第264話 酒を飲み深まる仲
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ドーナさんと一緒に食卓を囲み、会話に花を咲かせていると、あっという間に夜が更けてしまい、シアやメリッサ達は眠りについてしまった。
大人だけの時間となった今、俺達はお酒を飲みながら談笑を楽しんでいた。
「ねぇねぇ、ドーナちゃんの初恋っていつだったの〜?」
「アタシの初恋?そんなの無かったよ。……強いて言うなら、まぁ……ヒュマノファイトの決勝で負けた時に、ヒイラギに惚れた……そ、そんぐらいさ。」
クイッと芋酒を飲み干しながら、ドーナさんは少し恥ずかしそうにミカミさんの問いかけに答えた。
「子供の頃とかにもなかった?」
「ん〜、もう家出しちまったけど、アタシの産まれた家は、まぁまぁ名の知れた武術の名家でねぇ。そのせいもあって、ガキの頃は色恋なんてモンとは無縁だったのさ。」
「じゃあドーナちゃんが強いのって、その家の産まれだからってのも影響してるんだ。」
「まぁ否定はできないね。」
「これ、聞いていいことなのかわからないんですけど……どうして家出なんてしたんですか?」
そう問いかけると、ドーナさんはため息まじりに答えてくれた。
「単に家のしきたりとか、そういうのが嫌になったんだよ。特に嫌だったのは……お見合いだね。」
「あ〜……良いお家同士の子供でお見合い〜みたいなやつ?」
ミカミさんの言葉にドーナさんは頷いた。
「前にも言ったと思うけど、アタシは自分よりも弱い男に興味なんてなかったんだよ。それはあの家にいたときから変わってない。」
お酒を飲みながらそう言ったドーナさんは、少し顔を赤らめさせながら、こんなことを口にした。
「お、女なら……できれば強い男に守ってもらいたいっていうか……そ、そういう願望も、ちょっとはあったかもねぇ。」
お酒を飲んで酔いが回っているのか、普段のドーナさんなら恥ずかしがって言わなさそうな本音がポロポロと溢れている。
「あら乙女だねぇ〜ドーナちゃん。でもその気持ちはわかるわかる。女の子なら誰しも思うことさ。」
何度も頷いて同感を示したミカミさんへ、今度はドーナさんが問いを投げかけた。
「……ところで、ヒイラギとミカミってどういう関係なんだい?恋人……ってわけじゃないんだろ?」
「あぁ〜っ、その点心配ご無用っ!!私はただの柊君のナビゲーター。導き役ってだけさ。」
ミカミさんの言葉が本当かどうかを確かめるために、ドーナさんは俺の方に視線を向けてきた。それに対して、大きく頷くことで返答すると、ドーナさんはふぅん……と少し疑いながらお酒を口にする。
「やっぱり、な〜んかミカミの言葉って胡散臭いんだよねぇ。」
「なにそれ〜、こんな純粋で曇りのない眼を見てもそんなことが言えるっ!?」
どうやっているのか、本当に目をキラキラと輝かせながらドーナさんへとミカミさんは視線を送るが、それをドーナさんが鼻で笑った。
「はっ、純粋で曇りのない……ねぇ?」
「ぶ〜っ、な〜んで信じてくれないかなぁ。」
「今までの自分の行動を、胸に手を当てて顧みてみなよ。」
「別にな〜んにも悪いことなんてしてないけどなぁ〜。んねっ柊く〜ん。」
「ま、まぁ悪いことはしてないかもしれないですけど……エグいことは結構やってますよ。」
「んふふふ〜、大丈夫。私の認識の中ではエグくないからねっ!」
満面の笑みで胸を張りながらそう言ったミカミさんに、思わず俺とドーナさんはお互いに顔を合わせて苦笑いを浮かべてしまった。
「あ、そこズルいぞ〜。カップルだけの空間〜。」
「そ、そんなことないですよ。ねっ、ドーナさん?」
相槌を求めてドーナさんの方を向くと、ドーナさんは少し不満げな表情で俺の方をジッ……と見ていた。
「ど、ドーナさん?」
「その……さぁ、アタシからのちょっとしたお願いなんだけど、ドーナさんって呼ぶの止めないかい?」
「えっ?」
「い、一応……アタシ達は恋人同士になったわけだし、ここ、恋人ならさん付けで呼ぶのは不自然じゃないかなってアタシ……思ったんだ。そ、それと敬語もいらない……と思う。」
「う、な、なかなかそれは……。」
今まで散々敬意を払って接してきた人に、急にタメ口かぁ……。あ、いや、でもドーナさんの言う通り恋人同士になったわけだし……そうするべきなのか?
ちらりと視線をミカミさんの方に送ると、ミカミさんはほっこりとした笑顔で頷いていた。
「……コホン、わ、わかったよドーナ。」
「うっ!?」
少しぎこちなく、敬語を捨て去って言ってみたが、それに対してドーナさんは銃で撃ち抜かれたかのように、胸を押さえて仰け反った。
「な、なんだろうねぇ……ヒイラギのそういう反応って、凄く……可愛い気がする。」
「か、可愛いってなんですか。可愛いって……。」
「くくっ、ほらほら敬語に戻ってるよヒイラギ。」
「ぐ……きゅ、急に敬語じゃない口調で話すのは難しいんだ。」
「あっはっは、これはなかなか見ていて面白いよ。」
今日一日丸っとドーナさんと密着して過ごしてみて、本当に距離がグンって縮まったのを感じた。
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