第228話 ヒュマノファイト決勝戦
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そしていよいよ決勝戦の舞台で、俺はドーナさんと向かい合っていた。かつてないほどドーナさんは楽しそうで、戦いたくてうずうずしているようだ。
「さぁさぁ、今までのヒュマノファイトの歴史の中でも類を見ない程、トントン拍子で決勝戦が始まろうとしておりますっ!!皆様ご存知かと思いますが、ここで改めて決勝戦へと駒を進めた強者2名の紹介をさせて頂きますっ!!まずは今大会の優勝候補筆頭……魔物ハンターギルドのリーダー、ドーナ選手っ。予選を勝ち上がった他の選手を規格外の一撃で沈め、決勝戦まで駒を進めてきましたぁっ!!」
ドーナさんの紹介を終えると、会場から大地が震えるほど大きな歓声が沸きあがる。その歓声が沸きあがる中、アナウンサーの人はこちらに視線を向けてきた。
「そして優勝候補のドーナ選手と相対しますは、今大会のイレギュラー……予選から無慈悲な急所攻撃で一撃で相手を沈め、ここまで勝ち上がってきたヒイラギ選手ですっ!!驚くことにヒイラギ選手はドーナ選手の推薦で今大会に参加しています。この対決はまさに運命なのでしょうかぁっ!?」
アナウンサーの人の紹介で会場がざわめき始める。
「さぁ、皆さんを焦らすのもここまでにして、そろそろ運命が悪戯したこの最強を決める対決を始めたいと思いますっ!!両者、向かい合って構えてください!!」
俺が木剣を構えると、ドーナさんはこの大会で初めてファイティングポーズをとった。そしてまるで猛獣のように凶暴な視線をこちらに向けてきた。
「それではヒュマノファイト決勝戦…………はじめえぇぇっ!!」
開始の合図と同時に、ドーナさんが俺の視界から消える。それとほぼ同時にスキルの危険察知が上からの危険を報せてくる。
「まずは挨拶代わりに一発だよ。」
声のした上の方を見上げると、すでにドーナさんが空気を切り裂くような、鋭い踵落としを放って来ていた。
「ふっ!!」
それを一歩横にずれて躱すと、先ほどまで俺が立っていた場所に隕石のような凄まじい威力の踵落としが落ちた。その衝撃でこの舞台が粉々に砕け散る。
「うっひゃ~……ドーナちゃん本気じゃん。これもう舞台が舞台として成り立ってないけどどうするんだろ?」
ミカミさんがそんな疑問を呈していた最中、アナウンサーの人が声を上げる。
「た、たった今ルールの変更のお知らせが入ってきました!!決勝戦に限り、場外負けは無しになりましたぁっ!!」
「ん、これでくだらない負け方は無くなった……。さぁ、どっちかがぶっ倒れるまでの勝負だよヒイラギッ!!」
砕け散った舞台の破片を巻き上げながら、こちらに猛進してきたドーナさんと一気に近距離での戦闘にもつれ込む。正直、ミカミさんからもらったスキルが無かったら、この拳の雨を搔い潜りながら反撃に転じることなんてできなかったと思う。
「ハハハハッ!!いいねぇいいねぇ、アタシと真正面からこんなに打ち合える奴は初めてだよっ!!」
興奮しながらドーナさんは下から逆袈裟に蹴りを放ってくる。その蹴りで俺は手にしていた木剣を弾き飛ばされてしまう。
「あっ!?」
「視線が外れたよっ!!」
一瞬視線が飛んで行ってしまった木剣を追いかけてしまう。するとそれを見逃さなかったドーナさんがすかさず攻撃を放ってきた。
「ん?」
その攻撃も俺はスキルのおかげで回避すると、ドーナさんは少し怪訝そうな表情を浮かべる。
「前々から反応がすごく良いとは思ってたんだけど、今のはちょっとヤバいねぇ。攻撃は視界にも映ってなかっただろうし、完璧だったと思ったんだけど、良く避けたねぇ?」
「あっはっは、ドーナちゃん柊君を舐めちゃダメだよ?なんてったって、柊君は私のお気に入りなんだからねっ。」
「ミカミの基準がいまいちわかんないけど、ヒイラギがやっぱりアタシの見込み通りだったってのはわかったよ。」
そう言うとドーナさんは、両拳を合わせた。凡そ拳から鳴る音とは思えない、ガキンという金属同士がぶつかるような音が鳴り響く。それと同時、ドーナさんが真っ赤なオーラを体から放ち始める。
「ふぅ~~~っ、アタシの奥の手……見せてやるよヒイラギ。」
口から蒸気のような真っ白な息を吐き出すと、ドーナさんはクラウチングスタートのような体勢をとった。その直後、危険察知が発動し体が避け始めたとほぼ同時、俺の頬をドーナさんの拳が掠め、刃物で切られたように鋭い痛みが走った。
「いっ……。」
大きく後ろに跳んで痛みの走った頬に手で触れてみると、手の平に血が付いた。それを目にしたミカミさんがぎょっと目を見開く。
「えっ!?い、今避けてたよね?」
「やっぱり、思った通りだ。超人的な反応ができても、避ける速度には限界がある。その限界を超えちまえば、攻撃は当たる。」
ドーナさんのその言葉にミカミさんが納得したように声を漏らす。
「なるほど、そういう事かぁ。レベル差があるせいで、ドーナちゃんのステータスと柊君のステータスに大きな開きがある。だからドーナちゃんの全力に柊君が反応しきれてないんだ。でも……ドーナちゃんのソレ、全力っていうより、自分の限界を超えて力を引き出してない?」
ミカミさんがそう言った直後、ドーナさんの手の血管がパンと弾け、血が流れだした。
「流石にバレちまったかい。コイツがアタシの奥の手ってわけさ。身体能力強化・絶って言うんだ。コイツを使うとは思ってなかったんだけど、ヒイラギの強さがアタシの想像をはるかに超えてたからねぇ。アタシがぶっ壊れるのが先か……ヒイラギを倒すのが先か、こっからが本当の勝負だよ。」
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