第196話 ジュエルイーターの調理
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時は夕食時……俺は借りている宿のキッチンに立って、今日倒してきたロックイーター……もといジュエルイーターの調理を始めていた。
「肉質は柔らかくて美味しいって話だったから、今回は唐揚げにして食べてみようかな。」
ジュエルイーターは宝石のついていた皮が思いのほか分厚く、肉のほうが少ない魔物だった。肉本来の味を味わうなららステーキもありかなと思ったが……5人分のステーキにできるほど、これから大きい肉は取れなさそうなのだ。
そうなると、肉の味をダイレクトに感じることのできる料理は何か……と考えたときに、唐揚げが候補として挙がった。各部位を一口サイズに切り分けることは簡単だしな。
「よし、やっていこう。」
骨から部位ごとに肉を剥がして、それらを一口サイズよりも少し大きいぐらいのサイズに切り分けていく。切っている感触でも伝わってくるけど、この肉は本当に柔らかい。流石に手足とか尻尾の肉は筋っぽそうかなって思ってたけど、全然そんなことは無くて、柔らかく霜も入っていて、凄く美味しそうだ。
「よしっと、一先ず残ってるのは骨だけだな。この骨は血を綺麗にとってオーブンで焼いて、野菜と一緒に煮込んで出汁を取ってスープにしようかな。」
骨に付着した血を洗い、軽く塩を振ってオーブンの中に入れた。
「次は唐揚げの下味。」
今回唐揚げの下味に使うのは、海水ぐらいの濃度の塩水と、醤油、味醂、酒で作った合わせ調味料。味は2種類あったほうが飽きなく食べられるかと思って2種類用意した。
「この調味液の中に一先ず30分ぐらい浸けておいて……この間にサラダを用意しよう。」
マジックバッグの中に入っている葉野菜をちぎってサラダを作っていると、この間にオーブンの中に入れていた骨が良い感じに焼き上がった。
「うん、骨も香ばしく焼き上がってる。そしたらこれは、鍋に香味野菜と一緒に入れて、たっぷりの水で煮込む。」
煮込んでいくと少しアクが出てきて、それを丁寧に取りきると、無色透明だったスープが、鶏ガラスープのような透き通った黄金色のスープへと変貌を遂げた。味見をしてみると、味わったことのない旨味が口の中に広がっていく。
「う~ん?これは何て表現したらいいんだろう。鶏ガラってわけじゃないし、はたまた牛とか豚の出汁とも程遠い。」
これがトカゲの出汁ってやつなのかな?味自体はあっさりしていながらも、コクがあって深みもある。スープの表面に金色の油が浮いているけど、脂っぽさもない。
「このスープはそうだな、醬油で味をつけるか……はたまた塩で味をつけるか。悩みどころだな。」
少し悩んでいると、肉の匂いを感知したグレイスがこちらに飛んで来た。
「美味そうな匂いがプンプンしてるっす~。」
「あ、グレイスちょうどいいところに来たな。」
「へ?自分に何か用があったっす?」
「あぁ、このスープをちょっと飲んでみてほしい。で、どっちが美味しかったのか教えて欲しい。」
俺は醤油で味をつけたスープと、塩で味をつけたスープの2種類をグレイスに差し出した。
「これを飲めばいいんすね。わかったっす。」
そしてグレイスは2種類のスープを飲んだ後、ほぅと満足げにため息を吐き出すと、塩で味をつけた方のスープが注がれていた小皿を持ち上げた。
「自分はこっちのが好みっすね。」
「お、塩の方が好みか。わかった、ありがとう。」
今度は、勉強を終えてくつろいでいるシア達のところへと、俺は2種類のスープを持って近づいた。
「みんな、ちょっとこれの味見をしてほしいんだけど。」
「味見っ!!何すればいいの~?」
「シア、このスープを飲んで、どっちの方が美味しいか教えてくれるかな?」
「わかったぁ!!」
シアも2種類のスープを飲み、その間にミカミさんとルカにもスープを飲んでもらった。
「シアはどっちも好き~。」
「私個人的にはこっちの塩味が好きかな~。」
「お嬢様と同意見です。」
「了解、じゃあこっちの味で決定で。」
スープの味は、塩の方が圧倒的に人気だった。それなら今日のスープは塩で味を決めるとしよう。引いたスープを濾して塩胡椒で味をつけた後、溶き卵を流し入れて卵スープを作った。
「そろそろ味も染み込んだかな。」
調味液に浸けていた肉を取り出して片栗粉をまぶし、熱しておいた油でカラリと揚げていき、塩味と醤油味の唐揚げで分けて油を切っておく。
「よしできた。」
しっかりと油を切った唐揚げを2つの皿にサラダと一緒に盛り付けて、炊き立てのホワイトライスと一緒にみんなのところに運ぶと、唐揚げの周りをグレイスとミカミさんがパタパタと飛び回り始めた。
「肉が山盛りっす~♪」
「大量の唐揚げだぁ~、柊君っこれだけ唐揚げがあるなら、ミカミさんはお酒が欲しいなぁ~。」
「日本酒が良いですか?それとも焼酎とかにします?」
「キンキンに冷やした辛口の日本酒で頼むよ。」
「わかりました。」
魔法瓶で日本酒を出すと、すでにキンキンに冷えていた。それをカリンさんからもらった妖精用のお猪口に注いでミカミさんに手渡した。
「はいどうぞ。」
「あっりがと~。」
そして他のみんなも各々飲みたい飲み物を用意して、食卓を囲み夕食を食べる準備が整ったのだった。
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