第41話 意外な可食部位
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ミミックの舌の上からその金色の鍵を拾い上げて、よく観察してみた。
「うん、ただの鍵みたいだけど……。」
「鍵がこうやってわざわざ出てくるなら、どこかに開けれるようなものがあるんじゃないかな?」
「じゃあ一先ずしまっておきます。」
出てきた鍵をマジックバッグの中にしまうと、言い争っていたドーナさんとルカがこちらに歩み寄ってきた。
「おっ?ミミックの舌が飛び出してるじゃないかい。」
好奇の眼差しでドーナさんはミミックの分厚い舌を眺めている。
「ミミックの舌が何か?」
「前にマイネの店でミミックの舌のステーキを食べたことがあるんだけど、あれがすごく美味しかったんだよ。」
日本でも豚とか牛のタンは美味しいからよく食べられてるものだけど……本当にミミックのタンも食べれるのかなぁ。でもドーナさんが美味しいって言ってたし、しかもマイネさんのお店で出されたものらしいから、きっと食べれるんだろう。
「……じゃあ、試しに切り取って持って行きますか。」
俺はミミックの口をこじ開けて、そのタンを根元から切り取った。触った感じはぷにぷにでふかふかしてて柔らかい。焼いたらどうなるのか……気になるな。
「持って行く前に下処理だけ済ませておきますね。」
マジックバッグの中から、今朝買い物をしたときにもらった革袋を取り出して、その中に水をたっぷりと注いだ。注いだ水が漏れてこないことを確認して、その水の中に多めに塩を入れた。
「あとはこのタンの血管にナイフで傷をつけて血が出やすいようにして……塩水の中に入れておく。」
この塩水の中にしばらく入れておけば、血が綺麗に抜けるはず。ミミックのタンと塩水の入った袋をマジックバッグの中に入れて俺は立ち上がった。
「お待たせしました。」
「なんかずいぶん慣れてる手つきだったけど、ヒイラギはミミックの舌を料理したことあるのかい?」
「いえ、ただ他の動物の舌は何度か料理に使ったことがあるので、それと同じような処理をしただけです。」
「つまりは、応用ってわけだねぇ。」
「そういう事です。」
ミミックと遭遇したあと、目の前の分かれ道を俺の直感を信じて今度は左に道なりにず~っと進んでいくと、今度は目先に少し広い部屋が見えてきた。
「ん?通路じゃない?」
疑問に思いながら一歩踏み出すと、目の前に見えている開けた部屋の方から嫌なものを俺は感じ取った。
「……嫌な感じがする。」
「ここまで魔物にはミミックしか会わなかったけど、どうやらアレとの戦闘は避けられないみたいだね柊君。」
ミカミさんが指さした先には、まるでこちらを待ち構えるように仁王立ちしているレンガでできた巨人の姿があった。
「アイツはゴーレムだね。平均レベルは60、見た目以上に硬いから半端な物理攻撃じゃ通じないよ。」
「わかりました。やってみます。」
ドーナさんからゴーレムについて説明してもらった後、俺は戦闘用のナイフを抜いてゆっくりと仁王立ちして動かないゴーレムへと近づいていく。一歩一歩踏み出す度に、嫌な感じがどんどん強くなっていき、目の前に立つとゴーレムの目のところに赤い光が2つ灯った。
それとほぼ同時、丸太のような腕が俺に向かって振り下ろされる。その攻撃を半歩引いて躱し、ナイフを肘の関節に向かって突き刺した。しかし、ゴーレムはまったく痛がる様子も見せずにそのまま腕を横に薙いでくる。
「おっと!!」
バックステップで後ろに下がりながらナイフで腕を切りつけてみるが、鈍い金属音が響いて火花が散るだけで全く効果がない。
「ドーナちゃんが言ってた通り、めっちゃくちゃ硬いみたいだね。」
「関節は多少柔らかいみたいですけど、そのほかは駄目ですね。」
「こういう時はやっぱり魔法だよ柊君。あの人食いマンドラゴラの時みたいにレーザーで消し飛ばせばいいのさ。」
ミカミさんの助言通り、俺は頭の中で強く人食いマンドラゴラを倒したあの魔法を思い浮かべた。すると、ゴーレムに向かって翳した右手の前に大きな魔法陣が現れる。その直後、魔法陣から放たれた巨大なレーザー光線がゴーレムを呑み込み、跡形もなく消し去ってしまった。
「うん、物理に強い敵は魔法に弱い。鉄板の法則だね。」
ミカミさんが何度も頷いていると、レベルアップの通知が来た。
『レベルアップに必要な経験値を満たしたためレベルが上昇し、レベル33になりました。レベルアップしたためステータス情報が更新されます。』
「あ、レベルアップしました。」
「2倍ぐらいレベル差があったからね~、経験値も美味しかったんだね。まっ、それでも柊君の敵じゃなかったわけだけど。」
レベルアップの通知画面に目を通していると、こちらにドーナさん達が歩み寄ってきた。
「怪我はないかい?……って野暮な質問だったかねぇ。」
「ドーナさんがゴーレムについて教えてくれたおかげで、何とか大丈夫でした。」
「そいつはあんまり関係なかった気もするけどねぇ。」
ポリポリとドーナさんは自分の頬を指で掻きながら、部屋の奥の方に目を向けた。
「ゴーレムもあっさり倒すし、おまけに迷路も一発クリアかい。やっぱりとんでもないねぇ。」
少し呆れながらそう呟いたドーナさんの視線の先には、更に下へと続く階段が見えていた。
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