第226話 果実飴
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次の調理に取り掛かろうとすると、宿の方からドーナさんが鼻を鳴らしながら、誘われるようにこちらへと歩いてきた。
「めちゃくちゃいい匂いがしてるって気になって出てきてみれば……やっぱりヒイラギかい。」
「あ、ドーナさん。よかったら一緒に食べませんか?」
「一緒して良いのかい?」
「もちろんです。あそこに色々食材を用意したので、それを串に刺して、炭火で焼いて食べてください。あ、お酒はミカミさんのところにあるので、よかったら。」
「ん、じゃあその厚意に甘えようかねぇ。」
そしてドーナさんは食材の前で悩みながら、食材を串に刺していった。それを見ながら、俺も調理を進めていく。
「まずは鍋に砂糖と水を入れて、中火で温める。」
砂糖と水が混ざりあってポコポコと沸騰し、少し色付いてきたら火から下ろして、この液体に竹串に刺した果物を浸していく。
「あとはこれを立て掛けて冷ましておくと。」
どんどんその作業を繰り返していると、魚にかぶりついたシアがこちらへ近づいてきた。
「ヒイラギお兄ちゃん、何してるの〜?ごはん食べないの?」
「この果実飴を作ったらすぐ行くよ。」
「果実飴?」
「さっき屋台で果物に蜂蜜がかけてある食べ物を見つけてな。」
ちょうど冷めたポンポンオランの果実飴をシアに手渡す。
「食べてみるか?」
「うん!!えへへぇ〜、いただきま〜す!!」
大口を開けてシアがそれにかぶりつくと、パキパキと音を立ててポンポンオランを覆っていた薄い飴の層が砕けていく。
「んっ!?」
シアもその食感に驚きながら、ゆっくりと果実飴を味わうと、次第に表情を蕩けさせていく。
「えへ〜……美味しい〜っ!!こっちの違うのはまだ食べちゃだめ?」
「もう少しで固まるから、少しだけ待っててな。もう1本ぐらいお魚を焼いたらちょうどいいと思うぞ。」
「うん、わかった!!」
するとシアはパタパタと食材を並べてあるテーブルに行って、また魚の切り身を串を刺して焼きに向かった。
それと入れ替わるように、ミカミさんがこちらに飛んでくると、有無を言わせず両手を差し出してきて、果実飴をおねだりしてきた。
「ポンポンオランの果実飴で良いですか?」
「わかってるじゃあないか柊君。それを頼むよ。」
「はい、どうぞ。」
ポンポンオランの果実飴をミカミさんに差し出すと、シアとは違い、ペロペロと舐め溶かしてやや慎重に食べ始めた。
「ガブッといかないんですね?」
「実は祭り屋台のリンゴ飴にいや〜な思い出があってね。それ以来こういうのは、しっかりと溶かして食べるようにしてるんだ。」
おおよそミカミさんの嫌な思い出というのは見当がつく……。
「一応薄衣にしてるので、歯が欠けたりとかはしないと思いますけど……。」
「あ、そうなの?じゃあもうガブッと行っちゃうよ〜。」
俺の言葉で安心したらしいミカミさんは、ガブリとポンポンオランの果実飴にかぶりついた。
「ん〜〜〜っ、やはりポンポンオランは裏切らない……。ジュースにしても、飴にしても……何にしても美味しいね。」
そしてポンポンオランの果実飴を味わい尽くしたミカミさんは、チラリとこちらに視線を向けてくる。
「柊君も、私たちのためにいろんなものを作ってくれるのはうれしいけど、そろそろ一緒に食べようよ。みんなお腹いっぱいになっちゃうよ?」
「はい、もうこれで終わりなので、すぐ行きます。」
「待ってるよ〜。」
ミカミさんがみんなのいる方に戻っていったのを見送って、俺も完成した果実飴を手に、みんなのところへと赴いた。
「はいは〜い、しょっぱいの食べて甘いのが欲しくなったら、こっちを食べてくださいね。」
「あっ!!ちょうど甘いのが食べたかったのよ〜、気が利くわねヒイラギっ。」
「違うの食べる〜!!」
「自分も甘いの食べたいっす〜!!」
出来上がった果実飴にみんなが飛びついていったのを見ながら、俺は自分の分のBBQ串を炭火で焼いていく。
すると、今度は日本酒を片手にミカミさんがこちらに飛んでくる。
「マスター、私のねぎま1つ〜。」
「はいただいま。」
良い感じに焼けていたミカミさんのものと思われる、ねぎま串を火から外す。
「タレは和風タレで良いですか?」
「うん、そっちでいいよ〜」
ねぎま串を和風タレにどぷんと漬け込み、それをミカミさんに手渡した。
「ありがと〜、じゃあかんぱ〜い!!」
「あ、いつの間に俺の分のお酒を……。」
いつの間にか、俺の手元に冷えた日本酒の入ったグラスが置かれていた。
「ふっふ、用意は万全に……ねっ?」
「あはは、ありがとうございます。乾杯です。」
軽くグラスを合わせた後、肉を一口食べてから、キンキンに冷えた日本酒を口の中に流し込んだ。
「くはっ……何ででしょうね。バーベキューの時に飲むお酒って普段より美味しく感じるんですよ。」
「あ、それはわかるよ。こういう賑やかな雰囲気がそうさせてるのかもしれないね〜。」
「ですね。」
結局その後賑やかなバーベキューは、日が落ちるまで続いたのだった。
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