第258話 エートリヒへ悩み相談
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獣人族の国の内情が落ち着きを見せてきていることをエートリヒさんに伝えると、彼は少し安心したようにホッと一つ溜息をもらした。
「そうか……そうか、良かった。実際にあの国で滞在していたキミの証言だ、間違いないのだろう。それにシンさんがまた王の座に座り続けることができたのも、嬉しい報告だった。」
安心しながら、彼はお猪口に入っていた日本酒を一口飲んだ。そして噛みしめるように味わった後、こちらに視線を向けてくる。
「ところで、向こうで尽力してくれたキミ達に何かお礼をしたいのだが……なにか欲しいものはあるかい?」
「あ、えっと……。」
どうしようかと、意見を求めてミカミさんに視線を向けると、ミカミさんがエートリヒさんにクレイモア家の人達のことについて話し始めた。
「いやぁ、欲しいものは今のところ思い浮かばないんだけど、ただちょっと王様に相談があるんだ~。」
「相談?何かな?」
「実は私達、クレイモア家の人達から嫌がらせを受けてるんだよ。特に私達の可愛い従業員のヴェイルファースト家の人達を攫おうと人をけしかけてきてるんだ。」
ミカミさんが俺達がクレイモア家の人達から受けている嫌がらせを伝えると、エートリヒさんは少し頭を抱えた。
「クレイモア家か……彼らの傲慢さは昔から少々目に余るものがある。……とある信頼できる者からの情報だが、ヴェイルファースト家が貴族から没落したのは、彼らが関わっているとか……。その辺キミ達は何か知らないか?」
「もちろん知ってるよ。クレイモア家の長は、縁談を断ったヴェイルファースト家を恨んで、アサシンギルドにヴェイルファースト家を没落させるように依頼してたのさ。」
「アサシンギルドにか……そういえば最近彼らの名前を全く聞かなくなった。」
「それはそうだよ。だって柊君が潰したんだもん。」
「ヒュマノファイトで優勝する腕前があるんだ。それはまぁ……納得できるし嘘だとは思えない。……キミ達の話を整理すると、クレイモア家がアサシンギルドを操ってヴェイルファースト家を没落させたが、アサシンギルドはヒイラギ君が潰したと……。で、その後ヴェイルファースト家はどうしてキミたちのところで働くことになったのかね?」
「それはヴェイルファースト家が奴隷として出品されたオークションで、彼らを私達が買い取ったからさ。」
「なるほど、納得がいった。恐らくその場でクレイモア家と因縁が始まった……違うかね?」
「そのと~り。」
すべてを理解したエートリヒさんは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「証拠になるかはわからないけど、一応これがアサシンギルドにあった、ヴェイルファースト家を没落させろっていう依頼書だよ。」
ミカミさんは俺のマジックバッグの中に潜り込んでいくとその依頼書を、エートリヒさんに手渡した。
「あぁ、これは受け取っておこう。ただ気がかりなのは……差出人の名前が無いな。これじゃあクレイモア家の仕業と断定するのは難しい。」
「そっちの方の証拠はないけど、私達にさんざん人攫いを送ってきてる証拠はあるよ。」
「それはどこに?」
「この町にグライちゃんっていう、ちょっとお薬に詳しい人がいるんだけど、今まで私達を狙ってきた人がそこにいるんだ。」
「薬師グライ……元国家調合師協会所属だったかな。」
「えっ、グライさんってそんなに凄い人だったんですか!?」
「彼女はステラの相棒だったんだ。特に毒草に関する知識は国家調合師の中でも群を抜いていたと記憶している。」
「そ、そうだったんですね。」
「だがまぁ彼女なら信用に値する人物だ。後程その証拠は確認させてもらうよ。……証拠となる人物の気が狂ってなければいいがな。」
そう言った後、エートリヒさんは俺達の目を見ながらある質問を投げかけてきた。
「それで、私にクレイモア家をどうしてほしいのかな?2度と接触できないように接触禁止命令を出そうか?」
「それって一応王様からの命令になるんだよね?それを破って尚私達に人攫いを差し向けてきたらどうなるの?」
「適切な罰を下すことになる。いかに名のある貴族とはいえ、罪は罪。皆平等に受けなければならないものだ。それに、そろそろあの家には手痛い仕置きが必要な頃合いだとも思っていた。」
「はぁ~、良かった。もし王様がそう言ってくれなかったら、私達が力づくでクレイモア家を潰しちゃってたかも。」
「ははは、キミ達なら本当にやりかねないな。」
カラカラと乾いた笑いを浮かべると、エートリヒさんは懐から1枚紙を取り出した。
「何かペンのようなものはあるかね?」
「はい、ど~ぞ。」
「うん、助かる。」
するとエートリヒさんはサラサラとその紙にペンで文字を描いていく。そして最後には、高級そうな判子で紙に判を押した。その後、書いた内容を彼は読み上げてる。
「王令……本日よりヒイラギに関わる人物への接触禁止をクレイモア家に命ずる。禁を犯した場合、貴族の地位を剝奪とし、今後クレイモア家の血筋の者は貴族になることはできなくなる。……こんな感じでよいかな?」
「バッチリ、ありがと~ございます。」
「ありがとうございます。」
「明日にでもこの書状はクレイモア家に届けさせよう。……もし、今後クレイモア家が関わっていると思われる厄介な事象に遭ってしまったら、必ず証拠をつかみ私のところに持って来てくれ。」
「了解です~。」
「うん、それでは私はそろそろ行こう。良い酒をご馳走になったよ、ありがとう。とにかく今はゆっくりと休んでくれ。」
そしてエートリヒさんは国王という立場なのに俺達に深くお辞儀をして去っていった。
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