第239話 ミクモの反応は如何に?
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早速脳内で立てた献立通りに調理を進めていると、興味深そうにミクモさんが俺の手元を覗き込んできた。
「ほう、魚の処理一つとっても手が込んでおるのぉ。骨もそうやって一本ずつキッチリと抜くのか。」
「自分が食べる立場になったら、食べた魚に骨が入ってたら嫌じゃないですか。それに魚の骨が喉に刺さったら大変ですし……。」
「うむ、まぁ間違いないの。魚の小骨は喉に刺さるとイガイガしてイラつくからな。」
「そういうのが無いように頑張って気をつけながら骨を抜くんです。あとはこの魚は切り身にして、この浸け地に浸しておきます。後は味が染みたら焼くだけです。」
「ふむ、この液体は味見できぬか?」
「良いですよ。」
「では失礼しよう。」
ミクモさんはスプーンで一口浸け地を味見すると、驚いた表情と共にふわふわの尻尾をピンと垂直に立てた。
「こ、これだけで美味いぞ!?こんな美味い汁に浸けて焼くのだから美味いに決まっておる。」
「焼き上がるとまたもっと美味しくなるんですよ。楽しみにしててくださいね。」
魚に味を染み込ませている間に、俺は副菜を作っていく。今回作るのは卵焼きと葉野菜の白和え。どちらも朝に優しい味付けの料理だ。
「まずは白和えの肝になる豆腐を作っていきます。」
「とうふとな?」
「大豆……えっと、豆を茹でて搾った汁から作るものですね。今からやって見せますから。」
まずは魔法瓶に豆乳を出し、それを鍋に入れて火にかけ、ポコポコと少し泡が浮いてくるぐらい温める。一度火を止めて、にがりを入れて全体をかき混ぜると、黄色い液体と、白い固形のものに分かれてくる。
「あとはこの白い固まった部分を丁寧に掬って容器に移して……上から重しをして置いておきます。」
「これで完成なのかの?」
「一応材料の準備はお終いですね。これが固まる間に葉野菜を茹でていきます。」
今回白和えに使う野菜は、ミクモさんが用意してくれていた、寒じめほうれん草のような縮れた葉野菜を使う。茹でて氷水で冷やした葉野菜を一口サイズに切って、醤油と味醂で味付けしただし汁に浸しておく。
「良し、豆腐もそろそろ出来たかな。」
容器から外してみると、重めの重しをしていたおかげで、水分少なめの豆腐が出来上がっていた。これから白和えに使うにはちょうどいい。
「これを滑らかになるまで潰します……。」
「せ、せっかく形を整えたというに、粉々にしてしまうのか!?」
「これはこういう料理なんですよ。」
そして滑らかになるまで潰した豆腐に、先程茹でて出汁に浸しておいた葉野菜を混ぜて、だし汁を加えながら少しずつ伸ばしていく。
「よし、これで完成です。」
「ほぉぉ……これはまた幻想的だの。雪が降り積もったかのような料理だ。」
「これはこの中で冷やしておきますね。冷やしておくと味が染み込むんです。」
「ほうほう、なるほどのぉ。」
白和えを作り終えたところで、今度は玉子焼きの準備に入った。今回は甘口の玉子焼きを作ろうと思う。メリッサもいるし、シアも甘い卵焼きのほうが好きだからな。
「まずは卵を溶いて、ここに甘く味付けした出汁を混ぜていきます。」
「それは……焼くのか?」
「はい、これを四角いフライパンで焼いていきます。」
油を馴染ませたフライパンに卵液を流し、それが少し固まるのを待って、半熟の状態で奥から手前へとくるくる巻いていく。
「な、何が起こっておる!?」
「こうやってフライパンを動かしながら、卵を手前に手前に巻いてるだけですよ。」
そうしてくるくると何度か巻いて、形を整えてあげれば……。
「はい、玉子焼きの完成です。」
「うむむ……これはまた技術が詰まった料理といった感じかの。」
「慣れたら誰でもできますよ。あとは魚を焼くだけですね。」
魚を焼いて、味噌汁を作り……炊き上がったホワイトライスに、先ほど作った白和えと玉子焼きを添えれば……。
「一応、出来上がったんですけど、こんな感じでどうですかね?」
「ほほぉ〜、なるほどのぉ。早速食っても良いか?正直な話、見ているだけで涎が出そうになっておった。」
よだれを拭うような仕草を見せたミクモさんは、フォークとナイフを手に取ると、早速どれから食べようか品定めを始めた。
「ではではの〜、まずはこの魚から頂いてみようかの。」
器用にフォークとナイフを使って魚を一口サイズに分けたミクモさんは、それをパクっと口の中に放り込んだ。
「うむっ、文句無しに美味い。ホワイトライスと合わせると最高だ。こっちの雪のような料理はどうかの?」
次々に料理を食べていくミクモさん……。一つ一つの料理を口にするたびに、いい反応を見せてくれる。特に尻尾の挙動が凄い。太い尻尾がブンブンと横に振れるので、見ていて癒される。
そして全部の料理を食べ終えると、俺にあるお願いをしてきた。
「ヒイラギ殿、無粋な願いであることは重々承知なのだが……出来れば作り方を教えてはもらえぬかの?」
「もちろん良いですよ。でもここにはない調味料もあるので、出来る範囲で良ければですけど……。」
「それで構わぬっ!!」
その後、ミクモさんにさっき作った料理の作り方を教えながら、俺はみんなの朝食を用意していったのだった。
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