう口にしていた途中で、なぜか俺が手にしていた包丁の紅い色が少し濃くなった。まるで恥ずかしがるかのように……。
「……なんか目に見えて紅くなったね。」
「もう何が何だかわかんないですよ。」
一つ大きくため息を吐きながら、結局その包丁でミカミさんが採ってきた桃のような果物を剥くことにした。ここまでさんざんこの包丁には驚かされてきて、これ以上驚くことは無いと思っていたのだが……この包丁を果物にちょんと当てたとき、驚くべきことがまた起こった。
「……なんか刃を当てただけで果物の皮が全部剥けちゃいましたけど。」
自分でも今何が起こったのかわからない。でも、この包丁の刃を果物に当てた瞬間……果物の皮がつるんと剥けて落ちたのだ。
「それがこの包丁の本当の力なのかな?」
「どうなんでしょう。」
疑問に思いながらも、その果物をくし型に切ってミカミさんに差し出した。
「はい、ミカミさんどうぞ。」
「ありがと~柊君。さっそくいただきま~す。あみゅっ!!」
大口を開けてミカミさんは勢いよく、その桃のような果物にかぶりついた。次の瞬間、一瞬驚いた表情を浮かべ、その後に幸せそうな表情に変わった。
「んまぁ~い♪」
「どんな味なんです?」
「味はね~桃とリンゴを足したような味なんだけど、すっごく特徴的なのがこの果物……多分アルコールが含まれてるね。」
「え?」
アルコールを含んだ果物と聞いて、ドーナさんが何か思い当たったらしく口を開いた。
「あ、それ多分マイネの店でアタシ食べたことあるかもねぇ。アタシにも少しくれないかい?」
「どうぞ。」
「ん、ありがと。」
くし型に切ったその果物をドーナさんも口に放り込んだ。すると、美味しさに少し微笑みながら大きく頷いた。
「うん、マイネの店で食べたやつに間違いないね。確か、ピキュールって名前だったはず。獣人族の国で採れる果物ってマイネが言ってたのを覚えてるよ。」
「へぇ~、せっかくだから何個か採っていこうよ柊君。」
「わかりました。」
ピキュールという果物を何個か木から収穫して、俺達はまた探索に戻るのだった。
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