第252話 宴の用意
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アンゴロウの解体を終えたところで、いよいよこの魚を料理に仕上げていく。今回作るのはアンゴロウ鍋と唐揚げ……あん肝ポン酢の3種類。まずは煮込まなければならない鍋の仕込みと、蒸して冷やす工程があるあん肝ポン酢から仕込んでいこう。
「まずはお酒に浸けておいた肝の薄皮を剥がして……サラシでくるくると棒状に巻いていく。これは蒸し器の中に入れて蒸しておいてっと。」
「それで肝蒸しは終わりかの?」
「はい。今度はいよいよアンゴロウの身を使う料理を仕上げていきます。まずは鍋からです。」
ミクモさんの厨房にあった土鍋のような鍋を借りて、その中に魔物肉専門店で買ってきた野草をたっぷりと詰め込み、その上にぶつ切りにしたアンゴロウの身と、サッと湯に通した皮……ぶつ切りにした肝を乗せて野草を覆い隠していく。
「ほぅ、なるほどのぉ。こういう豪快な料理も人間は作るのだな。てっきり繊細なものばかりなのかと思ったのだが……。」
「こういう風に、豪快な料理のほうが美味しい場合もあるんですよ。」
今回、鍋出汁はアンゴロウの骨を焼いて、昆布と一緒に煮込み、味噌ベースの味をつけたものを使う。
「あとはこれに火を通すだけっと。」
弱火でじっくりと野菜の旨味を引き出しながらこれは火にかけておく。
「さてと、じゃあミクモさん、唐揚げの方はお願いしてもいいですか?」
「うむ!!任せてもらおう。」
ミクモさんに唐揚げをお願いして、俺は本日のメイン食材であるサラマンダーと、黒乱牛に取り掛かることにした。
「サラマンダーは一先ずステーキで食べたいよな。黒乱牛のヒレ肉はローストビーフって決まってるし……うん、決めた。」
まず黒乱牛のヒレ肉に塩と胡椒を振り、全体に焼き色を付けて湯煎にかける。あとは中心温度が適温になるまで放置だ。
サラマンダーの肉は分厚いところを切り出して、ステーキ用に切り分ける。
「龍の肉ってこんな感じなんだ……すごくしっとりしてて柔らかい。」
ステーキ用に切り分けたサラマンダーの肉に塩とコショウを振り、早速焼いていく。焼き加減はミディアムレアだ。
「あとは火から下ろして休ませて……っと。」
肉を休ませていると、アンゴロウの鍋がコトコトと沸騰し始めた。
「あっちの準備はオッケーだな。」
「ヒイラギ殿、こちらも終わったぞ。」
「ありがとうございます。それはもう持っていっちゃって大丈夫ですよ。」
「承った。」
お皿に山盛りになったアンゴロウとバルンフィッシュの2種類の唐揚げを、ミクモさんは鼻歌交じりに運んでいった。
……運んでいる途中で1個口の中に放り込んでいたのは、見なかったことにしておこうと思う。
「よし、こっちも一気に仕上げよう。」
休ませていたステーキとローストビーフを切り分けて、ちょっとした彩りと共に皿に盛り付ける。
「鍋の方も良しっと。」
最後にひと煮立ちさせた鍋ももう完成だ。そして出来上がった料理を台車に乗せていると、グレイスが凄まじいスピードで飛んできた。
「肉〜っ!!肉の匂いっす!!」
「お、匂いに誘われてきたかグレイス。」
「もう部屋の外に出た瞬間から、めちゃくちゃいい匂いがしてるっすよ!!コレがサラマンダーの肉っすね?」
「そう、こっちのステーキにした方がサラマンダーで、ローストビーフが黒乱牛の肉だ。」
ふと俺はあることが気になってグレイスに問いかけてみることにした。
「そういえば、ランさんはちょっと同種のサラマンダーの肉を食べるか食べまいかって悩んでたけど、グレイスはそのへんどうなんだ?」
「へ?別に肉は肉っす。流石に同じワイバーンは食わないっすけど……別にサラマンダーはワイバーンじゃないっすからねぇ〜。関係ないっす!!」
「ふむ、ランさんと考えは一緒か。」
「いやぁ〜、楽しみっすねぇ〜。」
今にもヨダレを垂らしそうになっているグレイスを宥めながら、一緒に料理を部屋まで運んでいく。
部屋の扉を開けると、グレイスがサラマンダーのステーキを持って中に入っていった。
「サラマンダーの肉が来たっす〜!!」
「あの不細工な魚は?」
「あ、それは今ヒイラギさんが持ってくるっすよ。」
「はいっ、こっちがアンゴロウ鍋とあん肝ポン酢です。」
ミクモさんが置いてくれていた、即席のカセットコンロのようなものの上に鍋を乗せて、今一度沸騰させる。その間にミクモさんが宿に保管していた芋酒を持ってきてくれた。
「美味い料理には美味い酒がないとのぉ。」
一升瓶で3本芋酒を持ってきてくれたミクモさんは、どっかりと床に座り込んだ。
「あ、そういえば……シンさんとドーナさんは来れそうですかね?」
「一応さっき伝書は飛ばしてみたが……どうかのぉ?」
本格的な料理を作り始める前に、ミクモさんに伝書を飛ばしてもらっていた。せっかくならみんなで食べたいからな。
「ま、先に食っていても問題なかろう。今に来る…………。」
そう言っていた最中、宿の扉がガラガラと開く音が聞こえてきた。
「む、どうやら間に合ったようだの。まったく運の良い奴だ。」
そしてシンさんとドーナさんの2人も加わり、一緒の食卓を囲むこととなった。
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