第247話 極上の癒しの後で
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「んん……はっ!?」
心地よかった眠りから目を覚ますと、俺はいつの間にかミクモさんの宿と思わしき部屋で布団に寝かされていた。
「あ…ぱぱおきた。」
「やぁやぁおはよう柊君。ずいぶんマッサージが気持ちよかったみたいだね。ぐ~っすり眠ってたんだよ?」
何が何だか状況を呑み込めずにいると、俺の服からポロッと紙が落っこちた。それを拾い上げて見てみると、さっきのほぐし屋狐々のウツキさんの名刺だった。それを見ていた時、不自然にズボンのポケットが膨らんでいたことに気付き、手を入れてみると、似たような名刺がたくさん入っていた。
(これがあるってことは……もうこの人たち全員から癒しの施術みたいなのを受けた後なのかな?)
記憶にあるのは、マッサージを受けた後に大きなスライムのような半固形の液体の中に入れられて全身を綺麗にしてもらったことと……あぁ、足ツボマッサージもやってもらって、最後意識が途切れる前にやってもらってたのは耳かきだったかな。
眠りに落ちる前の記憶を呼び起こしながら体を起こすと、やはり体は嘘みたいに軽い。
「やっぱり体がすごく軽い。あ、そういえばあの後ってどうなったんです?」
「ウツキちゃんのマッサージで気持ちよくなっちゃって、私達も寝ちゃってたんだけど~。私達が起きたとき柊君はまだ寝ちゃってたから、ミクモちゃんの妹ちゃんの足ツボとかそういうのをちょっと受けて宿に戻ってきたってわけ。」
「なるほど……。」
チラリと隣に目を向けてみると、まだランさんとグレイス、そしてシアはぐっすりと眠っている。そんな様子を眺めていると、コンコンと部屋がノックされた。
「はいはい~、入っていいよ~。」
ミカミさんが中に入るように促すと、ミクモさんが部屋の中に入ってきた。
「みな、リフレッシュしてくれたようで何よりだの。」
「いやぁ~、ホントいいリフレッシュになったよ~。数千年物のこりも一気にとれたかも?」
「それは良かったぞ。ウツキも喜ぶだろう。癒しの施術を受けた後はゆるりとこの宿で休んでゆくと良い。湯も沸かしてあるからの、好きな時に入ってくれて構わぬ。」
「あっ、ありがと~、じゃあお言葉に甘えさせてもらうね。」
ミカミさん達が話している最中に外の景色がふと気になって、窓の方に目を向けてみると、すでに外の景色は夕焼けが見えはじめていた。
「もう時刻は夕方……。そんなにぐっすり寝ちゃってたのか。」
「くく、足ツボで悶えておったヒイラギ殿が、耳かきで癒され始めた途端に嘘のように眠ってしまったのには思わず笑みがこぼれたぞ?」
ニヤリと笑ってそう言いながらミクモさんはこちらに歩み寄ってくる。そして俺の隣までやってくると、胸元からふわふわの梵天の代わりにこけしのような装飾が付いた耳かき棒を取り出した。
「ま、妾の絶技に抗えるものなど存在せん故、無理もないのだな。」
俺の隣で自分の頭に生えている狐耳に耳かき棒を挿し入れて耳かきを始めたミクモさん。しかしちっとも汚れていなかったようで、何も汚れが付いていない耳かき棒の先端を見て、ふむ……と声を漏らした。
「うむ、毎日自分でケアしておる故、汚れは全く溜まっておらんな。」
「ミクモちゃんの耳って耳かき難しそうじゃない?頭の上についてるし……。」
「慣れたものだ。それに自分以外の者に耳は触らせたくは無いのでな。」
そしてミクモさんは立ち上がると、俺にある誘いを持ち掛けてきた。
「ヒイラギ殿、今宵の夕飯だが……あいにく妾の宿の食材は全て城に預けてしまった故、現在食材が無いのだ。そこで、これから買い物に行こうと思うのだが、付き合ってはくれぬか?」
「もちろんいいですよ。ミカミさん達も一緒に行きます?」
「あ、私はシアちゃんたちのこと見ておくよ。柊君も私もいなくなっちゃったら、みんな困惑しちゃいそうだからね。」
「わたしは…ぱぱについていきたい。」
「うんうん、じゃあメリッサちゃんだけ行っておいで?でもでもパパから離れちゃダメだぞ~?」
「うん…やくそくっ!」
「それじゃあメリッサと一緒に行ってきます。」
「うん、いってらっしゃ~い。」
ミカミさんに見送られて、俺はミクモさんとメリッサと一緒に宿を出て、普段ミクモさんが贔屓にしているというお店へと向かう。
「物資が届いたから、もう普通のお店も営業を始めたんですかね?」
「いや、普通の店はまだ営業再開とはいかぬだろう。今向かっておるのは、普通の店ではない。生粋の狩人が運営している店なのだ。」
「ってことはジビエみたいなものを専門に扱っているようなお店ってわけですか。」
「そのじびえというものが何なのかはわからぬが、魔物の肉や野草などを専門に扱っているぞ。」
「魔物の肉に野草……楽しみですね。」
「まもののおにく…おいしい?」
「うむ、鮮度は抜群間違いなしっ、美味いことも間違いなしだぞ。」
「ふふ…たのしみ。でも…ぱぱとおかいものできるほうが…もっとたのしみ。」
ウキウキしているメリッサと手を繋ぎながら、ミクモさんの後に続いて歩くのだった。
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