第36話 メイドの第一歩
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ルカのメイド服を購入した後、ギルドへと向かって歩きながら、ミカミさんがメイドとしてのいろはを彼女に教えていく。
「さっきの復習だよルカちゃん。キミが仕える柊君のことは何て呼ぶのかな?」
「ご、ご主人様……。」
「うんうん、さっきの復習ができてて偉い偉い。じゃあ私のことは何て呼ぶのか、覚えてるかな?」
「ミカミお嬢……様。」
「はい偉い。いいよ~、その調子~。今日のところは一先ず、柊君をご主人様と……私のことはミカミお嬢様と呼ぶ練習をしようね。メイドさんはご主人様を敬うお仕事だから、それを忘れないように。」
「しょ、承知しました。」
「うん、偉いよ~ルカちゃん。」
ミカミさんはルカのことを褒めちぎって、メイドとして成長させようと考えているらしい。まぁ、暗殺以外に得意なことがないって、自分でもわかっているルカにだからこそ、優しくしているのかもしれない。
下手に何も心得がない人にスパルタで物を教え込んだら壊れちゃうかもしれないからな。
「ひ、一つ質問がある……のですが、本当に1か月メイドをやれば白金貨1枚くれる……んですか?」
たどたどしい敬語でそう問いかけてきたルカに、ミカミさんが答えた。
「もちろん、報酬はしっかり払うよ。何なら前金で金貨50枚払ってもいいけど、そのほうが良い?」
「できれば……。」
「じゃあ柊君、ギルドに行ったら白金貨1枚を金貨に両替してもらおうか。それで金貨50枚を先にルカちゃんに支払おう。」
「わかりました。」
ルカの信用を得るために、給料の50%を先払いにする約束をした後で、ミカミさんがルカに向かって一つ質問を投げかけた。
「時にルカちゃんさ、白金貨1枚のお給料って言われたときに、ずいぶん目を輝かせてたけど……アサシンギルドの一匹狼だったんだし、報酬もずいぶんもらってたんじゃないの?」
「いや、私は毎日金貨1枚しかもらっていなかっ……ませんでした。」
「え?暗殺の依頼額って結構高いんじゃないの?」
「依頼額のほとんどはギルドの重役の懐に入る……んです。」
「ってことは働き損じゃん。よくそんなところで働いてたね?」
「私は捨て子だっ……でしたから、働き口がそういう場所しかなかった…んです。」
「なるほどね、だから暗殺しか得意なことがないんだ。理解したよ。」
そんな会話をしている間にも、俺達はギルドについてしまった。中に入ってみると、今日も変わらずドーナさんが酒場のテーブル席で何か書類作業をしていた。
「ドーナさんおはようございます。」
「ドーナちゃんおはよ~!!」
「ん、おはよう……って、なんでそいつと一緒にいるんだい!?」
ドーナさんはルカの姿を見るなり、戦闘態勢に入った。
「あ、ドーナちゃん安心していいよ。今日からルカちゃんは私達が雇ったんだ。」
「雇ったぁ?なんでまた……。」
「ルカちゃんに、アサシンギルドにもいられなくて、仕事を探す暇もないから何とかしろ~って泣きつかれちゃってさ。」
「そ、そんな風には言って……。」
「まぁ、そういうわけでルカちゃんは今日から私と柊君のメイドとして働くことになったから、一つよろしく頼むよドーナちゃん。」
「……アサシンギルドの一匹狼をメイドにって、やっぱりあんたはとんでもないこと考えるねぇ、ミカミ?」
「あっはっは、それほどでもないよドーナちゃん。」
苦笑いを浮かべるドーナさんとは対照的に、愉快そうに高笑いするミカミさん。そんなやり取りをルカと一緒に眺めていると、ドーナさんが思い出したように言った。
「あ、そう言えば今日は金預けてくかい?昨日結局、飯を奢るとかそういう話になって後回しにしちまってたけど……。」
「お願いしたいです。」
「はいよ、ほんじゃ……ミース、ちょっとこっち来れるかい?」
「はーい!!ただいま行きますっ!!」
ドーナさんがそう声をかけると、すぐにミースさんがこちらに駆け寄ってきた。
「ヒイラギさん、ドーナさんからお話は伺ってました。お金を預けたいそうですね?」
「はい、白金貨を60枚ぐらい預かってほしいんです。」
「かしこまりました。ではこちらにお金の方をお願いします。」
俺はミースさんに差し出された黒い板の上に白金貨を1枚1枚数えながら並べていった。
「59、60っと、これでお願いします。」
「はい、確かにお預かりいたしました。」
「それと、この白金貨を金貨に両替してほしいんですけど……できますか?」
「大丈夫ですよ~、少々お待ちくださいね。」
ミースさんは一度受付の奥の方に歩いて行くと、すぐに大袋を2つ抱えて戻ってきた。
「お待たせしました。量が多かったので、金貨を50枚ずつ袋にお分けしました。」
「ちょうどいいです、ありがとうございます。」
ミースさんから金貨の入った袋を受け取って、片方はマジックバッグにしまい込み、もう片方はルカに手渡した。
「はい、前金で金貨50枚。ミースさんがちゃんと数えてくれてると思うけど、念のためルカの方でも確認してみてくれるかな?」
「感謝す……こほん、ありがとうございます。」
金貨がいっぱい入った袋を受け取って、ルカはきらきらと目を輝かせていた。
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