第277話 セイレーン捜索開始
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海賊風の男たちを全て片付け終えると、ドーナは彼らの1人の腕をまくり呪いが刻まれているかを確認した。
「うん、やっぱりこいつらも呪いがかけられてる。ってなると、アタシ達がセイレーンを探してるってことは奴らに筒抜けってわけだ。つまり、向こうには呪いの解呪について詳しいやつがいるとみて間違いない。」
腕を組みながら、彼女はそう考察する。その考察にミカミさんも乗っかった。
「ドーナちゃんの考えは当たってると思うよ。そうでもないと、ここにこうやってわざわざ刺客を用意しておく必要はないもんね。」
「あぁ、そうなってくると……夜に出現するって情報のあるセイレーンを探すのを邪魔してきそうだねぇ。」
「じゃあお昼に探しちゃう?」
「昼にセイレーンが出現したっていう情報は無いんだよねぇ……。まぁ目撃例が少ないってだけの可能性も無いわけじゃないけどさぁ。」
「ま、行くだけ行ってみようよ。邪魔が入るのも嫌だしさ。」
「わかった、なんかヒイラギとミカミならなんとかなる気もするし、行ってみようか。」
ひとまず市場に行くことは諦め、俺達はドーナが幼少期にセイレーンを見たという浜辺へと向かった。
「ん、相変わらずゴミ一つないねぇここの浜辺は。」
「整備でもされてるのかな?」
「一応セイレーンが出るって浜辺だからねぇ。町を挙げて清掃活動に取り組んでるのさ。」
「な~るほどね。」
「さて、じゃあここからは手分けして探していこうか。アタシは前にセイレーンに会った向こうの岩場を探してくるよ。ヒイラギ達はこの辺を探してもらえるかい?」
「わかった。海辺の岩場は滑るから気をつけて。」
「あぁ、もちろんさ。それじゃあ早速探そうかい。」
彼女が遠くの方に見える岩場の方に歩いて行ったのをミカミさんと2人で見送って、俺達もセイレーンを探し始めた。
「さてと……探すって意気込んだはいいものの、セイレーンってどういうところに出てくるんですかね?」
「う~ん、私が持ってる情報によると~……セイレーンは他種族に対して非常に高い警戒心を抱いている……と、そして人の心の善悪を読み取る力もあるみたいだね。だから邪な心に染まる前の純粋な子供の前には姿を見せることがしばしばあるみたい。」
「それって大人になった俺達じゃあ無理ってことじゃないですか?」
「柊君、可能性はゼロじゃないさ。大人でも邪な心さえ持っていなければ可能性はある。ただまぁ、セイレーンの中での邪な心っていうのが、いったいどのぐらいの基準か、わからないことが問題だけど。」
「確かに……。」
「まぁまぁ、言ってしまえば人魚なわけだし、もしかしたら釣りで釣れたりしないかな?魚みたいに。」
「そんなことを思いついてるミカミさんの心が一番邪じゃないんですかね……。」
「あっはっは、そんなことは無いさ。まま、やれることはやってみようよ。」
「……わかりました。」
マジックバッグから釣り竿を一本取りだして、早速釣りをしてみようと思ったのだが……肝心のエサが無いことに気が付いた。
「ミカミさん、人魚って何を食べると思います?まさか魚を食べたり……しますかね?」
「どうだろ?そこはちょっとわからないなぁ~。」
「う~ん、どうしようかな。」
少し悩んでいると、近くの岩場に大量にウニのような生き物を見つけた。アレをウニと呼ぶにはずいぶん見た目がヤバいけど……。ウニのトゲトゲの代わりに鋼鉄のような鈍色の棘が全身を覆っているし、大きさが小玉スイカぐらいある。
「えっと、一先ず鑑定。」
~鑑定結果~
名称 ハガネガゼ
備考
・全身をミスリルよりも固い棘と殻で守っている棘皮魔物。
・天敵がいないため、海の海藻を好き放題食い尽くしている海の厄介者。しかし、頑丈な外皮に守られている中身には、甘くとろける生殖腺がたっぷりと詰まっている。
「へぇ、なるほど。」
「何か思いついたのかい柊君?」
「あ、日本にいたころ、磯焼け防止のためにウニを駆除する活動っていうのを動画で見たことがあって、その時に駆除するために半分に割ったウニの中身に、魚が群がっているのをふと思い出したんです。」
「それをあれでやってみようってこと?」
「なんか一応海の厄介者らしいので……試しにやってみようかなって。あ、でも漁業権とか大丈夫ですかね?」
「う~ん、一応確認してみた限り、あのハガネガゼって魔物は普通に駆除対象みたいだよ?むしろ駆除したら一匹ごとにお金ももらえるみたい。」
「じゃあ問題ないですね。」
俺はマジックバッグからレヴァを取り出して、ハガネガゼへと近づいていく……そして試しに一匹のハガネガゼの針をつまんで浜辺まで引きずってきた。
「レヴァ、邪魔な針をカットしてくれ。」
そう言ってレヴァをハガネガゼにちょんと触れさせると、瞬く間にハガネガゼの針がカットされて、手で持っても痛くない形になった。
「そしたら口の周りをぐるっとカットして……あ、でてきた。」
「わぁ~お!!めちゃくちゃ身がぎっしり詰まってるじゃぁ~ん!!これ美味しいかな?いや、ぜったい美味しいよね!?」
「ちょっと取り出して洗ってみましょうか。」
普通サイズのウニのようにスプーンでやるにはハガネガゼが大きすぎるので、直接中に手を突っ込んで生殖腺を一片取り出す。この一片だけでも手の平ぐらいの大きさだな……。これを塩水できれいに洗って、醤油をちょんとつけた。
「はい、ミカミさんどうぞ。」
「わ~っ!!こんなおっきいウニに齧り付けるなんて最高の贅沢だね!!いっただっきまーす!!」
ミカミさんは自分の体と同じぐらいの大きなウニの身に齧り付くと、すぐに目をキラキラと輝かせ始めた。
「んん~っ!!お~いひ~っ!!これ、バフンウニだよ柊君っ!!旨味が濃い~♪」
「じゃあ俺も食べてみますね。」
殻の中の生殖腺の一片だけで、口の中がいっぱいになる。噛んでみると口の中に広がるのは濃厚なウニの甘みと濃い旨味……確かにこの濃厚さはバフンウニに近いかも。
「今日の夕飯はこれでウニ丼を作りましょう。」
「さんせ~い!!山盛りで頼むよ。」
「あはは、ミカミさんは一片だけでも超山盛りになると思いますよ。」
すっかり俺は目的を忘れて、いたるところに群れているハガネガゼの乱獲を始めたのだった。その途中、ジッと見られているような視線を感じたけど……多分気のせいかな?
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