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転生料理人の異世界探求記  作者: しゃむしぇる
五節 獣人族再興へ
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第235話 平和の兆し

ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。


「ほれほれ~、乾杯ぞ?」


 ほのかにサツマイモのような香りのするお酒の入った猪口を、こちらにスッと差し出してくるミクモさん。


「あ、あの……シンさんを一人で行かせちゃって大丈夫ですか?」


「あぁ、シン坊のことならば心配はいらん。愚直なれど、この国では妾に次ぐ実力者には違いないからの。シン坊を恐れて行動できなかった臆病者なんぞと戦って負けはせぬよ。それよりも、ほれ早う乾杯してたも~?」


「まぁミクモちゃんがこう言ってるし、乾杯しようよ柊君。」


「う~ん、わ、わかりました。」


 ミクモさんと猪口を合わせて乾杯し、そのサツマイモのような香りのするお酒を飲んだ。


「あ、これ美味しい……香りも芳醇で、奥深い甘さが口の中に広がるのにしつこくない。寧ろ飲んだ後の後味がすっきりしてて……。」


「くっくく、美味かろう?この国が誇る珠玉の酒なのだ。名を()()という。ちなみに考案者は妾じゃ。」


「え、そうなんですか?」


「うむ。この国には砂糖芋という野菜があっての。それがまた甘くて美味いものでな。それを酒にできないかと、妾が酒造を生業にしている者へ掛け合ったのが始まりだ。」


 少し誇らしそうにしながら、ミクモさんは芋酒を飲み干した。するとまもなくして、出ていったはずのシンさんが息を切らしながら戻ってきた。


「ぜぇ……ぜぇ、ま、待たせたのだ。」


「遅いっ!!雑魚相手にどれだけ時間をかけているっ!!」


「ぐぉぉっ!?」


 ミクモさんは俺の目の前からシャッと消えたかと思えば、戻ってきたシンさんの顔面にドロップキックをかましていた。そしてすさまじい勢いでシンさんが壁に叩きつけられている間に、ミクモさんはシンさんが連れてきた顔面が陥没している獣人達へと目を向ける。


「ひぃ、ふぅ、みぃ……向こうで拘束されているはずのバフメトを含めれば4人か。こやつらが本当に国を荒らしまわっていた勢力のトップであれば、指揮系統を失った勢力は時間と共に瓦解するであろう。だが、野心の高い者がおれば話は別……念のため粉々になるまで砕き、潰しておいた方が良いか。」


 そう分析しながら、ミクモさんは壁に突き刺さっていたシンさんの体を引っ張って抜くと、新たな指令を出す。


「シン坊、今すぐこの国で動ける兵士を動かし、各勢力の残党を排除させよ。一人も残すでないぞ。それと、お主は今すぐ各地を回って自分が再び立ち上がったことを宣言して来い。」


「がぅぅ、承知したのだミクモ殿。だ、だが、我もヒイラギ殿達と酒を飲み交わしたいぞ。」


「それと国の安全とどちらが大事なのだ?んん?そもそもお主が騙されて呪いなんぞかけられなければ、こんな事態には発展しなかった。その責任を背負い、今すぐ宣言と謝罪をして国中を回って来いっ!!」


「わ、わかったのだぁーーーっ!!」


 バコッと尻を蹴り上げられたシンさんは、急いでまたこの部屋を出て行ってしまった。とてもじゃないけど一国の王の姿とは思えない……。


「まったく、これ以上醜態を晒し、妾の株まで下がってしまっては困るからの。」


 やれやれといった様子でシンさんを見送ったミクモさんは、空になった酒瓶をどこかへと片付けて、くるりとこちらを向いた。


「すまんな、一国の王の醜態を間近で見せてしまった。だが落胆はしないで欲しいぞ。シン坊はこの国の王たる器ではあるのだ。ちょいと政治が苦手なだけでな。」


「そのサポートをミクモさんがしてる感じなんじゃないですか?」


「まぁ、手を貸してやるのは今回だけぞ。後のことはシン坊の忠臣に任せる。」


 くぁぁ……と大きな欠伸をしたミクモさんは眠そうに目をこすりながら、俺のことを手招きしてきた。


「今宵は王宮は大慌てで騒がしくなるであろう。騒ぎが落ち着くまで、そなたらは妾が預かろう。」


「え、預かる~って、ミクモちゃんの家って大きいの?」


「妾は宿を経営しておる。こんな状況故に部屋は空室ばかり……客人を泊められる部屋はいくらでもある。気にせず泊まっていくと良い。」


「それじゃあお言葉に甘えよっか柊君っ。」


「そ、そうですね。」


「うむ、ではついてくるがよい。」


 カランコロンと下駄を鳴らして歩き始めたミクモさんの後をついて行く。その道中でドーナさんが小声で話しかけてきた。


「なんか、アタシ達の仕事が無くなっちまったねぇ。」


「ま、まぁでも一先ず問題が解決しそうで良かったですよ。これで平和になればいいんですけど……。」


「ま、そうだねぇ。こっちの強いやつと戦えなかったのはちょいと残念だけど。」


「強い者との戦いを所望ならば、妾がいつでも相手になってやるぞ?」


 こそこそと話をしていると、いつの間にか後ろを振り返っていたミクモさんが、にっこりと笑ってそう言った。


「いっ!?き、聞こえてたのかい?」


「獣人の聴力を舐めてはいかんぞ?五感に関しては他の種族を大きく凌駕しているのが獣人なのだ。で、稽古相手が欲しいのなら妾が相手になってやるぞ?どうする?」


「失礼を承知で聞くけど、アンタの実力はどんなもんなんだい?」


「妾の実力か?そうだのぉ~、そこのカリンと同じくらいかの。」


「全然わかんないよ……。」


「ま、戦ってからのお楽しみ……のほうが楽しめるであろ?くっくくく……。」


 不敵に笑うミクモさんの後に続いて、俺達は彼女が経営しているという宿に案内してもらったのだった。



この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。

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