第283話 絶対に欠かせない存在
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翌朝、みんなで集まって朝食を食べている最中に、俺はみんなにこれからの計画について話すことにした。
「みんな、食べながら聞いて欲しいんだけど、もろもろの準備が整ったら……世界各地の美味しいものを食べ歩く旅を始めたいと思うんだ。」
「世界各地の美味いものっすかっ!?めちゃくちゃ興味あるっす~!!」
「ワタシもそれには興味あるわっ!!」
真っ先にこの話に食いついてきたのは、我が家の大食感グレイスとランさんの2人。彼女たちの次に、シアとメリッサの2人も目をキラキラと輝かせた。
「美味しいものっ!!」
「たべあるき…!」
「ご主人様、とても魅力的な旅のようですが……その旅には私もお供できるのでしょうか?」
みんなが目を輝かせている最中、ルカがふとそんな質問を投げかけてきた。獣人族の国に行くときも、ルカはお留守番だったから……それで心配してるのかな?
「もちろん、ルカにも同行してもらうつもりだよ。昨日ようやく、俺達やヴェイルファーストの人達に因縁をつけてきてたクレイモア家との問題も解決したから。」
そう言うとルカは少し嬉しそうに、フッと笑う。
「安心しました。」
「ででっ、最初はどこに行くっす!?どんな美味いものを食いに行くっす!?」
「まぁまぁグレイス落ち着いて。まだ目標は決まってないけど、一先ず出発は、グレイスの装備ができてからだ。それまでの間に、滅多に味わえないような美味しい食材の当てをつけようと思う。」
そう言った後、俺はみんなに小さいメモ帳を手渡していく。
「みんなが気になった食材とか、そのメモ帳にメモしておいてほしいんだ。例えばお使いに行った時に、お店の人から聞いた珍しい食材の話とかでも構わないから。」
「ヒイラギお兄ちゃん!!いっぱいメモしてもいいの?」
「あぁ、そのメモ帳全部使っても良いよ。」
「じゃあいっぱい書こうメリッサちゃん!!」
「うん…いっぱいかく!はやくきょうのおつかい…いこ!」
「あ、2人ともお勉強は……。」
「ランちゃん、シアちゃんとメリッサちゃんのお勉強は、少しの間おやすみにしても良いよ。毎日お勉強頑張ったからね。」
ミカミさんのその言葉で、シアとメリッサの2人は飛び上がるほど喜んだ。
「「やったー!!」」
「そういうわけだから、今日からランちゃんは、シアちゃんとメリッサちゃんの2人の護衛に注力してもらうね。」
「わかったわ。」
「ルカちゃんも一応みんなのことを頼むね?」
「承知いたしました。」
そして朝食を食べ終えた後、俺とミカミさん以外のメンバーは、いつもの買い物場所である市場の方へと駆けて行った。
「さてと、俺たちも行きましょうか。」
「ねっ、未来の花嫁ドーナちゃんを迎えに行かなきゃ。」
今回の旅の計画を実行に移すにあたって、現在交際中のドーナを置いていくなんて選択肢は存在しない。彼女は魔物ハンターギルドのリーダーという役職だから、旅への同行が難しいことは重々承知してるつもりだけど……それでも何とか連れて行く。
強い決意を胸にギルドに赴くと、そこにはいつも通り彼女の姿があった。ギルドに入ってすぐに彼女と目が合う。
「おはようドーナ。」
「おっはよ~ドーナちゃん。」
「ん、おはよヒイラギ、ミカミ。」
彼女の対面の席に腰掛けると俺はさっそく話を切り出した。
「ドーナ、ちょっと話を聞いて欲しいんだけど……。」
「ん?何だい改まって。」
「俺個人の問題も落ち着いたし、資金も潤沢に集まったし、そろそろ旅に出ようと思うんだ。この世にある美味しいものを求めて巡る旅を。」
「そいつは面白そうだけど、その旅にはアタシは……。」
彼女は少し困ったような寂しそうな表情を浮かべて、ぽつぽつと語っていたのを遮り、俺は彼女の両手を握りながら声を上げた。
「ついてきてほしい。」
「~~~っ!?あ、アタシもそうしたいけど……このギルドを空けるわけには…………。」
思い悩む彼女の背中を誰かがグイッと押して、俺と彼女の顔が急接近する。少しでも動けば触れてしまいそうな距離になってお互いに赤面していると、彼女のことを押した犯人がひょっこりと顔を出した。
「話は聞かせてもらいましたよ!!ヒイラギさんっ、ドーナさんのことは絶対連れて行ってくださいっ!!」
「んなっ!?み、ミース!?」
ドーナの背中を押したのは、どうやらこちらの会話に聞き耳を立てていたらしいミースさんだった。ミースさんは満面の笑みでぐいぐいとドーナの背中を押し続けている。
「ギルドのことは私に任せてくださいっ!!ドーナさんは、ヒイラギさんと楽しんできてください~っ!!」
「ちょっ、あ、あんまり押すんじゃないよ!!」
「ドーナさんが行くっていうまでやめません!!」
「だ、だからアタシがいなくなったら、普通のハンターじゃこなせない依頼はどうするんだい!?」
「ふっふっふ、このミースを侮ってもらっては困りますよドーナさん。ドーナさんがヒイラギさんと懇ろな関係になったな~って確信したときに、その対策も考えておきました!!だから、ギルドのことは私に任せて、楽しんで来てくださ~いっ!!」
「~~~っ、わ、わかった!!行くって!!だから押すなってのっ!!」
ミースさんを払いのけた彼女は、赤面しながらポリポリと頬を掻くと、ミースさんに向かって一言小さい声でぼそりと声をかけた。
「……あんがとミース。」
「ふふふっ、楽しんできてくださいねっドーナさん。」
ドーナに向けてにこりと微笑んだミースさんは、今度は俺の方に視線を向けてくる。
「ヒイラギさん、ドーナさんのことお願いします。」
「もちろんです。」
「アンタはアタシの保護者かってのミースッ!!」
少し調子に乗りすぎてしまったらしいミースさんを、ドーナがギルドの中で追いかけ回す。その光景を苦笑いしながら眺めていると、ミカミさんがにっこりと笑いながら俺の頬をツンツンと突いてくる。
「んっふっふ、良かったね柊君♪ミースちゃんには感謝しないとね。」
「ですね、後で美味しいお菓子でも作って持ってきましょう。」
画してミースさんの協力もあり、ドーナを無事旅に連れて行けることとなった。正直、かなりホッとしたし、嬉しい気持ちでいっぱいだ。
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