第301話 アリア魚店の課題
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あっという間にアリアさんの魚屋の店頭に並べてあった魚が売り切れてしまい、本日完売で店を閉めることになったが、新たな課題が露呈した。
お店に足を運んでくれた人が、魚をすぐ食べれるようにさばいて欲しい……とか、家に帰ってすぐ焼いて食べられるような干物が欲しいとか、そういう要望がよせられたのだ。
「一先ず今日のところはボンレスサーディンとブラックファティ……それで、柊君がいたおかげで何とか完売に持っていけたね。」
「う〜ん、一先ずそれは良かったんですけど、今日あったようなお客様の要望に対応できないと、これからがちょっと心配で……」
まぁ当然のごとく、アリアさんに魚を三枚に下ろすとかそういう技量は皆無。今日は俺が一緒にいたからさばいて欲しいという要望には応えることはできたが……アリアさん一人になったらそういう要望は叶えられない。そうなると、一部の客足が離れていくのは明白だ。
「お金がザックザクですよぉ〜。お魚ってこんなにお金になるんですねぇ〜。」
今日の売上金を前にルンルンのアリアさん。一方では頭を抱える俺……さてどうしたものかと悩んでいると、スーパーアドバイザーミカミさんが何かを思いついたらしい。
「あ!!ちょっと待っててね柊君!!」
そう言うとミカミさんは、マジックバッグの中へと入っていった。するとすぐにあるものを手に戻ってきた。
「こんな時こそ、コレが使えるかも。」
「あれ、それって……カリンさんがくれた、パーピリオンへの通行許可証ですよね?」
ミカミさんが手にしていたのは、カリンさんがくれた妖精の絵が彫られた木彫りのペンダント。
「実は旅に出る前に、カリンちゃんにコレに細工をしてもらったんだ〜。」
ミカミさんがそのペンダントをひっくり返すと、裏面に青色の宝石が埋め込まれていた。
「ん?そんなのついてましたっけ?」
「コレが細工してもらったものさ。見ててよ〜。」
ミカミさんはその宝石に手を触れると、まるで向こう側にカリンさんがいるかのように話し始めた。
「カリンちゃ〜ん?もしも〜し?」
「み、ミカミさん……まさかそれって。」
俺があるものを頭の中で想像していると、想像通りそのペンダントから、カリンさんの声が聞こえてきた。
『聞こえておるぞ~。どうかしたのかの?』
「いやぁ~、実はかくかくしかじかで……。」
『ふむ……ふむ。』
ミカミさんがペンダント越しに今の状況を説明すると、何やら話がついたらしく、会話が終わったようだ。
「今からカリンちゃんが人を連れてきてくれるって~。」
「は、はぁ……にしてもミカミさん、ペンダントを通信機みたいに改造してもらったんですね。」
「そうっ!!万が一に備えて、カリンちゃんといつでも会話できるようにしてもらっていたんだよ。」
ミカミさんがそう説明してくれている間に、俺達のすぐ近くに魔法陣が現れる。そこからカリンさんと、もう一人エルフの少女が姿を現した。
「いよっと、待たせたの。」
「やっ、カリンちゃん。急に無茶言ってごめんね?」
「構わぬ構わぬ。友人のヒイラギ殿が新たな店を開くというのであれば、ワシはいくらでも手伝うのじゃ。そういうわけでじゃ、ヒュマノに興味があり……頭も切れ、手先が器用な者をワシが選んで連れてきた。ほれ、ラヴィ自己紹介をするのじゃ。」
「はいですっ族長さまっ!!初めまして、ラヴィですっ。フィースタちゃんより背は低いですが、こう見えても200年目になりますっ、よろしくお願いします!!」
「ひ、ヒイラギです、よろしくお願いします。」
し、シアやメリッサと変わらないような幼さなのに、このラヴィというエルフの人は200歳らしい。副族長のフィースタさんと同年齢だ。
「ミカミだよ~よろしくねラヴィちゃん。」
「アリアですぅ~。」
「皆さんよろしくお願いしますっ!!それで私は何をすればいいんでしょうか?」
首を横に傾げているラヴィさんに、俺はまず魚というものを触った経験があるかどうかを尋ねてみることにした。
「ラヴィさん、魚を解体したりとかそういう経験ってありますか?」
「生態を研究する上で解剖したことはありますっ!!」
「なるほど、じゃあもしかするとすぐに覚えてくれるかも……。ラヴィさん、ちょっと俺が魚を解体してみるので、見ていてくれますか?」
「はいですっ!!」
ラヴィさんの目の前で手本として、まずは基本の水洗いから三枚下ろしまで一連の流れをやって見せた。それをジッと近くで見ていたラヴィさんは一つ頷いた。
「覚えましたっ!!」
「えっ!?も、もうできますか?」
「はいですっ!!」
試しにラヴィさんにやってもらうと、まるで俺の動きをコピーしたかのような動きで、あっという間に魚を三枚下ろしにしてしまった。
「す、すごい……完璧ですね。」
「ラヴィはスキルでコピーというものを持っているのじゃ。故に一度はっきりと目に焼き付けた動きであれば完璧に再現できるのじゃな。」
「便利なスキル~。」
「で、でも覚えられる動きは、自分のステータスでできるものに限られますけどね。」
「今からやって見せるものはステータスとか全然関係ないので大丈夫ですよ。それじゃあ次に行きましょうか。」
その後、俺はラヴィさんに魚の干物の作り方などを教えていき、アリアさんの魚屋の優秀なアシスタントとして育て上げた。
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