第190話 火照る体に冷たいジェラートを
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今しがた注文が入ったケーキが運ばれていったのを見計らって、俺はミースさんのところにジェラートを運び込んだ。
「お疲れ様ですミースさん。」
「あっ、ヒイラギさん。どうかしましたか?」
「実はさっき、新作のお菓子の試作を終えたところで、良かったら食べてくれませんか?」
「良いんですか!?ぜひいただきますっ!!」
まずはベリーを使ったジェラートを受け取ると、ミースさんはキラキラと目を輝かせながら、それを見つめていた。
「これは何ていうお菓子なんですか?」
「ジェラートっていうお菓子で、ジャムにした果物を牛乳等と一緒に混ぜて凍らせたお菓子です。」
「ってことは……冷たいお菓子ってことですね?」
「はい、キンキンに冷えてるのが普通のお菓子ですね。」
「ふむふむ、またまた新しいお菓子ですね。で、ではでは早速いただきますね。はむっ……んっ、ひゅめたい。」
ジェラートの冷たさに一瞬驚いたミースさんは、キュッと目を閉じたが、すぐに蕩けたような表情を浮かべ、体をくねらせ始めた。
「ん〜っ!!これ、すっごく美味しいですね。暑い日に食べたいです。」
そしてミースさんもジェラートをバクバクと食べ進めてしまう……すると、やはりアレが訪れた。
「いっ!?あいたたた……な、なんか頭がキーンって……。」
「冷たいものを急にたくさん食べると、頭が痛くなる現象が起こるんです。」
「そ、そうなんですね。んっ……な、治りましたぁ。」
「氷のように冷たいお菓子は、一気に食べ進めず、ペースを調整しながら食べると良いですよ。」
「ご助言ありがとうございます。ゆっくり食べます……。」
先程のアイスクリーム頭痛で懲りたらしく、ミースさんはジェラートが溶けないようにペースを調整しながら、あまりがっつかないように気をつけて食べ進めた。
数分後、2種類のジェラートを両方食べ終えたミースさんは、ほぅ……と満足気にため息を吐き出した。
「はふ……ごちそうさまでした。ベリーのジェラートも、ポンポンオランのジェラートも両方ともすっごく美味しかったです。」
「それは良かった。これ、一応予定は3日後の営業の日から販売予定です。」
「あ、そうなんですね。……あの、ちなみにいくらぐらいで売り出すつもりですか?」
「ジェラートはこのぐらいのカップに、山になるように盛りつけるんですけど、そうですね材料費も考えて……。」
俺はジェラートを盛り付ける予定のカップを取り出して、それを見ながら完成形をイメージし、材料費と人件費を加味して頭の中で、値段を割り出した。
「1個あたり、だいたい銀貨3枚ってところですかね。」
「ぎ、銀貨3枚ですか!?さ、流石に赤字になりませんか?」
ジェラートの値段の安さに驚いて、焦った様子のミースさんは必死に問いかけてくる。
「あ、それに関しては大丈夫です。このジェラートって1回でたくさん作れるんですよ。それを小分けにして商品にするので、全部売り切った時……あ、いや、多分半分ぐらい売れたら収支プラスになると思います。」
「そ、そんなに原材料費かかってないんですか?」
「原材料で高いものって言っても、練り込んでるジャムに使ってるフルーツですからね。やる気になれば銀貨2枚にもできますけど……。あんまり安くしすぎちゃうと、頑張って作ってくれたみんなに申し訳が立たないので……。」
「わ、私個人的には、大銀貨1枚ぐらいならこれに払っても全然良いんですけど……。」
「でも、できるなら安いほうが良いですよね?」
そう逆に問いかけてみると、痛いところを突かれたといった様子で、ミースさんは胸を押さえながら頷いた。
「う、は、はい……。」
ミースさんのそんな反応をみて、思わず笑みがこぼれていると、ギルドの入り口から汗だくのドーナさんが見るからに疲労困憊な様子でこちらに歩いてきた。
「あっづぃ……流石に疲れたねぇ。」
「あっ、ドーナさんお疲れ様です。」
「こんにちはドーナさん。」
ドーナさんは汗粒がたくさんついた顔で俺の方を向くと、何か一瞬考えた後、指を1本立てた。
「ヒイラギ、ケーキ1つくれないかい?出来れば冷たくしてあるのが良いねぇ。」
「あ、それならコレをどうぞ。新作のお菓子の試作品です。」
ドーナさんはジェラートを受け取ると、皿がキンキンに冷えていたことに驚く。
「冷たっ!?こいつは……氷かい?」
「そんな感じです。暑さを吹き飛ばしてくれると思うので、良かったら食べてみてください。」
「じゃあありがたくいただくよ。」
ドーナさんは重たそうな上着を椅子にかけて、そこに腰掛けると、早速ジェラートをスプーンで口に運ぶ。その瞬間、カッと目を大きく見開いた。
「美味っ!!こいつは良いねぇ、依頼で激しく体を動かした後にゃ最高だ。」
「あ、ドーナさん、そんなにがっつくと……。」
ミースさんがさっき自分が経験したアイスクリーム頭痛を危惧して、ジェラートにがっついているドーナさんに声を掛けるが……。
「ん?がっついて何か問題あるのかい?」
「え、あ、頭痛くないですか?」
「全然問題ないねぇ。アタシが痛みにはめっぽう強いのは、ミースも分かって…………あぐっ!?」
その後無事ドーナさんもアイスクリーム頭痛を発症し、少しの間喉の上の方を押さえて悶絶していた。
販売する時は、がっつかず、ゆっくり食べてくださいって注意書きが必要かな。
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