第296話 ウォータードラゴンのアリア
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俺が誤って海から釣りあげてしまったアリアというドラゴンは、ランさんと少し話をした後に、人間の女性の姿に化けると、裸足でひたひたとこちらに歩み寄ってきた。
「あの~、はじめましてぇ~。ランの友達のウォータードラゴンのアリアですぅ~。」
「あ、あぁはじめまして、ヒイラギです。」
どうやら彼女はドラゴンの中でも、ウォータードラゴンという種族らしい。ランさんはサファイアドラゴンで……この前会ったドラゴンはブレアドラゴン……。本当にいろんな種類のドラゴンがいるんだな。
「そ、そのぉ~……さっきは攻撃しちゃってごめんなさいですぅ~。ランの知り合いの人間だとは知らなくてぇ……。」
「いえ、全然大丈夫ですよ。当たらなかったですし……。」
軽い自己紹介を終えると、アリアさんはチラリと俺が釣ったボンレスサーディンへと目を向けた。
「この魚美味しいんですよねぇ〜。骨も無くて、食べやすいんですぅ〜。」
「よ、良かったら一匹どうぞ?」
「あっ!!じゃあ遠慮なくいただきまぁ〜す!!」
ボンレスサーディンを一匹手に取った彼女は、頭から丸かじりでムシャムシャと食べ始めた。それを隣で見ていたランさんが口元に手を当てて、ポツリと彼女に向かって問いかける。
「……それ、美味しい?」
「んへ?おいひいれふよぉ?」
「……そう。」
「ん、ゴックン……。ランも分けてもらって食べればいいじゃないですかぁ〜。こんなに美味しいんですよぉ?」
「ワタシはいらないわ。後でヒイラギがそれで作ってくれた料理を食べるから。」
「料理?」
「そっ、人間の中にはワタシ達が普段食べるような食べ物を、より美味しくする技術を持ってる人間がいるの。」
「ほほぉ〜ん?それがそこにいるヒイラギさんってわけですねぇ〜?」
「ま、そういう事よ。」
ランさんからその話を聞くと、チラリとアリアさんは俺の方に視線を送ってきた。そしてゆらゆらと俺の方に歩み寄ってきた。
「その料理っていうのアリアも食べてみたいですねぇ~。」
「アリア、それだけは本当にやめたほうが良いわよ。これはワタシからの警告よ。」
「さっき言ってた2度と野生に戻れなくなるっていうやつですかぁ?」
「そっ、ワタシも一回彼の料理を食べて、一度は野生に戻ったんだけど~……まぁ数日で音をあげたわよ。あんなの食べさせられたら魔物の血肉なんて不味くて食べれたもんじゃないわ。」
「ふぅぅぅぅ~ん?」
ますます興味を持って、アリアさんは俺の方に近寄ってくる。そしておもむろに水面に目を向けると、海に向かって手を翳した。すると、海水が大きな球体になって持ち上がってくる。その中にはたくさんのボンレスサーディンが閉じ込められていた。
「あ、あのぉ……料理って、このぐらい魚がいればできますかぁ?」
「で、できますけど……。」
「じゃあお願いしたいですぅ~。ランをそこまで言わせる料理っていうのを食べてみたいんですよぉ~。」
「簡単なもので良ければ……。」
「全然いいですよぉ~お願いしますぅ~。」
「……わかりました。」
俺が頷くと、ランさんが大きなため息を吐きながら頭を抱えた。
「あ~、知らないわよアリア。」
「えへへへぇ~、どうしても気になるんですよぉ~。だからお願いしますぅ~。」
まぁちょうどそろそろ昼飯時だったし、それじゃあサクッと作ってみようか。ここまで頼まれたら断れないしなぁ。
「じゃあ、今回はこのボンレスサーディンを使って料理を作ります。」
ボンレスサーディンは鱗を取り、頭を落として内臓を抜き取る。そして内臓を抜いていた時、俺はあることに気が付いた。
「んっ!!すっごい脂だ。全身が大トロみたいなもんだぞこれは……。」
この魚は骨が無いから、三枚に下ろさずにこのまま料理に使おう。魔法で浜辺で火を起こして、そこにフライパンを置いた。そのフライパンに頭を落として血をよく洗い、塩を振ったボンレスサーディンを綺麗に並べて、オーリオオイルをたっぷりと流し込む。
「あとはここにガリクと香草をたっぷりと入れて煮込む。」
今作っているのはオイルサーディン。イワシのオイル煮込みだ。これが料理のベースになる。
「よし、一先ずこんなもんかな。」
本来オイルサーディンは、音が柔らかくなるまで煮込むけど、このボンレスサーディンには骨が無い。だからそんなに煮込む必要はない。
「あとはこれを柔らかい白パンに、チーズとマトマと一緒に挟んでっと……。」
これでボンレスサーディンのカプレーゼ風サンドイッチの完成だ。ひとまずそれを全員分作った後、俺はアリアさんへ出来上がった料理を運んだ。
「はいどうぞ、ボンレスサーディンのカプレーゼ風サンドイッチです。口に合うかはわからないですけど……。」
「あっ!!ありがとうございますぅ~!!」
アリアさんはこっちにぴょんぴょんとスキップしながら歩み寄ってくると、俺が作った料理を受け取ってくれた。
「良い匂いですぅ~。じゃあさっそくいただきまぁ~す!!」
がぶっと一口でそれを頬張ったアリアさんは、大きく目を見開いてから仰向けに倒れ込んでしまった。
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