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転生料理人の異世界探求記  作者: しゃむしぇる
五節 獣人族再興へ
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第279話 セイレーンが作った国 アーネスト

ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。


 海の底へ……底へとスターさんに手を引かれて連れて行かれると、だんだん暗くなっていた辺りの景色が、急にパッと明るくなった。その明かりは、水底にある巨大な都市のような場所から放たれていた。


「あそこがもしかして……。」


「そうよ。お母様と一人の人間が作った国……名前を()()()()()。」


 アーネストへと向かって泳いでいると、ある距離まで近づいてきたところで、ジャポンとまた水面に飛び込んだような感覚を感じた。それと同時、緩やかな重力に引かれて俺の足が水底についた。


「うん、ここまで来たら魔法はいらないわね。」


 スターさんがパチンと指を弾くと、俺達のことを包んでいた薄い膜が弾ける。だが、不思議なことにここは水中なのに呼吸ができるのだ。


「驚いた?ここは一応人間でも呼吸ができる空間になってるんだ。」


「でもここ、水の中……だろ?相当良い腕の魔法使いでもいるのかい?」


 そうドーナが問いかけると、スターさんはこくんと頷いた。


「まぁその魔法使いっていうのも私達のお母様なんだけど。」


「改めてセ、セイレーンってとんでもない存在なんだねぇ。」


「さ、こっちよ。他のマーリンズには私からちゃんと説明するから、あなた達は余計なことは言わないように。」


「わかりました。」


 そして都市の方へと歩いて行くと、すぐに大勢の武装したマーリンズに取り囲まれたが、スターさんが事情を説明すると、あっさりとセイレーンがいるという、都市の中心部に聳え立つ宮殿へと案内された。

 その宮殿の中を迷いなくスターさんは歩いて行くと、ある大扉の前で歩みを止めた。


「こほん……お母様、スターです。入っても良いですか?」


 スターさんは大扉の向こう側に向かってそう声をかけると、向こう側からほんわかと柔らかい声が返ってくる。


「どうぞ、入っていいですよ。」


「失礼します。」


 スターさんが扉を開けると、その中にはキングサイズを超える大きなベッドが中心に置かれていて、そのベッドの上に俺の人魚のイメージとぴったり当てはまる女性が座っていて、こちらに視線を向けていた。


「ふふ、何百年ぶりでしょうかここに心の汚れていない人間が来るのは。」


 クスリと笑うと、恐らくセイレーンなのであろう彼女はまっすぐに俺のところに泳いできて、目をまっすぐにのぞき込んできた。


「綺麗な目……まるであの人みたい。」


「ちょ、ちょっと、ヒイラギはアタシの……こ、恋人なんだけど。」


「あら、もう先約がいたのね。ふふ、残念。っとそれで、スター?この方々をなぜこの国に招待したのですか?」


「近年、私達の国の水産資源はハガネガゼによって、脅かされていることはお母様も承知のことですよね?」


「えぇ~、もちろんよ。魔法も効かないあのかった~い殻はどうにもできないのよねぇ~……。」


「この人間……ヒイラギとミカミはあのハガネガゼを食料にしていました。その方法を私達の国でも採用できないかと。」


「えぇ~っ!?ハガネガゼって食べられるのぉ~?」


「はい。……その、ヒイラギ、お母様にハガネガゼを食べさせてくれないかしら?」


 一口サイズに切り分けたハガネガゼの身にちょんと醤油をつけて、セイレーンさんに手渡した。すると彼女は興味深そうにそれを眺めた後、口の中に招き入れた。


「んっ?これ美味しいわぁ~っ。甘く口の中でとろけて~……ん~っ♪」


「ハガネガゼが新たな水産資源になるならば、この国はもっと豊かになると思ったんです。」


「その案さいよ~う。……でもどうやってあの固い殻を破って食料にするのかしらぁ~?」


 セイレーンさんは首を傾げると、おもむろに床に向かって手を翳す。すると魔法陣が展開されて、そこから大量にハガネガゼが出現した。


「試しにやって見せてくれるかしらぁ?」


「やって見せるのは構わないんですけど、俺のやり方は多分俺にしかできないので……別のやり方を。セイレーンさん。ミスリルよりも固い蓋つきの箱とかって魔法で作れないですか?」


「ミスリルよりも固~い箱?う~ん、ちょっと待って欲しいわぁ~。」


 少し悩むように唸ったセイレーンさんは両手を前に突き出して魔法の詠唱を始めた。それが完了すると、目の前にハガネガゼが10匹ぐらい入りそうなサイズの大きな箱が出現した。


「一応ミスリルよりも固く作ったつもりだけど~こんなのでいいかしらぁ?」


「はい、これなら多分大丈夫だと思います。」


 その箱の中に棘のついたままのハガネガゼをポンポン放り込んでいき、無理矢理蓋を閉めた。


「セイレーンさん、あとはこの箱を上下左右にシャカシャカと振りまわしてくれませんか?」


「わかったわぁ~。」


 するとセイレーンさんは魔法でそのまま箱を浮かび上がらせると、激しくシャカシャカと振り始めた。


「そのぐらいで大丈夫ですよ。」


「は~い。」


 床に下ろした箱を開けると、中に入っていたハガネガゼの棘はすっかり圧し折れて丸くなっていた。


「あとはこの折れた針を一本拝借して……ハガネガゼの口の周りをぐるっと突き刺していきます。そしたら勝手に穴が開くので、あとは中身を取り出すだけです。」


「あらぁ~、これなら簡単ねぇ~。箱を巨大化させればもっと数多くのハガネガゼの処理も可能ねぇ~。早速人を集めてやってみましょうかぁ~。スター、マーリンズで手が空いている子たちを宮殿に集めてください。」


「はっ、かしこまりました直ちにっ!!」


 それから、この国を困らせているハガネガゼの一掃と、食品化が同時進行で始まるのだった。



この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。

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