第300話 アリア魚店開業
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みんなには釣りを継続してもらって、俺はお腹を膨らませたアリアさんを連れて魚市場に足を運んだ。面白そうなことを嗅ぎつけたミカミさんも同伴してくれている。
「いやぁ~にしても考えたね柊君。アリアちゃんを漁師にするなんてさ。でもでも、売り場所とかどうするつもりなの?」
「それは今、市場の責任者の人と話し合ってから決めます。ここにいるらしいんですけど……。」
魚市場の中にある少し年季の入った建物の扉をコンコンとノックする。
「すみませ~ん?」
「はい、はいな。」
少し時間がかかってから中から眼鏡をかけた一人の老人が姿を現した。
「なにかね?」
「貴方がこの魚市場の責任者の方ですか?」
「うむ、いかにも。この市場を取り仕切っておるオングという者だ。」
「実はお店を1店舗出店したいんですけど、どこか開いている場所を貸してくれませんか?」
「……見たところこの町の人じゃあなさそうだが、あんたら漁師なのかい?」
「彼女が漁師なんです。」
「アリアですぅ~。よろしくおねがいしまぁ~す。」
ペコッとアリアさんが頭を下げると、オングさんは驚きのあまり目を大きくひん剥いてポツリと言った。
「こ、こんな別嬪さんが漁師かね?」
「はい、素潜りの漁師なんですけど、腕は確かですよ。アリアさん、さっき獲った魚を見せてあげてくれませんか?」
「はぁ~い。」
パチンと彼女が指を弾くと魔法陣が現れて、そこからボンレスサーディンやブラックファティ等々の魚が大量に放出された。その光景に、更にオングさんは驚いたようで、よろよろと倒れそうになっていた。
「ボンレスサーディンに、ブラックファティ……高級魚のオンパレード……。そ、そもそもこれは船で沖に行って網を張らねば獲れんような魚だぞ!?こ、これを素潜りで獲ったというのか!?」
「そうですよぉ~。」
「うむむ……にわかには信じられん。だ、だが余所者が船を持っているわけもないし……。」
チラリとアリアさんの目を見て、今度は俺の目を交互に見ると、彼は一つ頷いてくれた。
「良かろう。ついてこい、この前歳で辞めちまった奴の店がそのまんま残ってる。そこを使わせてやろう。」
「ありがとうございます!!」
そして彼について行くと、店頭の魚を並べている陳列棚がガラガラの状態で残されている一軒の小さな魚屋へと案内された、
「ここだ。狭いが場所は悪くはないだろう。几帳面な奴がやってた店だから内装もきれいだぞ。」
「うん、悪くないですね。賃料はいくらですか?」
「賃料は一律で、毎月金貨10枚。新人にはなかなか厳しい世界だが、お嬢さんやっていけるかい?」
「う~ん、毎日魚をたっくさん獲ってきて売ればいいんですよねぇ~?」
「あぁ、だが時にゃ海が大時化で何日も漁に出られねぇ時もある。それでもやってみるかい?」
「えっへへ~、任せてくださいよぉ~。多少海流が強いぐらいじゃアリアは止められませんからぁ~。」
「……とにかく無理はしないこった。漁師っつうのは命あっての物種だからな。適度に頑張りな。」
そう言葉を残して、くるりと踵を返そうとしたオングさんをミカミさんが呼び止めた。
「あ、ちょっと待って待って~。」
「ん?なんじゃい?」
「毎月金貨10枚の賃料って言ってたよね?」
「あぁ。」
「じゃあこれは先行投資。」
「は!?」
ミカミさんはどこからか白金貨を1枚取り出して、オングさんへと手渡したのだ。
「これで一先ず10か月分は払わなくても大丈夫でしょ?」
「う、うむ……。」
「でも一応彼女には毎月金貨10枚をちゃんと収めさせるからさ。それは何かあった時の保険として取って置いてくれるかな?」
「……わかった。これは保険として受け取っておこう。」
それを胸ポケットにしまって、彼は今度こそ踵を返していってしまった。それを見送った後、軽く店内と陳列棚を掃除してから、早速アリアさんと一緒に営業の準備をやってみることにした。
「じゃあアリアさん、早速さっき獲ったばかりのお魚を並べていきましょうか。」
「はぁ~い。」
「種類ごとにちゃんと分けてくださいね。」
今日の目玉は何と言ってもボンレスサーディンと、ブラックファティ。目玉となる魚は中央に陳列させて、他の魚は周りを囲うように並べていく。
「よし、こんなもんで良いですね。次は値段設定なんですけど……。」
「さっき渡してくれた紙にお金が書いてありましたねぇ~。えっと、このボンレスサーディンは……1匹大銀貨1枚って書いてありますねぇ。」
「そうです。だから値段通り1匹大銀貨1枚で売りたいところなんですが、商売においてお客様にお得って思われることがすっごく大事なんですね。」
「お得ですかぁ?」
「はい、例えばこのボンレスサーディンを6匹まとめて買うと通常大銀貨6枚のところが、大銀貨5枚になります~とかですね。」
「な~るほどぉ、わっかりましたよぉ~。まとめて買ってくれた人間には、少し安くしてあげればいいんですねぇ。」
「そういう事です。」
アリアさんに商売のイロハを教えながら、試しにお店をいよいよ開店してみると、ボンレスサーディンとブラックファティが売られているのを見た人達がわらわらと集まり始め、飛ぶような勢いで魚がどんどん売れていってしまった。
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