第187話 エルフの強み
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いざニーアさんとバーバラさんの2人にエプロンに着替えてもらって、基本的なスポンジケーキの作り方から教えたのだが……恐ろしいほどに2人は手先が器用で覚えも早く、2、3回回数をこなしただけですぐにスポンジケーキの作り方をマスターしてしまったのだ。
「あっ、今できたやつ、今日一番膨らんでる気がする。ニーアのもウチのと同じぐらい膨らんでるね。」
「ヒイラギさん、こ、これでいいでしょうか?」
「い、いや、御見それしました。これは合格です。2人とも手先がすごく器用ですね。」
「う~ん、そうかな?エルフならみんなこのぐらい普通だと思うけど。ニーアはどう思う?」
「私、自分はエルフの中でも不器用な方だと思ってました。」
恐るべしエルフ……。2人の手先の器用さに驚いていると、隣で2人が作ったスポンジケーキを貪っているカリンさんが満足げに頷いた。
「ま、伊達に100年以上生きていないというわけじゃ。手先の器用さ、そして緻密な魔力操作こそエルフの強みなのじゃ。」
「さっ、社長。次は何を覚えればいいのかな?」
「えっとじゃあ次は……。」
今日はスポンジケーキを作れるようになるだけで御の字と思っていたが、ここまで完璧なものを作れるようになってしまったのなら、次のステップに上っていくしかない。
「スポンジケーキが作れるようになったところで、今度はいよいよケーキの盛り付け作業をやってみましょうか。」
「待ってましたっ!!任せて任せて~。社長の期待に応えてみせるよ。」
「が、がんばりますっ!!」
そして2人にケーキのデコレーションなどを教えていくと、これに関しては俺の見本を見て、すぐに2人とも同じクオリティのケーキを作り上げてしまう。俺はここまでたどり着くのに丸1年以上かかった気がするんだが……自分は凡才だとわからされてしまった瞬間だった。
一人で思わず落ち込んでいると、バーバラさんが感激しながら完成したケーキを見つめて、たくさん言葉を溢していた。
「いや~、ほんっと人間ってすごいなぁ~。美味しいものへの探求心が凄まじいね。」
「え、エルフじゃ思いつかないようなことを簡単に人間さん達はやってしまいますよね。バーバラ姉さん。」
「うんうん、ホントだよ。牛乳の脂肪分の濃いところを泡立てようとか、そういう発想がエルフには産まれないもんね。ねぇねぇ社長、これって社長が考えたお菓子なの?」
「あ、いや……俺が産まれるよりも遥かに昔に作った人が……。」
「へぇ~、凄いなぁ凄いなぁ~。」
キラキラと目を輝かせながら、バーバラさんはケーキをぐるぐると歩き回って観察しながら、ノートにものすごい勢いでメモを書いていく。
「こういう、所謂人間の叡智に触れてる瞬間がいっちばん興奮するなぁ~。ねぇ社長、こういうウチらが知らないお菓子とか技術ってまだまだあったりする?」
「もちろん、俺が生きてるうちに語りきれないほどありますよ。」
そう言った直後、カリンさんが立ち上がり2人にある問いを投げた。
「さて、バーバラにニーアよ。任務は遂行できそうかの?」
「もっちろんです族長っ、今までの倍……いや、3倍ぐらいやる気に満ち溢れてますっ!!」
「私も頑張れますっ。」
「うむ、ではこの任は無期限にそなたらに任せる故、ヒイラギ殿に迷惑をかけぬように日々励むのじゃ。」
「「了解しましたっ!!」」
「と、いうわけじゃから、ヒイラギ殿、2人のことはよろしく頼むのじゃ。」
「はい、任せてください。」
2人の才能に負けないように、俺も日々料理のスキルを磨かないとな……。この世界に来てから自分が持っていた料理のスキルがまだ上がってないし、レベルを上げるならもっと頑張らなきゃいけないってことのはずだ。
そう自分を奮い立たせていると、1階からミハエルさん達が下りてきた。どうやら出勤時間になったようだな。ちょうどいい。
ミハエルさん達にバーバラさんとニーアさんんことを説明して、お互いに自己紹介を終えてもらった後、早速仕込みを一緒にやってもらうことになった。ここから先はミハエルさん達に教育を担当してもらおう。
バーバラさん達の様子に気を配りながら、椅子に腰かけて飲み物を飲んでいると、早速ミースさんが伝票を手に1階から下りてきた。
「注文入りましたっ、ケーキが2つです。お願いします。」
舞い込んできた注文に迅速にミハエルさん達は反応して、バーバラさん達と一緒にすぐにケーキを2つ作り終えてしまった。そんな彼らの様子を見てミカミさんがこちらを向いてにこりと笑みを浮かべながら言った。
「みんな大丈夫そうだね柊君。」
「はい、今日が顔合わせだったとは思えないぐらい連携も上手くできてますし、これなら問題なさそうです。」
そして俺が席を立つと、ホールケーキを貪っていたカリンさんが口の周りに生クリームをつけたまま首を傾げる。
「む?ヒイラギ殿、どこへ行くのじゃ?」
「今から市場に行ってきたいと思います。多分、今日1日だけでバーバラさんもニーアさんも、営業の流れをマスターすると思うので、退屈しないように新作のお菓子を考えておこうかな……と。」
「ワシも行くのじゃ!!」
半分ほど残っていたケーキを全部口の中に押し込み、じっくりと味わって飲み込み、口の周りをナプキンで拭うと、カリンさんも立ち上がり、みんなで市場へと赴くのだった。
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