第298話 ブラックファティ
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アリアさんが海に潜っている間に、みんなで一度釣りを中断して、お昼ご飯にボンレスサーディンのサンドイッチを食べていると、人間の姿に化けたアリアさんが海から上がってきた。彼女は漁に使われていたのであろう大きな網を携えて戻ってきたのだ。
「たっだいま戻りましたぁ~。人間さんの言っていたお魚がどれかわからなかったので、見えたのぜ~んぶ捕まえてきましたぁ。」
ずりずりと彼女が引き摺っている網の中は、ボンレスサーディンが大半だが、その中には他の魚も混ざっていた。
「よいしょっと、見てみて下さぁ~い。」
「んにゃっ!?すっごい数のお魚さ~ん!!」
「すごく…いっぱい。」
砂浜に打ち上げたその網の中に入った魚を見た、シアとメリッサがキラキラと目を輝かせながらその網に近づいていく。
「これはシアとメリッサちゃんが釣ったお魚さ~ん♪」
「うん…でもこっちのくろいさかなは…しらない。」
メリッサが指さした魚は、イワシのような大きさのボンレスサーディンとは違って、マグロのような姿をした巨大な魚だ。
「あ、この大きいほうの魚が小さい魚を追いかけ回してたやつですよぉ~。こんなに美味しい魚を食べようと追いかけるなんて、魚のくせに生意気ですよねぇ~。」
ぺっちぺっちとアリアさんはそのマグロのような魚を手で叩く。俺はその魚に近づいて鑑定スキルを使ってみることにした。
「えっと、鑑定鑑定っと。」
~鑑定結果~
名称 ブラックファティ
備考
・ボンレスサーディンを追いかけ回し、捕食している回遊魚。
・脂ののっているボンレスサーディンを主食としているため、ボンレスサーディン同様に市場価値は高い。
・身は赤身で筋肉質ながらも脂がのっており、大変美味である。
鑑定結果によると、この全身が真っ黒でマグロのような魚はブラックファティで間違いない。アリアさんはミカミさんに言われた通り、ボンレスサーディンと一緒にブラックファティも捕まえてきてくれたらしいな。
「なるほど、これがブラックファティ……海のミスリル。まるで真っ黒なマグロだな。これがほんとのクロマグロってか。」
「この黒いのも美味しいんですかぁ?」
俺がブラックファティの鑑定をしていると、上機嫌でアリアさんがこちらに歩み寄ってきた。
「はい、この魚もすっごく美味しい魚ですよ。」
「良かったですぅ~。この小さい魚を追いかけてる魚も、なかなかすばしっこかったんですけどぉ、頑張って捕まえてきた甲斐がありましたぁ~。」
喜んでいるアリアさんに俺は少し不安になって、ある質問を投げかけた。
「あの、アリアさん?ちなみになんですけど、この辺一帯の魚を捕まえてきたわけじゃないですよね?」
「え~っとぉ、一応捕まえられるだけ捕まえてきたんですけどぉ、まだまだ海の中にはこれと同じ魚はいましたよぉ?捕まえてきますかぁ?」
「あ、あぁいえっ!!だ、大丈夫です。こ、これだけの量の魚があれば、料理を使うには足りますから。」
「そ、そうですかぁ?」
疑問に思って、今にも海に潜りそうになっているアリアさんを必死に止めながら、俺は網の中に捕まえられていた魚を一匹一匹解放していく。そして、頑張ってくれたアリアさんのためにその場で料理の準備を進めていく。
「まずは厚底のフライパンにたっぷりと油を流し込んで、加熱しておく。その間にボンレスサーディンは開きにして塩と胡椒を振っておくと。」
ボンレスサーディンの下処理を終えた後、俺はブラックファティの処理に移る。
「これは……鱗がまるで鰹のような1枚鱗だな。これは身を削がないように薄く、薄く鱗を包丁で削いでいこう。」
ブラックファティの鱗を包丁で削ぎ、今度は頭を落とそうとしたが……やはり並みの包丁じゃ頭は落とせそうにない。骨が太すぎる。
「ここはレヴァの出番だな。」
マジックバッグの中からレヴァを取り出して、頭を落とそうと刃を入れると、あまりにもすんなりと中骨が断ち切られ頭が落ちた。
「おっ、さっすがレヴァ。この切れ味は普通の包丁じゃ再現できないな。」
頭を落とした後、内臓を引き抜くと胃袋の中にはたっぷりと消化されかけているボンレスサーディンが詰まっていた。
「うん、やっぱりボンレスサーディンしか食べていなかったんだなコイツは。」
鑑定で判明していた事実が確認できたことに一つ頷きながら、ブラックファティの処理を進めていくが、ボンレスサーディンだけを食べている舌の肥えた魚だけあって、脂の乗りも本当にすごい。大トロの部分は言うまでもなく、赤身の部分まで中トロ並みの脂の乗りだ。
「これで寿司を握ったらおいしそうだなぁ。」
寿司を握るとなれば、まずはホワイトライスを炊かないと、ボンレスサーディンもまだまだ余っているし、せっかくならボンレスサーディンの寿司も作ろう。
アリアさんがいったいどれほどご飯を食べるのかはわからないが……あのランさんが大食感というほどだ、できるだけ多く作っておくことに越したことは無いな。
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