第262話 水族館での忘れられない思い出
熟考して書いてしまったため投稿が遅れてしまいました。すみません。
昼食を食べ終えたあと、俺はドーナさんに手を引かれて、マーレの街の名物だという水族館へと行くことになった。そこはもう凄い人気のようで中に入るにも行列ができているほどだ。
「この水族館ってすごい人気なんですね。」
「そりゃあ、この水族館はマーレ一番の名物で……。」
説明しながらドーナさんは列の人々に視線を向ける。そして少し小さな声でもう一つ別の意味で有名な場所であることを教えてくれた。
「こ、この国一番……有名なデートスポット…………だからねぇ。」
顔を真っ赤にしながらそう言ったドーナさん。並んでいる人たちをよく見てみると、並んでいる人は男女のカップルが多い印象だ。もちろん家族連れもいるけど、その割合以上にカップルが多い。
顔を赤くしているドーナさんにつられて俺も少し恥ずかしくなってきたところで、俺達の受付の番が回ってきた。
「いらっしゃいませ~、2名様ですか?通常価格は、大人2名様で大銀貨2枚となりますが、当館カップル割というものがありまして、手を繋いで館内を見て回っていただくことにより、金額が半額になります。」
「そ、そういうのがあるんですね。」
まぁカップルに人気のデートスポットっていう事もあるし、そういうのがあってもおかしくはない……か。と、自分の中で完結させていると、不意にドーナさんに少し力強く手を握られ、そのまま手を受付の女性に見せつけるようにしながら、ドーナさんが震える声で言う。
「か、かか、カップル割でっ……。」
「は~い、カップル割ですね。それでは大銀貨1枚で~す。」
俺が出そうとすると、それを遮るようにしてドーナさんが大銀貨を受付の人に手渡して、俺達は水族館の中へと入場することとなった。
「よ、良かったんですかドーナさん?」
「い、いいんだよっ!!こ、これで……これで良いんだよ。」
「わかりました。じゃあ一緒に見て回りましょう。」
俺も少しの恥ずかしさを感じていたが、周りのカップルもみんな手を繋いでいたこともあり、水族館の中で時間が経つごとに、少しずつその恥ずかしさも薄れていく。そしてこの水族館の目玉だという巨大水槽の前にドーナさんと2人で立つと、色とりどりの綺麗な魚たちが俺達を出迎えてくれた。
「あ、この魚……昔ここに来た時もいた気がするよ。」
「ドーナさんは前もここに来たことがあるんですか?」
「小さいころだよ。親と一緒に魚を見に来たんだ。」
昔を懐かしむようにドーナさんが見覚えのあるというの魚の方に手を伸ばすと、その魚はドーナさんの前で大きくカラフルなヒレをフリフリと揺らして見せた。
「ヒイラギはその……いっつも料理を作ってるけど、こういうところに来て魚を見ると、美味しそうとか思ったりするのかい?」
「う~ん、俺はそういう風には思わないですね。食べる魚は食べる魚……見る魚は見る魚って自分の中で区別をつけてますから。」
「そ、そうかい。」
そして少しの間、2人でその巨大な水槽を泳いでいる魚を眺めていると、どういうわけかさっきまでカップルたちのキャッキャする声がしていたというのに、それが一切聞こえなくなった。ふと周りに視線を向けてみれば、辺りには誰もいなくなってしまっていた。そのタイミングでドーナさんが声をかけてくる。
「ひ、ヒイラギは……その、す、好きな女の特徴とかそういうのあるのかい?」
ごにょごにょとハッキリとしない声で問いかけてきたドーナさん。やはりこういうことを面と向かって聞くのは恥ずかしらしい。ちなみに答える側の俺もだいぶ恥ずかしい。
「え、えっと……優しくて、誰にでも分け隔てなく接する人ですかね。」
俺の本心を嘘偽りなくドーナさんに伝えると、ドーナさんは少し意外そうな表情を浮かべ、ある質問を投げかけてきた。
「か、かわいい女とか、上品な女とか……そういうのじゃないのかい?」
「はい、自分の身の丈は弁えてるつもりですから……。」
それを聞いたあとドーナさんは少しの間悩むように沈黙して、次第に目がぐるぐると渦巻いていくようだった。そんな時間が少し流れた後、何かを決意したようにドーナさんはこちらを向いた。
「ひ、ヒイラギっ。」
「は、はいっ!?」
こちらの目をジッと真っすぐに見つめてくるドーナさん。表情は少し赤く、よほど緊張しているのか心臓の鼓動がドクドクとこっちまで聞こえてくる。
「い、今ヒイラギが言った、す、好きな女の条件にアタシが当てはまるかわかんないけど……あ、アタシを……ここ、恋人にしてくれないかい?」
繋いでいる手を痛いほどにぎゅっと握りながら、告白してくれたドーナさん。俺にとって人生で初めての告白……。しかもこの世界に来てからずっと面倒を見てくれたドーナさんからだ。一緒に過ごしてた時間もかなりあったから、ドーナさんの性格ももちろん理解してるつもり……だから。
だから……。
「はいっ、俺で良ければ……お願いします。」
両手で握ってくれていた手にそっと手を添えながら答えると、ドーナさんの目からぶわっと涙が溢れ出し、感情が爆発したドーナさんに凄まじい勢いで押し倒されてしまった。
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