第251話 ミクモとともに捌くアンゴロウ
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早速アンゴロウを捌いていくのだが……その前にしっかりとやっておかなければならないことが1つ。
「それじゃあまずは、表面のぬめりを擦り落としていきましょうか。このヌメヌメは臭みの原因になるんです。」
「ふむ……しかし、これはなかなか頑固そうなぬめりだぞ?」
「そこで使うのは、塩です。」
塩がぎっちりと詰まった袋の中に手を入れ、塩を鷲掴みにして、アンゴロウの全体に振りかけた。そしてゴシゴシと体表を擦っていく。
「棘に気を付けながらこうやってゴシゴシとやっていくと、ぬめりがこんな感じでどんどん取れてくるので、表面を触ったときにキュッとなるまでやっていきましょう。」
「うむ、承知した。」
根気強くアンゴロウの表面のぬめりを擦って落とし、水で洗う。それを全部やって、ようやく包丁の出番だ。
「ぬめりがしっかりと落ちたところで、今度はお腹を開いていきます。」
「内臓を抜くのだな?」
「はい、そのとおりです。」
「それぐらいならば妾でもお茶の子さいさいだの。」
スッとミクモさんがアンゴロウに包丁を入れると、体内に溜め込まれていた水と一緒に、内臓がズルっと溢れ出てきた。
「む……なかなか臭う。」
「この感じだと胃袋の中に消化途中の魚とかが入ってそうですね。」
ミクモさんが切り開いたアンゴロウの胃袋は、歪な形に膨らんでパンパンになっていた。恐らくは中に大量に魚か何かが詰まっていると思われる。
「消化途中のものが詰まってなかったら、胃袋も食材として使うんですけど、こんな感じじゃ多分臭いがこびりついてて、なかなか取れないと思うので今回は見送りましょう。」
「この胃袋には美容に良いものは無いのか?」
「多分無いと思います。主に美容に良い成分が含まれてるのは……この皮だと思いますよ。」
「ふむ、ならばまぁ良いか。」
プニプニと柔らかい感触のアンゴロウの皮と肉の間には、恐らくアンコウと同じようにコラーゲンがたっぷりと含まれているだろう。
そして胃袋の中身が溢れないように、慎重に繋がっている喉のところから切り離して、非可食部位を入れる袋の中へと入れた。
「ふぅ、なんとかできたぞ。」
「上出来です。それじゃあ今度は胃袋に張り付いていた大きな肝臓を取り出しましょう。」
「肝か、これも食わんのか?」
「肝は料理に使いますよ。これを蒸して食べるんです。」
「ほぅ、肝蒸しといったところかの。なかなか酒に合いそうだ。」
「お酒の良いツマミになりますよ。取り出した肝は血管をとってお酒に浸して臭みを抜いておきましょう。」
せっかくだから今回は芋酒に浸しておく。ほのかに芋の香りが移ってくれればいいな。
一先ず肝をお酒に浸して冷蔵庫の中へとしまい、続く内臓の処理も終わらせた。
「これでお腹の中が綺麗サッパリなくなったので、いよいよ今度は解体に入りますよ。」
「うむ。」
「まずはこのヒレを外して……少しスリムにしてあげます。」
「こ、こんな感じで良いか?」
「はい大丈夫ですよ。そしたら、今度は皮を剥がします。この口元に包丁で切れ目を入れてあげて……。」
切れ目を入れたところに指を挿し入れて、尻尾の方に向かって思い切り引っ張ると、ベリベリと音を立ててアンゴロウの皮が綺麗に剥けた。
「こんな感じです。」
「か、簡単にやってみせるのぉ……。」
「切れ目さえ入れられれば、あとは引っ張るだけなので簡単ですよ。」
「うむむ……切れ目を入れる場所はここで良いのだな?」
「はい、そこから口のまわりを一周するようにぐるっと切れ目を入れましょう。」
「こうか?」
包丁をゆっくりと動かして、アンゴロウの口をぐるりと一周し、綺麗な切れ目が入る。
「こうしたらあとは下に引っ張ればよい……そうだな?」
「はい、一思いにベリッとやりましょう。」
「では行くぞ……フンッ!!」
ベリッとミクモさんは一思いにアンゴロウの皮を引っ剥がすと、おぉっ……と思わず声を上げていた。
「おぉっ!!案外簡単なものだの。この皮に美容に良い成分が……くくく、楽しみだ。」
綺麗に剥がれた皮を見つめて、くつくつと笑うミクモさんは、すっかり美容のことしか見えていないように見える。
「ミクモさん……喜んでくれてるところ申し訳ないんですけど、これまだまだ始まったばかりなんです。これから頭を落として、身を3枚に下ろさないといけないんです。」
「もちろん分かっているぞ。……だが、美容に良い成分が含まれているのはこの皮なのだろう?」
「正確には皮と身の間にあるので、身の方にもちゃんと美容成分があるんですよ。」
「むっ、ならばしっかりと最後まで学ばせてもらわねばならんな。」
「それじゃあこれから仕上げていきますよ。」
内臓を取り除き、ヒレを取り、皮も剥いだアンゴロウに残るのは頭を落として3枚に下ろすだけ……。いつもの魚の仕込みと何ら変わらない。
ミクモさんも魚を捌くのは、ある程度慣れているらしく、頭を落として3枚に下ろす工程は特に苦戦することもなく終えてしまった。
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