第257話 予想外の来客
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みんなとの再会の後、お互いに俺が獣人族の国に滞在していた期間中の出来事の報告をしあった。ミハエルさん達からの報告は、売り上げが伸びたりだとか、各々がかなりスキルアップした等など、良いことばかりだったのだが……報告会後に、ミハエルさん達がいなくなった後で挙がった、ルカからの報告で1つ看過できない事項があった。
「ご主人様方が獣人族の国へと行っていた間、クレイモア家の差し金で人攫いが何度か姿を現していました。」
「うげ……ま〜だあのオジサン諦めてないんだ。しつこいねぇ〜。……ところで、その人攫い達はどうしたの?」
「全員漏れなく、あの薬師のところに運び、情報を吐かせるだけ吐かせました。身柄も渡してしまいましたが、よろしかったですよね?」
「あぁ〜、グライちゃんのとこに持ってったんだ。うんうん、別に私達は彼らの身柄なんて預かってても意味はないし、グライちゃんに預けちゃって正解だよ。」
「一人当たり金貨10枚で買い取ってくれました。こちらのお金は……。」
「あ、それはルカちゃんのボーナスってことで、もらっちゃっていいよ〜。」
「ありがとうございます。」
一度テーブルの上に置いた、大量の金貨の入った袋をルカは少し嬉しそうにもう一度抱きしめるようにして持ち上げると、それをマジックバッグの中へとしまい込んだ。
「ん〜、ヒュマノファイトで優勝した柊君に守られてるから、向こうは手を出してこなくなるかな〜って思ってたんだけど、予想が外れちゃったなぁ。」
面倒臭そうにミカミさんは大きなため息を吐くと、どうしようかと悩み始めた。
「正直なところ、そろそろ我慢の限界ではあるんだよね~。向こうは好き勝手やってくるし~……そろそろ本気で潰しにかかろうかな。」
ぼそりと低い声でそう言ったミカミさんの表情は、今まで見たことが無いほど怖かった。そんなミカミさんの表情を見て、思わずゾクッと背筋に冷たいものが走ったのを感じていると、すぐにミカミさんはけろりと表情をいつものおちゃらけた表情に戻した。
「ま、一応方法は無いわけじゃないから、向こうが本当に度を越えたとき……破滅させてやろっと。」
「ちなみにその方法ってなんなんです?」
「ん~?それはね、今までに集めに集めた証拠を持って、エートリヒ君に直訴しに行くのさ。」
「何とかしてくれますかね?」
「大丈夫だよぉ~。だって私達にはカリンちゃんとシン君の後ろ盾があるんだからさっ。エートリヒ君も無視はできないさ。」
そう言ってチラリとミカミさんはカリンさんの方に目を向けると、カリンさんは何のことかわからずに首を傾げた。
「ワシが何じゃ?」
「うぅん、何でもないよ~。」
その後、ミクモさんはカリンさんの屋敷に泊まることとなり、カリンさんはミクモさんを連れてエルフの国パーピリオンへと帰っていった。それを見送った後、俺達も久しぶりに自分たちの宿に戻って一休みすることにした。
その日の夜遅く……俺達が泊まっている部屋の扉が誰かにノックされた。
「ん?こんな夜遅くに誰だろう?」
ちょうどミカミさんと晩酌の最中だったけど、一度席を立って対応に向かった。
「はい?どちら様ですか……って、えぇっ!?」
「夜分遅くにすまないね、ヒイラギ君。キミ達がエミルに帰ってきたと報告を受けたのでね、飛んで来たんだ。」
扉の向こうに立っていたのはこの国の王様であるエートリヒさんだった。そのそばにはフードを深くかぶった魔法使いらしき人が控えている。
「ひ、一先ず中にどうぞ……ちょ、ちょっとお酒を飲んでたところだったので、テーブルの上はあれなんですけど……。」
「夜分に訪ねたのは私の方だからね。特に気にはしないさ。じゃあ上がらせてもらうよ。」
エートリヒさんを部屋の中に招き入れると、お酒を飲んでいたミカミさんもギョッと驚いた表情を浮かべた。
「あ、あれっ!?お客さんって王様だったの!?」
「夜分に訪ねてしまって申し訳ないね。どうしてもキミ達の口から獣人族の国の現状を聞きたかったんだ。」
椅子に腰かけたエートリヒさんに、飲み物は……と聞くと、彼は俺達が飲んでいた日本酒に興味を示した。
「その酒は獣人族の国のものかな?」
「あ、いや……これは俺の故郷のお酒なんですけど。」
「良ければ私にも一献もらえないかな?普段あまり酒は飲まないんだが、それは……少し興味が惹かれてしまった。」
「も、もちろんです。」
お猪口をもう一つ用意して、エートリヒさんに日本酒を注いだ。すると彼はワインを飲む仕草のようにまずは香りをじっくりと堪能し始めた。
「ふむ?どことなくフルーティーな香りだ。葡萄酒のフルーティーさともまた違う。これは何を原料にしているのかね?」
「それは獣人族の国でよく食べられてるホワイトライスっていう穀物に似たもので作られてるんです。」
「穀物でできたお酒か。ではいただこう……。」
エートリヒさんはぐいっと一気にそれを飲み干すと、じっくりと口の中で味わってから、こくんと飲み込む。
「ほぅ……これは上品な味わいの酒だ。こんな酒がこの国にあったとは……知らなかった。」
「良ければもう一献どうですか?」
「あぁ、いただこう。」
エートリヒさんとお酒を交えながら、俺は獣人族の国の現状についての報告をすることとなった。
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