第220話 最高の出来の宿題
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それから何事もない平穏な日々を過ごしていると、あれよあれよという間に、ヒュマノファイトまであと3日となってしまう。そのタイミングでミハエルさん達が新たなケーキの試作品を俺のところに持って来てくれた。
「それでは、味見の方よろしくお願いしますヒイラギさん。」
「はい、わかりました。」
まずはケーキの外観を確認していこう。下の生地はスポンジ生地じゃなくてクッキー生地だな。その上には寒天かな?それともゼラチンで固めたのか……色とりどりの果物を閉じ込めた半球体のゼリーが乗っている。
「このゼリーはどうやって作りましたか?」
その質問にはフレイアさんが答えてくれた。
「それはバーバラさんに教えてもらった果物を使いました。ジェリーラという果物で、搾った果汁が冷えると固まるんです。」
「なるほど、そんな果物があったんですね……。」
「中に入っている果物はエルフの国で採れた旬の柑橘系の果物や、この町エミルで採れるベリー系の果実をふんだんに使いましたわ。」
追加でゼリーの中に閉じこめられてる果物の説明をリタがしてくれた。
「ふむふむ。」
てっきりスポンジケーキをベースにしたものが出てくるかなって思ってたけど、俺の予想を超えてきたなこれは。見た目も色とりどりながらも爽やかで涼しいし、冷やして食べるものなら、これからの時期にはぴったりだ。
「じゃあ早速いただきます。ミカミさんもどうぞ。」
「ありがと柊君。」
早速試食してみると、ゼリーのプルンとした食感の中に、食感も味も違ういろいろな果物が同時に口の中に入ってきて、味わっているのが楽しい。それに甘酸っぱい味がベースのゼリーとは対照的に、甘めに作られているクッキー生地の相性もいい。
「ん〜っ、これは美味しいね〜。見た目も華やかだし、商品にしても良いんじゃない柊君?」
「はい、これなら大丈夫ですね。」
ミカミさんと頷きあって、俺はミハエルさん達の方を向いて、微笑みながら頷いた。
「今度の営業からコレを出せますか?」
「と、ということは……。」
「はい、頑張りましたね。合格です。」
「やりましたわっ!!お父様っ、お母様!!」
喜びを分かち合っている3人に、俺は1つ質問を投げかけた。
「それにしても、よくこういうケーキのアイディアが出てきましたね?何処からヒントを見つけたんですか?」
「それは、巷でよく売っているジャムの乗ったクッキーですわ。」
「なるほど……そこから発想を広げて、ここに辿り着いた……と。」
これは努力の賜物と言えるだろう。普通にスポンジケーキをベースにして作ることも、もちろんできたはず……。なのにそれを敢えてしないで、悩みに悩んで、こういう新しい発想へと頑張って辿り着いた。
「ちなみに、普通のケーキの仕込みと併用して、コレは1日にいくつぐらい仕込めますか?あと、原価はいくらぐらいですかね?」
それからミハエルさん達、ヴェイルファースト一家が考案したゼリーのケーキの販売へ向けて話し合いを進めた結果、晴れて新たなメニューとしてフルーツジュレケーキがラインナップに追加され、これから販売されることとなった。
その後、ミハエルさん達にボーナスとして少しお給料を払い、俺は町の関所へと向かった。今日はここでドーナさんと待ち合わせていたのだ。
「ん、来たねヒイラギ。」
「お待たせしましたドーナさん。」
「あ、ヒイラギの番いもどきじゃない。」
「番いもどきってなんだい……ったく、アタシにはドーナって名前があるんだけど?」
「はいはい、ドーナねドーナ。」
「まったく、ヒイラギはしっかり者だってのに、どうしてヒイラギの周りにはこう……個性的なのが集まるのかねぇ。」
呆れたようにそう呟くと、ドーナさんはチラリとミカミさんとランさんへ視線を向ける。すると、視線に気づいたミカミさんはウインクしながらピースサインをして、ランさんはどういう訳がわからずに首を傾げてしまっていた。
そんな2人の様子に、ドーナさんはまた1つため息をつきながらこちらを向いた。その視線に、俺は苦笑いを浮かべるしかできなかった。
「まぁ良いよ、もう馬車は取ってあるから、さっさと乗って王都に行くよ。」
「んふふ〜ドーナちゃん、グレイスちゃんの背中に乗ったほうが速いんじゃない?」
「あれは二度とゴメンだよ。」
あの時のことを思い出して少しブルリと体を震わせたドーナさんは、地面を踏みしめるようにして馬車に乗り込んだ。
「それじゃあルカ、ミハエルさん達のことはよろしく頼むな。ルカの食事は一応渡したマジックバッグの中に多めに入ってるから、好きなの食べてくれて良い。」
「承知しました。」
この日のために、マジックバッグをもう一つ買っていた。もう片方のバッグの中の時間も止まるようにして、容量も同じように増やしてある。
「ヒイラギさん、どうかご武運をお祈りしております。」
「ここから応援してますね。ヒイラギさん。」
「わたくしも応援してますわよ。」
「社長〜、ウチらも応援してるよ〜!!」
「が、頑張ってください!!」
ヴェイルファースト一家とニーアさんとバーバラさんから、温かい声援を受け取った後、俺達は王都へと向かった。
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