第236話 魔物の卵に起きた異変
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ミクモさんに使っていいと言われた部屋は、高級旅館顔負けの豪華で広い部屋だった。その部屋で寛ぎながら、俺は優勝賞品としてもらった魔物の卵をマジックバッグから取り出した。
「この魔物の卵……どうしましょうか?」
「どうするって言っても〜、食べる?」
「食べるならシア、玉子焼きが良いっ!!」
「あはは、さすがに勿体ないので食べないですけど……どうやったら魔物が産まれてくるのかな〜って。」
「試しに鶏みたいに体で温めてみたら?こう……抱きしめるみたいにぎゅってすれば……。」
「な、なんか恥ずかしいですけど、やってみますか。」
卵を両手で抱えながらお腹の辺りに持っていって、それを優しく抱きしめてみる……。
「……………………。」
「どう?なんか感じる?」
「いえ、特に何も……。」
「ダメかぁ〜。」
諦めて違う方法を探そうと、卵を離そうとすると、突然ブルブルと卵が震えだした。
「た、卵が震えて……。」
驚いていた最中、今度は卵がヒビ割れてそこから小さな人の手のようなものが飛び出してきた。
「ちょちょちょっ!?み、ミカミさーん!!こ、これどうしたら……。」
「わ、私に聞かれても困るよ柊君っ。」
慌てふためいている間に、どんどん卵は割れていき、中から小さな女の子が姿を現した。
「お……女の子?」
その子は人間とそっくりな外見ながらも、ところどころ人間ではない特徴があった。
「これ、触覚?それに羽もあるし……あ、お尻のところにハチみたいな針がある。」
少し観察していると、その子は俺のことをジッと見つめて、おもむろに口を開いた。
「ぱ………ぱ?」
「ぱ、パパ?」
思わずオウム返しのように聞き返してしまうと、その女の子は、俺の手のひらの上で何度も頷いた。
「ぱぱ…ごはん。」
そう言うとその女の子は、鳥の雛のように餌をねだるような仕草を見せる。
「え、えっと……ご、ごはんって何を与えれば良いんですかね!?」
「お、落ち着こうか柊君。こういう時のための鑑定スキルでしょ?」
「あ、す、すっかり忘れてました。えっと……鑑定っ。」
女の子に向かって俺は鑑定を使った。すると、この子の種族など詳しい情報が明らかとなる。
~鑑定結果~
種族名 メイジビークイーン
備考
・メイジビーという魔法に長けた魔物の女王。魔物の中でもかなり知能が高い。
・メイジビー及びメイジビークイーンは雑食性だが、メイジビークイーンは親と認識したものから与えられた食事しか口にしない習性がある。
・メイジビークイーンの幼少期は、クイーンハニーと呼ばれる女王専用の甘く栄養価の高い蜂蜜を食べて育つ。
鑑定の結果、この子についていろいろ分かったものの、同時に頭を悩ませる問題も発覚した。それは幼少期の食べ物の問題だ。
「く、クイーンハニーっていうのを食べるみたいです……ね。」
「何それ?」
「甘くて栄養価の高い蜂蜜だそうです。」
「う〜ん、そんなの持ってないよね〜。どうしよっかなぁ。」
フワフワとミカミさんは女の子の近くに飛んでいくと、いまだに口を開けてごはんを待っている女の子の口の中を覗き込んだ。
「うぇっ!?この子、産まれたばっかりなのに歯が全部生え揃ってるよ!?魔物ってすっごぉ……。」
「……ごはん…ない?」
なかなかご飯がもらえなかったことで、女の子は少し悲しそうな表情を浮かべてしまった。
「あ、ま、待ってね?すぐに用意するから……って言ってもどうすれば良いんだろう。」
少し悩んだ後、俺はあるお菓子の可能性に賭けることにした。
「こ、これさ。プリンっていうお菓子なんだけど……食べれるかな?」
プリンの材料は卵。卵はたんぱく質とか、ビタミン、ミネラルがすごく豊富な食材で栄養価は凄く高い。それが使われてる甘い食べ物……つまりプリンなら食べてくれるのではと思ったのだ。
「んっ…ちょうだいっ…ちょうだいっ!」
口を開けてぴょんぴょんと手のひらの上で飛び跳ねる彼女に、プリンを少し食べさせてみた。
「あむ…んむんむ…………。」
「ど、どうだろう。」
こちらが様子を窺っていると、突然女の子の体が光だし、どんどん輪郭が大きくなっていく。
「え、ええっ!?」
そして最終的にはシアと同じぐらいの背丈まで、一気に成長してしまったのだ。
「お、おっきくなった……。」
思わず驚いていると、女の子はぎこちない足取りでこちらに歩み寄ってきて、俺の目の前にちょこんと座ると、また口を開けた。
「ぱぱ…もっと…もっとぷりんほしい。まだまだ…たりない。」
「わ、分かった。」
「ずる〜い!!シアもプリン食べた〜い!!」
「自分も食べたいっす〜!!」
我慢できなくなったシアとグレイスが女の子の隣に座って、同じように口を開けた。
「大丈夫だから、プリンはたくさん作ってあるから……順番な順番。」
メイジビークイーンの女の子と、シアとグレイス……3人に順番にプリンを食べさせていると、ミカミさんがニヤッと笑いながらこんな事を言ってきた。
「まるでお父さんだね柊君?」
「お父さんってこんな感じなんですかね……。」
「あ〜……でも、どっちかって言うとお母さんのほうかな?この感じは母性的って言う表現が合ってる気がする。」
シアとグレイスの2人はプリンを3つぐらい食べて満足したものの、例の女の子の方は驚くことに10個もプリンを食べてようやく満腹になったようだ。
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