第246話 ほぐし屋狐々
ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。
マッサージ台の上にうつ伏せに寝かされた後、背中に少し重みを感じると、ウツキさんの声が背後から聞こえてきた。
「それでは早速始めていきますよ~、どの辺がこっている~とかわかりますか?」
「えっと、腰と肩だと思います多分。」
「了解しました~。それでは体の力を抜いて身を任せてくださいね~。」
少し嬉しそうなウツキさんの言葉が聞こえてきたと同時、ほんのりと温かい液体が背中にかけられたのを感じる。
「あ、冷たかったですか?」
「いえ、大丈夫です。」
「それは良かったです~。まずは薬効成分のあるオイルをまずは背中全体に塗り込んでいきますからね~。」
手の平全体で塗り込むように背中にそのオイルを塗りこまれていくのがわかる。これだけですでに心地いい。
(ヤバい……寝そうだ。)
「くふふふ、気持ちいいですかぁ~?眠たかったら寝ちゃっても良いですから、どうか身を任せてくださいね~。」
心地良い強さで肩と腰……そして背面全体をマッサージされていると、カーテンで仕切られた隣から、ミカミさんの声が聞こえてきた。
「あ゛〜……極楽ぅ〜。羽根の付け根のところ、かなりこってたんだよね~。お゛っぅ……そこそこぉ~。」
「あちらのお客様も気持ちよくなってくださってるみたいですね~。」
「あの、向こうの方は誰が……。」
「他のお客様は私の分身が対応中です~。」
「あ、そうなんですね。」
「後程私が直接対応に回りますので、一度分身にマッサージを任せることになりますが、その点ご了承くださいね~。」
「は~い。」
その後、じっくりと丹念に体のこりを揉み解してもらっていると、どんどんウトウトして来てしまい、本格的に眠くなってきてしまった。そんなタイミングでウツキさんの手が背中から離れた。
「それではここからは分身に施術をお任せしますね。」
「ん……わかり、ました。」
そしてウツキさんがコツコツと去っていく足音が聞こえた後、また背中に体重を感じた。
(あ、これが分身なのかな?でも……分身でも体重って感じるんだなぁ。)
そんなことを思っていると、マッサージがまた再開されるが……さっきとは少し手つきが違うことに気が付いた。
(ん?なんかさっきよりも……指圧が強いような……気のせいかな?まぁ気持ちよさは変わらないから別に気にするほどでもない……か。)
さっきとの違いに少しの違和感を感じながらも、身を任せようと目を閉じようとしていた時……背中の上から声が聞こえてきた。
「くっくく……早速妾の妹の店に足を運んでくれたようだのぉヒイラギ殿?」
「え、そ、その声は……。」
聞き覚えのある声を聞いた瞬間に、意識がパッと覚醒する。
「み、ミクモさん!?」
「正解だ。せっかく妹のところに来てくれたのだからの、代表として接客させてもらうぞ?」
「い、いや惰眠を貪るってさっき言ってませんでした?」
「惰眠を貪るよりも面白そうなことが起こりそうだったからのぉ~。ほれ、ここがこっているのだろう?」
さっきのウツキさんとは違い、俺のこっている個所をピンポイントで刺激してくるミクモさん……。思わず体がピンと硬直してしまう。
「うっ!?」
「う~む、これはこれは頑固なこりだぞ~?ふにゃっふにゃになるまで揉み解してやらんとなぁ。」
結局その後俺はミクモさんに丹念に体のこりを揉み解されて、施術が終わるころにはマッサージ台から起き上がることができなくなってしまっていた。
「よ~し、一先ずはこんなものだろう。妾の施術はどうだったかの?」
「じゅ、熟練の手さばきって感じがしました……はい。」
「そうであろうそうであろう。なにせウツキや他の妹たちに稼ぐ術を教えたのは妾だからの。つまり妾が一番手練れというわけだ。」
少し落ち着いたところでゆっくりと体を起こしてみると、嘘みたいに肩が軽いし、おもっ苦しかった腰のあたりもすっきりとしていた。
「あ、凄い。体が軽いです。」
「当然だ、こりはしっかりとふにゃふにゃになるまで揉み解したし、この薬効のあるオイルも皮膚から浸透している。まぁ少なく見積もっても一週間は疲れ知らずで動けるだろう。」
「そ、そんなに凄いものなんですね……。」
「でもでも、できれば定期的に通ってほしいですね~。薬効成分は数日で効果が消えちゃいますから。」
隣のカーテンをするりと抜けて姿を現したのはウツキさん。こうやって2人が並んでいると、どちらがウツキさんでどちらがミクモさんなのか、一目ではなかなか判別がつかない。唯一違う点を挙げるとすれば、ミクモさんは尻尾が3本でウツキさんは尻尾が1本だけ……これぐらいだ。細かいところを見ればもう少し違いは見えてきそうだが……。
「あ、ところでほかのみんなはどうしてるんです?」
「他の皆さんなら気持ちよ~くお眠りしてます。あの様子だとしばらく起きないと思いますよ~。」
「そうですか……じゃあどうしようかな。」
「くふふ、それなら次はあっしの施術でもいかがでありんす?」
「いやいや、次は拙僧の施術を是非に……。」
「え?えぇっ!?」
いつの間にやら、ミクモさんの姉妹と思われる人たちがたくさん押しかけていて、俺のことを囲んでいた。
「ここにいる者たちはみ~んな妾の妹たちだ。みな誰かの体の疲れ、心の疲れを取り除く仕事をしているぞ。くふふ、さぁ、次は誰に癒してもらうのか……じっくりと選ぶがよいぞヒイラギ殿?」
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。