第295話 さらなる大物を狙って
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群れで回遊してきたらしいボンレスサーディンが、次々とみんなの釣り竿にヒットし始めた。それにホッと一安心して、俺は自分の釣り竿を海から引きあげた。
「あれ?柊君やめちゃうの?」
「はい、俺が釣らなくてもみんながたくさん釣ってくれそうなので。俺はそろそろ違うのを狙おうかなって思ったんですよ。」
「ほへ?違うのって?」
「実は昨日釣具屋の店主さんに、面白い話をもう一つ聞いていたんですよ。」
そう言いながら、俺は釣り針についていた小さなエビを外して、自分で釣りあげたボンレスサーディンを餌につけた。
「ちょちょちょっ、柊君!?そ、それボンレスサーディンでしょ!?」
ミカミさんが慌てて俺を止めようとしてくる。
「はい、これが餌になるんですよ。」
「ええぇぇぇっ!?」
「よいしょっと!!」
そして生きているボンレスサーディンをそのまま海に放り投げた。するとミカミさんが心配そうに俺の肩に座って質問してきた。
「ね、ねぇ柊君。ボンレスサーディンっていう珍しい魚を使って、いったい何を狙うつもりなんだい?」
「ボンレスサーディンがこの海に回遊してくる時期にだけ釣れる……ブラックファティ。通称、海のブラックミスリルと呼ばれる超高級魚らしいです。」
「ブラックファティ……海のブラックミスリル。な〜にその情報、気になるじゃぁ〜ん。」
俺の肩に座るミカミさんは、俺が話したブラックファティという魚の情報を聞いて、キランと目を光らせた。
「なんでもボンレスサーディンが回遊してる理由は、そのブラックファティに食べられまいと、逃げ回っているからだとか。」
「ほっへぇ〜?」
そんな話をしながら、じっ……と獲物がかかるのを待っていると、突然釣竿がつの字に大きく曲がる。
「あ、おぉっ!?」
「今までにない強い引きっ!!これ、例のブラックファティが来たんじゃない!?」
やんややんやと、ミカミさんに肩の上で応援されながら、かかった獲物を釣り上げるべく、釣り竿を引くてに力を込める。
そして、もう少しで釣り上がるというその時……スキルの危険察知が突然発動した。
「えっ、な、なんかヤバい?き、危険察知が……。」
「ひ、柊君っ、水面に見えてきた影……さ、魚とは思えない大きさだよ!?」
もう釣り竿を引く手に力は込めていない……。しかし、その影は自らどんどんこちらに迫ってくる。
「く、来るよ柊君っ!!」
「は、はいっ!!」
身構えていると、水面が大きく盛り上がり、釣り針にかかっていたモノが飛び上がって姿を現した。
「い、いっひゃいれふ〜っ!!」
「「え゛っ!?」」
海から大きく飛び上がって姿を現したものの正体に、俺とミカミさんは思わず口をあんぐりと開けて固まってしまう。
というのも、釣り針が口にかかって、海から飛び出してきたのは、一匹の大きなドラゴンだったのだ。
「あぐぐ……んぁっ!!はぐはぐ……。」
口の中に刺さっていた釣り針を引っこ抜き、餌だったボンレスサーディンをムシャムシャと頬張りながら、そのドラゴンは俺の方へと鋭い視線を向けてくる。
そのドラゴンは、以前戦ったブレアドラゴンと姿は似ているものの、泳ぐことに特化するために、ヒレのような部位が体についていた。鱗の色は青色だが、ランさんと違って光に当たるとエメラルド色に輝いている。
「に、人間〜。よくもこんな魅力的……ゴホンっ!!ひ、卑劣な罠を〜。許さないですぅぅぅっ!!」
そのドラゴンが口を開けた瞬間、危険察知が発動し、直後レーザーのような水のブレスが飛んでくる。
「うぉっとっと!?」
それを躱して、体が勝手に反撃に出ようとすると、空からランさんの声が聞こえてきた。
「な〜んか聞き覚えのある声がすると思ったら……こんなところで顔見知りに会うなんてね〜。」
海から現れたドラゴンの前にランさんが立つと、そのドラゴンはギョッと目を見開いた。
「あなたは……ランじゃないですかぁ!?なんでこんなところに?」
「それはこっちの台詞よアリア。なんでアンタがこんな所にいるのよ?」
どうやらこの2人は顔見知りだったらしい。ひ、一先ず助かったかな?
「アリアは美味しい魚を追いかけてたんですよぉ〜。そしたらそこの人間の卑劣な罠にっ!!」
「はぁ〜、食い意地の張ってるアナタのことだから、そんなことだろうとは思ってたけど。食い意地に負けて、人間の罠を見抜けなかったのは、自分に責任があるんじゃないかしら?」
「うっ……だ、だって〜美味しそうだったんですぅ〜。」
アリアと呼ばれているドラゴンは、ランさんに詰められるとウルウルと涙目になっていく。
「ち・な・みにっ、この人間はワタシ専属のごはん提供者だから、手出しするならワタシが相手になるわよ。」
「ごはん提供者……って、ランはその人間に食べ物を貢いでもらってるんですかぁ?」
「貢がせてるっていうか、むしろワタシの場合、ご飯を食べさせてもらってるのよね。」
「なんですかぁ〜それ〜。羨ましいですぅ〜。アリアにも食べ物くださいよぉ〜。」
「アリア、これはアナタと古くから面識があるワタシからの助言だけど……このヒイラギの作ったご飯は食べないほうがいいわ。2度と野生に戻れなくなるわよ。」
うんうんと頷きながら、真剣な表情でそう言ったランさんに、アリアと呼ばれているドラゴンは、ひたすらに首を傾げているが、一先ずこの場は何とかなりそうで良かった……。
にしてもまさか魚でドラゴンが釣れるとはな……。思いもよらなんだ、まったく。
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