第37話 ダンジョン調査依頼
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先払いで金貨を50枚ルカに手渡した後、ドーナさんがこっちを見てきて一つ質問を投げかけてきた。
「今日は何か依頼受けてくかい?」
「そうですね、意図せずメイドを雇っちゃったので……。手ごろな依頼とかありますか?」
「昨日ほどの稼ぎにはならないと思うけど、ある程度金になる依頼ならゴロゴロあるよ。ちょっと待ってな。」
ドーナさんは立ち上がると、依頼書が挟んであるファイルを取りに行ってくれた。2冊ぐらいファイルを手に持って戻ってくると、すぐにそれを広げて見せてくれた。
「ヒイラギ達が手伝ってくれてるおかげで、このファイルの中にある依頼も少しずつ減ってきたよ。どうしてもアタシ一人じゃ限界があるからねぇ。」
「貢献できてるならよかったです。」
そして、ファイルをパラパラと捲っていくと、何度か見たような依頼の中に1枚真新しい依頼書が挟まっているのを見つけた。
「あれ、この依頼は……。」
「ん、あぁそれは昨日入って来たばっかの依頼だね。」
「どれどれ~?」
ミカミさんと一緒にその依頼書に目を通してみると、普通の依頼とは違って魔物を討伐してほしいというものではなかった。
「魔物の討伐依頼じゃなくて、ダンジョンの調査依頼?」
「ダンジョン?」
「ダンジョンっていうのは、突発的に世界中のどこにでも現れるおかしな迷宮だよ。」
「ほぇ~、それって人が住んでるところとかにも出てきたりするの?」
「いや、どう原理かはまだわかってないけど、基本的には人が住んでる場所から離れたところに出現するよ。」
「ならまぁ、突発的に現れるものでもあんまり迷惑じゃないね。」
「それがそうでもないから、ダンジョンってのは厄介なのさ。いくら人里離れたところに出現するとはいえ、ダンジョンを最下層まで攻略しないとダンジョンの中で湧いた魔物がいずれ溢れ出してきて、大変なことになっちまうんだよ。」
「わぁぉ、そりゃあ大変そうだね。」
「大変だからこそ、アタシ達に依頼が回ってきたってわけさ。」
そう説明を聞きながら、依頼書に目を通しているけど、この依頼書には大事な部分が欠けていることに気が付いた。
「今見てて気づいたんですけど、この依頼書の報酬のところが空白なのは、いったいどういう事なんです?」
「ん、いいところに気が付いたねヒイラギ。そのダンジョンの調査依頼には、報酬金っていうものが無い。ただその代わり、ダンジョンの中で見つけたものは全部持ち帰っても良いってことになってるのさ。」
「え~、絶対お金が報酬の方がやる気出ると思うけどなぁ。」
ミカミさんのその言葉にルカも何度も頷いている。
「ダンジョンの中に、価値の高いマジックアイテムなんかが眠ってることがあってねぇ、それを持って帰って売り払えば……一攫千金のチャンスってわけさ。」
「報酬金が設定されてないのにはそういうわけがあったんだね。」
「そういうこと。」
そうドーナさんが説明してくれていると、俺たちにミースさんが飲み物を持って来てくれた。
「ちなみに、ドーナさんが魔物ハンターのリーダーになる前はダンジョンの調査依頼には、ちゃんと報酬金があったんですよ?」
「え、そうなんですか?」
「はいっ、ダンジョンの調査依頼の報酬はもともと金貨50枚って一律だったんです。そこがどんなに危険度が高いダンジョンでも……。」
「それさぁ、依頼を受ける人減らない?」
「事実、もともとダンジョンの調査依頼の人気ってあんまりなかったんですよ。だから、ドーナさんがリーダーになってすぐに、ダンジョンの対策委員会に対して今の方式に変更しろ~って、議会に殴り込みに行ったんです。」
「ほへぇ〜……さっすがドーナちゃん。やるねぇ〜。」
「あんまりにも危険度と報酬額が見合ってなかったからねぇ……。普通に文書で送ったら無視されるだけだから、直接行っただけだよ。」
少し恥ずかしそうに、頬をポリポリと指で掻きながらドーナさんは言った。
「そのおかげで、ダンジョン調査は魔物ハンターの人達から人気の依頼になったんですけど、昨日舞い込んできたその調査依頼はちょっと難易度が高くて……。」
「なんて言ったって、まぁ委員会が定めてる危険度のレベルがマックスだからねぇ。普通の魔物ハンターには任せられないよ。」
「私たちならいいの?」
「ヒイラギ達なら……まぁ任せてもいいけど、ヒイラギもミカミもダンジョンは初めてだろ?」
「うん。」
「だからもし2人がその依頼を受けるっていうんなら、アタシがまた同伴してくよ。ちょっとぐらいダンジョンを知ってる人間がいたほうが助かる……だろ?」
少し上目遣いでこちらを見てきたドーナさんを見て、ミカミさんは、まるでとてもかわいい動物を見た時のように目をキラキラと輝かせながら、口元を押さえていた。
「も~っ、そういう反応可愛いぞ~ドーナちゃ~ん♪じゃあまたデートしよっかぁ~♪」
「ばっ……だからデートじゃないっての!!」
俺がサインするよりも先に、ミカミさんはドーナさんの胸ポケットに差してあったペンを手に取ると、サラサラと依頼書に俺の名前を書き込んでしまったのだった。
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