第286話 馬車選び
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これからいよいよグレイスが引く馬車を吟味していくのだが……それに伴って、一度グレイスには元の大きさに戻ってもらった。
「い……よいしょっと!!」
久しぶりに元の大きさに戻ったグレイス。グレイスがバキバキと関節を鳴らして、体の感覚を確かめている最中、俺はふとあることに気がついた。
「…………なんかグレイス……太った?」
「あ、それ私も思ったよ。なんかお腹のところがポヨンってしてる気がする。」
「うっ、そ、そうっすか?」
少し冷や汗をかきながら、グレイスは自分のお腹とにらめっこしている。
俺の記憶にあるグレイスは、もっとお腹のところがスリムで……こう、出っ張ってる所がなかったような気がするんだけど……。
「き、きっと最近、食べて寝てっていうのを繰り返してたせいっす!!こ、これから動けば痩せれるっすよ!!」
「一理あるね。最近グレイスちゃんの出番がなかったし、一時的に運動不足になっちゃってたのかも。」
「ま、これから馬車を引いてもらえば、痩せれる……かな?別に筋肉が衰えたってわけじゃないんだろ?」
「さ、流石に力まで衰えてる感じは………し、しないっす。」
うん、じゃあ早速それを確かめてみることにしようか。店員の人にグレイスに馬車の装備をつけてもらって、一台一台引いてもらおう。
「ではまずは、この3台の中では最も軽いこちらの馬車から……ゆっくりと引いてもらえますか?」
「ふっふーん、こんなの余裕っす!!」
グレイスが前足を一歩前に出すと、それに伴って、馬車が軽々と動いた。流石はエルダーワイバーン……並みの魔物より馬力はあるな。
「では、そのまま一度外に出てみましょうか。私についてきてください。」
「任せろっす!!」
他の店員が裏口の扉を開けると、そこには少し広い空き地があった。どうやらここで馬車の乗り心地とか、そういうのを確かめるみたいだ。
「よければ皆様も乗って頂いて、乗り心地を試されてはいかがでしょうか?」
「是非とも是非とも〜。」
促されるがまま、その馬車の中に乗り込んで座ってみると、値段相応に座り心地は今まで座ってきた馬車の中でも最も良い。
いざ、グレイスが動かしてみても、振動もあまり伝わってこないし、これなら長時間の旅でもお尻が痛くなることはなさそう。
グルリと空き地を一周すると、そこで馬車は止まり、店員の人が感想を問いかけてきた。
「いかがでしたでしょうか?」
「うん、悪くなかったよね?全然振動も伝わってこなかったし、後はグレイスちゃん次第って感じかなぁ?」
「グレイス〜?そっちの引っ張り心地はどうだったんだ?」
「自分はもっと重くても全然引っ張れるって感じっす!!」
「なら一番重いのも試してみるか……。」
「一番重い馬車でございますね。少々お待ちください。」
グレイスの馬車の装備を外し、専用のものに切り替えたりして、色々用意するのに5分ほど時間がかかり、この店で最も高く重い馬車の準備ができたらしい。
店の中からその馬車を引いてきたグレイスは、さっきとは違い、少し余裕がなさそうだ。
「ぐぎぎ……こ、これ結構重いっす〜。」
「普通の馬10頭でも引くのに難儀する馬車ですから、むしろ引けるだけで凄いですよ。」
「ちなみにこの一番重いやつって、最初のやつと何が違うんです?」
「こちらは、酷くぬかるんだ道や深く積もった雪道などに対応できるように、車輪の形を変えております。」
よく見れば、車輪の形が戦車のキャタピラーのような形になっている。こんな仕組みだから悪路もいけるってわけだ。
「もしノースパラウドを目指すってなったら、やっぱりこっちのがオススメですかね?」
「そうですね。さっきのものですと、雪道で車輪が絡め取られる可能性も……。」
「ふむ……。」
性能的にはこちらのほうが、圧倒的に良いものなのは疑いようがないんだけど……引いているグレイスが少し辛そうなんだよな。
「残ってるもう1台も、アレと同じ車輪の形でしたよね?」
「そうですね、こちらの馬車を少し軽量化したものになります。」
「そっちも試してみるか……おーい、グレイス〜?戻ってきていいぞ〜。」
「りょ、了解っす!!」
少し辛そうにしながら、グレイスは一番重い馬車を引いて、店の中へと戻っていった。その後、最後の1台を引いて戻ってくると……。
「こっちなら大丈夫っす!!」
と、元気よく戻ってきた。これは決まりかな。
「じゃあこの馬車をください。」
「お買い上げありがとうございます。それでは白金貨2枚になります。」
「はい、これでお願いします。」
「白金貨2枚、確かに受け取りました。こちらの馬車は後ほどお届けしますか?それとも持って帰られますか?」
「あ、持って帰ります。」
馬車にマジックバッグを近づけると、吸い込まれるように、馬車はマジックバッグの中へと収納された。
「あと、グレイスに馬車の装備品をつけるやり方を、教えてもらっても良いですかね?」
「もちろんでございます。」
それから馬車の装備の付け方を、30分ほどレクチャーしてもらってから俺達はまた宿に戻るのだった。
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