第198話 またあのカジノへ
ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。
王都に着いて、まず向かったのはヘールメースさんが経営するカジノだ。すると、カジノの中に入るなり、すぐに黒服の人たちに囲まれて、VIPルームへと案内されてしまう。
「ようこそいらっしゃいましたヒイラギ様、ミカミ様。」
「こんにちはヘールメースさん。」
「やぁやぁヘールメース君。カジノの方は儲かってるかい?」
「カジノの営業は絶好調でございます。原因は分からないのですが、幾日か前に競合カジノの1つが潰れたようでして、私どものカジノへとそこの常連客の方々が流れてきているんですよ。」
クスリと笑いながらヘールメースさんは言った。その潰れたっていうカジノに心当たりはあるけど、敢えてここは黙っておこうかな。
「さて、ところで本日はどのようなご要件でしょう?」
「カジノに来るなら要件なんて1つでしょ〜……って言いたいところだけど、今回はまたオークションに参加したくてさ。」
「おや、そういうことでしたか。今回のオークションのことを嗅ぎつけてくるとは……皆様の狙いはもしや、ジュエルイーターですかな?」
「あ、そうそう!!でも競り落としたいわけじゃなくて、行方を見守りたいだけなんだ。」
「ほぅ……それはまた良い趣向ですな。」
「っていうのも、そのジュエルイーターの出品者が私達だからなんだけどさ。」
「なるほど、ギルドから久方ぶりに珍品が舞い込んできたと思えば……そういうことだったのですか。納得です。」
そしてパンパンとヘールメースさんが手を叩くと、バニーガールの人が入ってきて、こちらにオークションへの参加券を手渡してくれた。
「こちらをどうぞ。行方を見守るだけではなく、良ければ是非ともオークションに参加していってください。」
「ありがとうございます。良さげな商品があったら頑張ってみますね。」
ヘールメースさんと握手を交わしたあと、お遊びでポーカーで遊んだりして時間をつぶしていると、ふと彼がミハエルさん達の事について質問してきた。
「そういえばヴェイルファースト家の方々は如何お過ごしですか?」
「今のところ、元気に過ごしてくれてますよ。」
「ほっほっほ、それは結構でした。」
にこりと微笑みながら彼は自分の手札をオープンと、その手札の役はスリーカード。俺も手札をオープンするが、役はフォーカードだった。
「いやはや、一向に勝てる気がしませんな。」
「あはは、ただ運が良いだけですよ。」
「……その豪運があるからこそ、ヴェイルファースト家の方々も護られているのでしょうな。」
彼はそう言いながらカードを回収すると、手元の飲み物を一口飲み、ある情報を教えてくれた。
「皆様ほどの方々ならば、既にご存知かと思いますが、どうやらクレイモア家の当主がヴェイルファースト家の皆様を狙っていると……噂を耳に致しました。」
「えぇ、何か2つの家の間には因縁があるようで……。」
「はい、詳しい経緯は私も存じ上げませんが……近頃クレイモア家の当主の御方は、何か企み事をしていらっしゃるご様子で、オークションにも全く顔を出さなくなってしまったのです。」
「え、そうなの!?なぁんだ、今日会えるかな〜って思ってたのに。ざ〜んねん。」
「ミカミさん、逆に会って何をするつもりだったんです?」
「え?ちょろちょろ〜って煽ったら、本性出さないかなって思ってたんだけど〜……。」
「それは火に油を注ぐかもしれないので、止めときましょう。」
「う〜、まぁ柊君がそう言うなら止めとくよ。」
そんなやり取りを眺めていたヘールメースさんは、しかし……とまた話を切り出した。
「しかしです。今回出品されるのは、キングスゴールドが生えているジュエルイーター……金を余らせている貴族にとっては、喉から手が出るほど欲しい珍品です。」
「貴族として欲に従順なら……クレイモア家も来るかもしれないってことだね。」
「その通りです。ですので念の為……今回は前回とは違うこちらの仮面をどうぞ。」
「あははっ、私みたいな妖精を連れてる時点でもうわかっちゃうと思うけどね〜。でも受け取っておくよ、ありがとう。」
「良ければそちらのお嬢さんの分もどうぞ。」
ヘールメースさんからグレイス以外全員分の仮面を受け取り、それをマジックバッグにしまった。
「っとさて、オークションまで、まだ時間がありますが……その間の予定はお決まりで?」
「いえ、特にまだ決めてはいないんですけど……。」
「ほっほっほ、そうでしたか。それでは私から1つ時間潰しの良い提案を……ヒイラギさん、良ければこのカジノでディーラーをやってみませんか?もちろんお手伝いして頂いた分、お金はお支払いしましょう。」
「え゛っ?お、俺そういう経験ないですよ?」
「大丈夫です。スタッフを横につかせますから。」
パンパンとヘールメースさんがまた手を叩くと、すぐに黒服をビシッと着こなした人達が部屋の中に入ってきた。
「ヘールメース君、一つ質問なんだけどさ、柊君の運が良いのは分かってるでしょ?ずっとディーラー側が勝ってたら人が寄り付かないんじゃない?」
「ご安心ください、人間は目の前に大金をちらつかせられれば、目が眩むものです。」
そしてニヤリと笑ったヘールメースさんが黒服の人たちに指示を出すと、俺はあっという間に彼らと同じ服装に着替えさせられ、カジノの一角でディーラーをすることになってしまったのだった。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。