第294話 ボンレスサーディンを狙って
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翌日の明朝、俺達はセカンデルの近くの釣りの名所へと赴いていた。この場所は昨日釣具屋の店主から、良く釣れる場所だと聞いていたのだが……。
「うっひゃ~、まだ陽が少し昇ってるぐらいの時間だっていうのに、ここはもうこんなに混みあってるねぇ~。」
「こ、これじゃあ釣り糸を垂らす場所もないですね。」
この釣り場はかなりの人気スポットらしく、どこもかしこも人で溢れていて、釣り糸を垂らしたら絡まってしまいそうだ。
「一応向こうの方は人がいないみたいだけど、どうするヒイラギ?」
ドーナが指さした方角は、確かに人影は全くない。だが、人がいないという事は恐らく釣れていない場所だ。でもこの混みようは……どうしようもないか。
「まっ、みんなが釣れてないだけで私達ならなんとかなるかもしれないしね~?行ってみようじゃないか、こんな混みあった場所でぎゅうぎゅう詰めになって釣りをするよりもいいでしょ~。」
そして人で混みあった人気の釣り場所から離れて、だ~れもいない静かな波打ち際にやってきてから、俺は釣り道具の準備を始めた。
「えっと、ルカとドーナはやり方はわかるな?」
「問題ありません。」
「大丈夫だよ。」
「それじゃあ餌と釣り竿を渡すから、好きなところで始めちゃってくれ。」
釣りを知っている2人には釣り竿と餌を渡して、一足先にボンレスサーディンを狙ってもらうことにした。
「それじゃあ釣りをやったことが無いみんなには、今からやり方を説明するからちゃんと聞いててな?」
「「「は~い。」」」
まぁ説明することと言っても、釣り針に餌をつけて海に放り投げるだけなんだけど……。針が指に刺さっちゃったりしたら危ないからな。そういう注意点も含めて説明を終えると、ランさんとグレイスの2人がやる気になって、釣り竿と餌を持って走っていってしまった。
「じゃあシアとメリッサは、俺とミカミさんと一緒に釣りをやってみような。」
「「うん!!」」
「となるとまずは場所探しなんだけど……。」
すこし辺りを歩きまわって、足場が安定していて少し高い波でも波しぶきがかからない場所を見つけ、俺達はここで釣りをすることにした。
「2人とも、この辺滑りやすいから足元には気をつけるんだぞ。」
「ほんとだ~、ぬるぬるしてる?」
「ちょっとみどりいろのところ…すべりやすい。」
2人に注意を促しながら、針に餌をつけた釣り竿を2人に手渡した。ちなみに餌は小さなエビ。聞いた話によると、ボンレスサーディンはエビしか食べないらしいんだ。
「それじゃあできるだけ奥の海を狙って投げてみようか。」
「はーい!!ん~……えいっ!!」
シアの一投は沖の方のなかなか良いところに落ちた。
「よし、今度はメリッサの番だぞ。」
「わかった…やってみる。」
釣り竿を少し振りかぶって、メリッサも餌付きの釣り針を海の中に放り投げた。その一投はちょうどシアの隣ぐらいに落ちた。
「うん、メリッサも良い位置だな。あとは2人とも餌に魚がかかるのを待っておこう。」
「おっさかな、おっさかな~♪」
「わくわく…たのしみ。」
2人が魚がかかるのを楽しみに待っている間に、俺も餌をつけた釣り針を投げておいた。
「あの釣具屋の店員さんによると、ボンレスサーディンは群れで海を回遊しているらしいから、釣れるときは爆釣らしいね。」
「ただその周期は年に一回あるかないか……。」
「普通なら、まぁ狙って釣れるわけないものだけどさ。私達なら……いけるかなぁ?」
「まぁ、おかげさまで運には自信がありますから、頑張ってみましょう。」
そんな会話をしていると、シアの竿がクンっとしなった。
「あ、お兄ちゃん!!何か来たかも!!」
「そこからは魚との力比べだ。頑張ってこっち側に引き寄せるんだ。」
「わかった!!」
針についているであろう魚よりもシアの方が力は強いらしく、どんどん魚はこちらに引き寄せられてくる。そしてついに……。
「んんん~にゃあっ!!」
シアが最後に渾身の力を籠めると、サバぐらいの大きさの魚が海から一気に釣りあげられた。それをそのままシアがキャッチする。
「お兄ちゃん!!見てみてっ!!釣れた釣れたぁっ!!」
「お~、良いサイズの魚だな。どれ、ちょっと待ってな針を外すから。」
針を外すときに魚に触れたとき……俺はある違和感を感じ取った。
「ん?この魚はもしかして……。」
試しに鑑定を使ってみると、シアの釣り上げた魚の正体が明らかとなった。
~鑑定結果~
名称 ボンレスサーディン
備考
・頭部以外の骨が無い特殊な軟体魚。
・世界の海を自由気ままに群れで回遊しており、狙って釣ることはほぼ不可能。
・味は甘い脂が全身にのっていて、青魚特有の臭みもなく、生で食べればとろけるような濃厚な味わいが……。火を通せばしっとりとジューシーな味わいになる。
やっぱり、触った瞬間にわかった。この魚には芯が通っていなかったんだ。
「やったなシア、この魚が俺達の狙いだったボンレスサーディンだ!!」
「やったー!!」
と喜んでいたのも束の間、この魚は群れで回遊する魚だ。メリッサの竿にも、俺の竿にも当たりが来た。さぁ、ここからフィーバータイムの始まりだ。
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