第276話 セイレーンの出る町
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翌日、ドーナとの待ち合わせの関所にミカミさんを連れて赴く。昨日置いてけぼりをくらったせいで、今回だけは絶対について行く……と決意を固めていたミカミさんを引きはがすことはできなかった。そんなことをやっている間に約束の時間に遅れそうだったのだ。
「お待たせ。」
馬車の前でこちらを待っていた彼女に声をかけると、彼女はニコリと笑って挨拶を返してくれた。
「おはよヒイラギ。……今日はミカミも一緒か。」
「おっはよ~ドーナちゃんっ。柊君から話は聞いてるよ、セイレーンの涙ってやつを取りに行くんだよね?」
「そうだよ。ただまぁ、セイレーンって特級稀少魔物に登録されてる魔物だから、出会えるかもわかんないんだけどさ。」
「でも当てがあるってことはつまり?」
「あぁ、アタシは1回だけセイレーンに会ったことがある。それもまぁめちゃくちゃガキの頃だったんだけど。それでも昨今目撃情報は無いし、行ってみる価値はあると思うよ。」
「ちなみになんだけどさ、最近でセイレーンが目撃されたのっていつなの?」
「アタシが見たって報告以降目撃情報は無いよ。だからもう20年近く前ってわけさ。」
「そ、それ見つかるかなぁ~。」
「行かないよりマシってやつさ、それに久々にあの町に行きたい気持ちもあるしねぇ。」
会話もほどほどに、俺達は馬車に乗り込むと早速彼女がセイレーンを見たという町に向かって進み始めた。
「ドーナ、一つ質問があるんだけどさ。」
「ん?なんだい?」
「セイレーンってどんな魔物?」
俺はそもそもセイレーンという魔物がどんな魔物なのかを理解していなかったのだ。
「セイレーンは精霊種に属する魔物でねぇ、言っちまうと人魚さ。」
「あぁ、なるほど。」
「なんかロマンチックだね。」
「見つかるかはわかんないけどね。ま、見つからなかったら、ただ町を観光して帰るだけになっちまうんだけどさ。」
「つまりデートってことだよね?」
「否定はしないよ。」
何とかセイレーンが見つかればいいなと思いを馳せながら、馬車で目的の町へと約3時間ほどかけて進んだのだった。
そして馬車が目的の町に着いたところで停まり、降りてみるとふわりと海の香りが鼻をくすぐった。この香りはマーレでも嗅いだな。
「ここも海町……名前をシザリア。マーレよりは規模は小さいし知名度もそんなに高くはないけど、セイレーンの目撃情報があるから、ある層からは人気の町だよ。」
「ほへぇ~、でもやっぱり海町ってだけあって活気はあるねぇ~。せっかくだし、市場でも見てく?面白い魚とかあるかもしれないよ。」
「もしあったら、あのアンゴロウとかいう魚食いたいねぇ~。アレを食った翌日は明らかに肌のツヤが増してたんだよ。」
「そういえばあのアンゴロウを食べた翌日、みんな揃ってお肌が~とか、毛並みが~とか、鱗のツヤが~って騒いでいたような気がする。」
男の俺は特に何も感じなかったけど……。
「でもまぁ新しい町に来たらやっぱり、市場は覗いてみたい気持ちはあるなぁ。」
「セイレーンの目撃例は全部夜なんだ。だから夜まで時間を潰すっていう意味では、市場を覗いてみるのも良いと思うよ。」
「じゃあそういうことでまずは市場にレッツゴ~!!」
ドーナの案内で市場へと赴こうとすると、俺達の前にぞろぞろと海賊のような身なりの男たちが立ち塞がった。
「あ~、そこ邪魔なんだけど退いてくれるかい?」
「そいつはできねぇな。テメェらには賞金が懸けられてんだ。それこそ一生を遊んで暮らせるほどのなぁ。」
「はぁ、だってさヒイラギ、どうする?」
「逃げても追いかけてきそうだし、戦うしかない……かな?」
マジックバッグからレヴァを取り出すと、レヴァは日本刀のような形に変化する。
「あ、レヴァ、怪我させたくないから刃と峰を逆にできるか?」
そう声をかけると、レヴァは指示通りに刃の部分と峰の部分が逆になった。その一部始終を見ていたドーナが不思議そうに声を上げた。
「その武器……前から思ってたけど、不思議な性能してるねぇ。」
「俺の意思に従って形を変えてくれるから、助かってるんだ。」
そんな会話をしていると、無視されていたことに気付いた海賊風の男の一人が、怒って大きな声を上げる。
「お、オレ達を前にずいぶん余裕じゃねぇか。ヒュマノファイトで優勝したぐれぇで調子乗ってんじゃねぇ!!」
「あぁ、悪かったよ。」
サーベルを手に飛びかかってきた男の腹部にドーナは蹴りを捻じ込むと、男は後ろに控えていた仲間を巻き込みながら吹き飛んでいく。
「悪いけど、正直眼中にないんだよアンタ達。ま、馬車で座ってる間に硬くなった体を動かしたかったし、軽い運動代わりにさせてもらうよ。」
彼女はバキバキと指を鳴らすと、男たちの中に突っ込んで行く。すると面白いように男たちが吹き飛んでいく。それを免れた何人かの男たちが俺の方に襲い掛かってくる。
「あ、柊君。むさ苦しい人たちが向かってくるよ。」
「わかってます。」
俺に向かってきた男たちは、スキルの反撃によって、皆一様に股間を潰されて地面に蹲ることとなった。
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