第212話 快適な空の旅への道は遠く……
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グレイスの採寸が終わった後で、今度はどんな素材が必要なのかリストアップが始まった。その最中、ミランダさんがうむむ……と、突然難しそうな表情を浮かべていた。
「どうかしましたか?」
「あ、いや……実はエルダーワイバーンの力に耐えられる、強くて柔軟性のある素材が必要で……。」
「また鉱山に行って採ってくればいいですか?」
「実は、今回は鉱石じゃなくて、魔物の素材が必要で……。」
「何の魔物の素材が必要なんです?」
「これがまた厄介な魔物でさぁ、リザードマンってわかる?」
「リザードマン?」
俺が疑問に思っていると、すぐにミカミさんが調べて、リザードマンという魔物について教えてくれた。
「リザードマンは、ワイバーンの近縁種で……近接戦闘に特化するために二足歩行に進化した魔物だってさ。」
「二足歩行のワイバーンってことですか?」
「うん、ほぼほぼ認識としては間違いないよ。普通のワイバーンとは違って、魔法とかそういうのには長けてないみたいだけど、剣と盾を持ってるみたいで、近接戦はかなり強いらしいね。」
ミカミさんの説明の後で、ミランダさんがリザードマンの素材について説明してくれた。
「生態についてはそっちの妖精の子が説明してくれたけど、リザードマンはそういう生態のせいで、皮膚がすごく丈夫で柔軟性があるんだ。」
「つまり欲しいのは皮って事ですね?」
「そういう事……なんだけど、問題はリザードマンの生息地が獣人族の国なんだよね。」
「あ……そういうこと。じゃあ今は無理だね〜。」
「ですね。」
「ひとまずこっちで設計図は完成させとくけど……獣人族の国に行けるようになるのは、いつの日になるか分からないから、いつでもキャンセルしたくなったら言ってね。」
「ありがとうございます。」
素材が手に入らないなら仕方がない……と諦めようとしていると、ミカミさんが手を挙げてミランダさんに質問を投げかけた。
「あ、待って待ってミランダちゃん。一応……リザードマン以外の素材で代用ってできないかな?」
「できないことはないけど……もっと強い魔物になっちゃうよ?それこそドラゴンとか……。そうなってくると目撃情報も少ないし、討伐も凄く難しいと思う。」
「あ〜、そっか。やっぱり簡単には行かないよね〜。」
その後、ミランダさんにお礼を言って、作戦を練り直すために一度ギルドに戻った。そこでパラパラと依頼書をめくっていると、目の前にコトンと飲み物が入ったグラスが置かれ、ドーナさんが目の前に座る。
「調子はどうだい?」
「あ、ドーナさん。こんにちは。」
「やっほー、ドーナちゃ〜ん。」
軽い挨拶を交わした後、ドーナさんはベリーのジェラートを一口食べながら、俺が見ていた依頼書に目を向けた。
「ん〜?ミースから聞いた話だと随分儲かったらしいけど、依頼探しかい?」
「実はグレイスの装備品を作るのに、リザードマンの皮が必要って言われちゃって……。」
「んぁ〜……リザードマンか。獣人族が争いを始める前はちょくちょくギルドに討伐依頼は入ってきてたけどねぇ。」
ドーナさんの話によると、獣人族が次期国王争いを始める前は、定期的にリザードマン討伐の依頼が獣人族から入ってきていたらしい。
「ねぇねぇドーナちゃん。この国にドラゴンとかっていないかな?」
「ドラゴン?なんでまたそんな化け物探してんだい?」
「いやぁ、リザードマンの皮の代用品が、ドラゴンとかそういう強い魔物の皮って言われてるんだよ。」
「ふむ……わかった。ちょっと待ってな。」
食べかけのジェラートを置いて、ドーナさんは受付にある本棚に足を運び、そこから1冊のファイルを抜き取って戻ってきた。
「ドラゴンの目撃情報は無いわけじゃない。ただ、場所がヤバいんだよ。それに、目撃された個体も……。」
ドーナさんがファイルを開くと、そこにはドラゴンの目撃情報がずらりと日付順に並んでいた。その目撃情報を見て、俺はある違和感に気付く。
「目撃されてる場所が全部一緒ですね。」
そこに記録されていた目撃場所は、全て旧シュベール街と記載されている。
「旧シュベール街?」
「今のシュベールは、実は別の場所に再建した町なのさ。元はこの場所にあった。王都並みに広い街が地図のこの辺りにあったのさ。」
ドーナさんは地図を指さすが、そこには巨大な湖しか描かれていない。
「この旧シュベール街は、もともとこの湖の上に浮いてた水上の都だったのさ。凄腕の魔法使いが毎日魔法をかけ直して維持してたらしいよ。」
「でも、今は……。」
「ん、結果から先に話しちまうと、旧シュベール街は高位のドラゴンの怒りを買って、1日で水底に沈んじまったのさ。んで、できたのが、この国で一番大きな湖ってわけだ。」
「街がドラゴンに……。」
「ま、そんな事件があった場所で、ドラゴンの目撃情報が相次いでるんだ。正直な話、アタシでもこのドラゴンに勝てるか……ちょっとわかんない。でもまぁ、ヒイラギが行ってみたいってなら、アタシもついてくよ。2人で行けば勝てるかもしれないしねぇ。」
「………………。」
ちらりとミカミさんの反応を伺ってみると、ミカミさんは恐ろしい話を聞いた後だと言うのに、目をキラキラと輝かせながら、何度も首を縦に振って、こちらを見つめていた。
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