第183話 オークキング登場
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レーダーで表示されていた赤い点の方へと走っていくと、不思議なことにその赤い点が俺からどんどん離れていく。
「逃げてる?」
「うん、柊君の接近に気付いてるみたいだね。それに、逃げてるってことは危機管理能力があるってこと……つまり知性はある程度高いかな。」
「知性の高いオークっていったら、オークキングしかいないっすよ。あいつめちゃくちゃ強いっす。」
「ちなみにグレイスちゃんなら勝てるの?」
「う〜ん、場所にもよるっす。空から一方的にブレス撃てば勝てるっすけど……それができない場所で正面からってなったらキツイっすね。」
「へぇ、なかなか歯ごたえのありそうな相手じゃないか、ねぇ柊君?」
「個人的には弱くあってほしかったんですけど……。」
そうポツリと言ったとき、逃げていた赤い点が急にピタリと止まった。そして必然的に俺がその赤い点に追いつくと、目の前には老齢の1体のオークが仁王立ちしていた。老齢ながらもオークエリートの体格よりも遥かに筋骨隆々としている。
「アレがオークキング?」
「間違いないっす。無駄に頭がいいっすから、卑怯なこととかしてくるっすよ。」
「わかった。」
一歩前に踏み出そうとしたとき、俺のスキル危険察知がピン……と足元に何か危険があることを知らせた。
「ん?」
ふと足元に目をやると、そこには細い蔓が張ってあった。
「ブービートラップかぁ、グレイスちゃんの言った通り、卑怯くさいことやるじゃん。」
そのブービートラップを踏み越えて、更に先に進むと、オークキングは不意に近くにあった木を蹴り倒した。すると、また危険察知が発動する。
「上っ!!」
今度は上から大量の丸太が降り注いでくる。それをレヴァで細切れにして何とか防いだ直後、オークキングの鈍色の大剣が風を切りながら迫っていた。
「ふんっ!!」
その大剣に対して、レヴァを叩きつけるように振り下ろすと、熱したナイフでバターを切った時のように、大剣はあっさりと真っ二つに両断された。
するとその時、頭の中で次はこう動け……と指示されたような不思議な感覚を感じた。その通りに俺は振り下ろしたレヴァを切り返して、オークキングに逆袈裟斬りをお見舞いする。
「今の……。」
「柊君、今のが剣術のスキルだよ。理想的な攻撃パターンを頭で勝手に考えてくれるんだ。攻撃するかしないかはキミ次第だけどね。」
「なるほど。」
チラリとオークキングの方に目を向けると、傷口は思ったよりも浅く、致命にはならなかったようで、今度は武器を捨てて拳で殴りかかってきた。
するとまたさっきと同じ感覚を感じ、それに従った俺は、オークキングから放たれた拳を蹴り上げ、軌道を逸らした後、今度こそレヴァでオークキングを真っ二つに両断した。
「お、おぉ……。」
「オークとオークエリートから奪ったスキルの使い心地はどうだい?」
「なんか今までと違って、自分の意思で攻撃してるので、達成感はありました。」
「うん、結構結構。」
そんな会話をしているうちに、レベルアップの通知が来た。
『レベルアップに必要な経験値を満たしたためレベルが上昇し、レベル62になりました。レベルアップしたためステータス情報が更新されます。』
「うん、一体倒しただけでレベルが2上がってる。今日だけでそこそこ上がったね。」
ミカミさんがそう言った直後、また今度はスキルを奪ったという通知がやってきた。
『武器のスキルが発動します。討伐したオークキングが所持していたスキル……カリスマlv6を奪い取りました。』
「……カリスマもスキルなんですね。」
「一応そうみたいだね。」
「なんか変わりましたかね?俺……。」
「私目線パッと見た感じは何も変わってないけど、いつか実感できる日が来るかもね。」
「ですね。あって困るものじゃないと思いますから。」
スキル獲得とレベルアップの通知を見終えたところで、俺はオークキングの死体に歩み寄って鑑定を使った。
「このオークキングは食べれるかな?」
俺のワクワク感に対して、鑑定スキルが出した鑑定結果は、食べられないとのことだった。理由は肉が硬すぎる上に、何よりオークキングは老齢で強いオークがなる種族のため、肉そのものが臭く美味しくないとのことだった。
仕方ないから、これはミースさんに素材として引き取ってもらおう。
そしてせっせとオークキングを大きな袋に入れて、マジックバッグにしまっていると、ふと胸ポケットにいたはずの、ミカミさんとグレイスの姿がないことに気が付いた。
「あれ?」
「グ、グレイスちゃん、ほんとに力入れてる!?」
「んぎぎぎっ、入れてるっす〜!!でも全然抜けないっすよコレっ!!」
何をしているのかと思えば、2人は近くに生えていたマンドラゴラを引き抜こうとしていた。
「ミカミさん、マンドラゴラは持って帰れないですよ。」
「ダメ?」
「お金にはなるかもしれないですけど、犯罪になっちゃうので、やめときましょう。」
「わかったよ〜。」
少し諦めきれていない様子の、ミカミさんの背中をつまんで胸ポケットに戻した後、俺達はエミルへと戻るのだった。
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