第188話 新作開発
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早速市場へとやってきた俺は、いの一番に青果を売っているお店へと足を運ぶ。そして並べられている色とりどりの果物を手当たり次第に購入した。
「一先ずこのぐらいあれば十分かな……。」
「果物たくさん買ったけど、何を作るかってもう頭の中にあるのかい柊君?」
「まだ考え中なんですけど、最近半袖で歩いている人が増えてて、気温の上昇を肌でも感じてたので……冷たいものを作りたいなって思ってます。」
「冷たいの良いね〜。アイスとか食べたいなぁ……。」
「あっ、アイス良いですね。単純だけど奥深くて、いろんなバリエーションも楽しめます。」
「私個人のお願いだけど、ポンポンオランのアイスがあると嬉しいなぁ。できればジェラートっぽい柔らかい食感のやつ。」
「ん?ポンポンオランが欲しければ、いくらでも融通してやるぞ?」
「あ、カリンさん、それならお願いしても良いですか?」
「うむ、任せてもらおう。」
これならポンポンオランの在庫問題は解決だな。後は他の種類のアイスをどうするか……一度帰って試作してみよう。
そして市場で買い物をした後ギルドに戻って、俺も厨房に立ち、みんなの邪魔にならないところで早速試作を始めた。
「え~……まずは果物の仕込みから始めようか。濃厚な果物の味を楽しんでもらうために、今回作るアイスにはジャムを混ぜ込もう。それと食感にアクセントも加えたいから、果肉を角切りにして凍らせておこうか。」
買ってきた果物をきざんで、半分は魔法でカチコチに凍らせて、半分は砂糖と一緒に煮詰めてジャムにしていく。
「ジャムを煮詰めてる間に鍋に牛乳、生クリーム、砂糖を入れて軽く沸騰させて、粗熱を取っておく。」
これが今回作るジェラートの素になる。これを凍らせて、凍ったものを砕いて滑らかにして……という工程を何回か繰り返すとジェラート特有の濃厚で滑らかな口触りになる。
「良し、あとはここに冷ましたジャムを加えてしっかり混ぜてから、魔法で凍らせる。」
想像魔法を駆使し、半分凍らせてしっかりと揉み込んで、また半分凍らせる……そんな工程を幾度か繰り返した後、本格的に凍らせると、それはアイスクリームのようにがっちりとは固まらず、半固形のような状態になった。
「良し、できた。後はここに凍らせた果実本体を練り込んで盛り付ければ……。ジェラートの完成。」
今回試作で作ったのは、3種類のベリー系の果物を使ったベリーのジェラートと、ポンポンオランを使ったジェラートだ。他にも果物はたくさん買ってあるけど、早々にたくさん種類を増やしても仕込みの手が追い付かなくなりそうだし、一先ずはこの2種類に留めておいた。
どちらか一つ……あわよくば両方を商品化させたいところだな。
そして完成した2種類のジェラートを、ミカミさん達が待っているテーブルへと運んだ。
「お待たせしました。」
「きたきたーっ!!もう見ただけでわかるよ。これはジェラートだね柊君っ。」
「その通りです。今回は3種類のベリーを使ったジェラートと、ポンポンオランを使ったジェラートの2種類を作りました。」
俺とミカミさんはジェラートなんて見慣れているけど、この世界の人達であるカリンさんやシア、ルカはジェラートを見て首を傾げている。
「これは……なんなのじゃ?甘味かの?」
「そうですね、まぁまぁ詳しい説明は後に取っておいて、一番美味しい今、早速食べてみてください。」
少し戸惑っているカリンさんを他所に、ミカミさんやシア達はすぐにスプーンでジェラートを掬い取って、口に運んだ。
「ふみゃっ!!冷たい……でもすっごく美味しいっ!!」
「ん〜っ、これだよこれ〜。ジェラートはフルーツたっぷりが至高だよね。」
「ご主人様が作るものに不味いものは無し……おかわりを所望します。」
「う、美味いっすけど、頭キーンってなるっす〜。」
「あはは、グレイスちゃん。それは食べ過ぎなんだよ。」
みんなが食べた反応は上々だ。残るはカリンさんだが……。
「そ、そんなに美味いのかの?ではワシも食べてみるのじゃ。」
カリンさんもみんなの反応を見て興味が唆られたらしく、ジェラートを一口食べた。
「んむっ!?こ、これも今まで食べたことのないものじゃ。氷のように冷たいものがねっとりと口の中で溶け、濃厚な果物の甘さが口の中に広がっていくのじゃ。」
完璧な食レポの後、ジェラートの美味しさに魅了されたカリンさんはがっつくように食べ始めると……必然というべきか、突然頭を抱えた。
「むきゅっ……な、なんじゃ頭がキーンと……。」
「カリンちゃん、それはね冷たいものを急に食べすぎたからだよ。こういうのは、溶けて液体にならないように気をつけながら、ゆっくり食べるのさ。」
「うむむむ、こんな現象も初めてじゃ。歳を無駄に食ったものの、新しい発見はまだまだあるのじゃな。」
冷たいものを急にたくさん食べたときに起こる頭痛……通称アイスクリーム頭痛が治まると、カリンさんは、ミカミさんのアドバイス通りにゆっくりと食べ始めた。
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