第185話 カリン現る
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ドーナさんがギルドを出ていって少しすると、こちらにミースさんが駆け寄ってきた。
「おまたせしました。検品が終わりましたので、報酬のお支払いに移ります。」
「ご苦労さまです。」
「いえいえ、コレが私の仕事ですからっ。」
ポンッと誇らしげにミースさんは胸を叩くと、早速今回の依頼の報酬の話に移った。
「早速今回の報酬のお話なんですが、まず討伐したオークの数が46体で、オークエリートが5体……それで最後にオークキングが1体でした。」
「総計52体ですか……そんなに倒してたんですね。」
「頭はそのままでしたので、数えるのには苦労しませんでした。あとは綺麗に部位ごとに切り分けてくれたお肉の重さを計算して……まず素材の買取価格が、このぐらいになりました。」
じゃらりと音を立てて、ミースさんはぎっちりと硬貨が詰まった袋と明細書をテーブルの上に置いた。
「全部で白金貨が1枚と、金貨が23枚、大銀貨が3枚です。ご確認ください。」
「わかりました。」
袋を開けてお金を数えると、ミースさんの言っていた通りの金額がちゃんと入っていた。
「大丈夫です。ちゃんと入ってました。」
「ホッ……良かったです。それでですね、そちらが素材の買取で発生したお金で、こっちが依頼の成功報酬の金貨30枚になります。」
「わ〜ぉ、素晴らしいね。今日だけでめちゃくちゃいい稼ぎになったよ〜。柊君のレベルも上がったし、スキルも獲得できたし……良い一日だったね。」
「まぁ、少し疲れましたけど……かなり良かったと思います。」
そう言ったとき、ポンッと俺の肩に誰かが手を置いた。
「疲れてるのは良くないのぉ、我が友よ。」
ニヤリと笑いながらひょっこりと顔を出したのは、本を読みにエルフの国へと戻っていたカリンさんだった。
「しからば、ワシの国で早速疲れを癒やしに参ろうかの?」
「え、か、カリンさん?ミハエルさん達は……。」
「あぁ、心配することはないの。我が友の友人方は今しがた宿へと届けたのじゃ。故に、これからはワシらの時間ぞ。」
カリンさんはそう言ってニヤリと笑いながら、ミースさんの方へと視線を向けた。
「というわけでじゃ、人の子よ、ヒイラギ殿は借りていくぞ。」
カリンさんがそう言った直後、パッと視界が切り替わり、見覚えのあるさわやかな緑がたくさんある場所へと俺達は移動してきていた。
「さての〜、人が書いたあの本……大変参考になったのじゃ。その知識を存分に活かし、ヒイラギ殿をエスコートじゃ。」
流れるようにカリンさんは俺の手を取ると、どこかへと向かって歩き出す。
「あの、これはどこへ向かってるんです?」
「ん?所謂デートスポットと言われる場所じゃな。あの本には、友人間の距離を縮める方法として、デートスポットを巡るのが良いと書いてあった。」
誇らしげにそう語ったカリンさん……。本当に選んであげる本を間違ったんじゃないかと、ミカミさんに視線を向けると、ミカミさんはそっぽを向いてわざとらしく口笛を吹いていた。
「カリンさん、それ……多分恋人に近い関係になってからやるものだと思いますよ。」
「む、友人は恋人の一歩手前じゃろ?ならば間違いではあるまい?」
「………………。」
カリンさんの何気ない返答に、俺はぐぅの音も出なかった。
「というわけで着いたのじゃ。」
手を引かれて案内されたのは、冷たい冷気が流れてくる洞窟だった。思わずこんな場所がデートスポットなのかと疑いたくなるほどに、入り口は少し不気味だ。
「あの、ここは?」
「ここは水晶の洞窟じゃ。少し進めばすぐに大小様々な水晶が出迎えてくれるぞ。」
カリンさんに手を引かれるがまま、中へと足を踏み入れてみると、本当に少し歩いたところから、洞窟の壁一面に水晶が生えていた。
「凄い……。」
この世のものとは思えない光景に、思わず言葉を溢してしまうと、カリンさんはこの場所について説明してくれた。
「この場所はもともと魔水晶と呼ばれる、魔法を封じ込められる水晶を発掘する場所じゃった。しかし、世界樹が生えてからというものの、この場所に満ちていた魔素をも世界樹は吸い取ってしまい、普通の水晶に戻ってしまった。」
「なんか、世界樹ってある意味エルフの人達からしたら、厄介者な感じで見られてませんか?」
「いや、まぁ失ったものもあるのじゃが、得たもののほうが大きくてな。世界樹を忌み嫌うような者は現れんかった。……まっ、今回我が友のヒイラギ殿が呪いを消し去ってくれたからの〜。今後、世界樹のことで頭を悩ませることは恐らくないのじゃ。」
そう言いながら、カリンさんは近くに転がっていた水晶を拾い上げると、ポツポツと何か魔法を唱えた。すると、水晶の形が変形していき、ハートの形になってしまう。
「あとはここに穴を開けてじゃな……ほい、完成じゃ。」
満面の笑みでカリンさんは、こちらにペンダントのようなアクセサリーになった、ハート形の水晶を手渡してきた。
「これ、もらっちゃって良いんですか?」
「構わぬ。このぐらいの水晶ならばいくらでも転がっておるからの。さぁ、ここはもう良いじゃろう。次の場所へ行くのじゃ!!」
結局今日の残った時間はカリンさんと一緒にエルフの国を観光して、1日を終えることになったのだった。
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