第181話 オークの軍団
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グレイスに跨って、マンドラゴラの生息地周辺の上空へとやってきた。上空からマンドラゴラの生息地となっている森を上空から見下ろしてみると、森のあちこちに人影が見えることに気が付いた。
「あれ?人がたくさんいるように見えるんですけど……。」
「柊君、オークは人型の二足歩行の魔物だよ。ほらこんな感じ。」
ミカミさんはいつもの小さな辞書をパラパラと捲って、オークの写真のようなものを見せてくれた。確認したオークの特徴を一言で表すなら、二足歩行の筋骨隆々な豚だ。俺は……いや、この世界の人達はこれを美味しいと思って食べてるんだな……。
少し複雑な気持ちになりながらも、グレイスに少しづつ高度を下ろしてもらい、マンドラゴラの生息地の近くに降り立つことができた。
「この辺で大丈夫っすかね?」
「あぁ、大丈夫。ここからは歩いて行くよ。」
グレイスは元の大きさから小さくなると、ミカミさんと一緒に俺の服の胸ポケットに納まった。
「ルカ、シアのことは頼んだよ。」
「お任せくださいご主人様。」
シアのことはルカに任せ、俺はレヴァを手にしてマンドラゴラの生息地へと歩みを進めていく。すると、すぐに俺の接近に気が付いた何体かのオークがこちらに向かってドスドスと地を鳴らしながら走ってきた。
「来るよ柊君。」
「はいミカミさん。」
レヴァを握る手に力を籠めると、レヴァはぐんと刀身を伸ばして長い日本刀のような形状になった。
「ふぅ……。」
何回やってもこの感覚は慣れないな。魔物と命の駆け引きをするこの瞬間は……。ミカミさんからもらったスキルがあるおかげで、攻撃がまず当たらないことはわかってるけど、恐ろしい形相で走ってくる魔物が怖いことに変わりはない。
落ち着くために一つ息を吐き出して、俺はレヴァを横に振るった。イメージは……肉を部位ごとに分けるような複雑な斬撃。しかしイメージしたものとは違って、オークの方へと飛んだ斬撃は横一文字の斬撃だった。
失敗かな?と少し不安になっていると、その斬撃をくらったオークはいつの間にか、文字通りの肉塊へと変わっていた。見た感じちゃんと部位ごとに分けられてるようだ。
「よし、このイメージを持ちながら……。」
その後レヴァを2度3度と振るい、こちらに向かってきているオークを全て倒した後、地面に転がっている肉の塊へと俺は歩み寄った。
「これがモモ肉で、ここがロースでバラもあると。他にもいろんな部位が盛りだくさんだな。匂いはどうかな?」
鼻を近づけて匂いを嗅いでみると、ほんのりと鉄の匂いがする。これは血液の匂いだな。血を抜けばこの匂いはとれそうだ。そのほかに嫌な匂いは感じない。
「いやぁ~オークってホントいい魔物っすよ。食べて美味しいのにすぐ増えるし、経験値も美味いっす。子供の頃から大人になるまで、めちゃくちゃお世話になったっすよ。」
「肉が美味しいだけじゃなくて、経験値も美味しいんだな。」
「ワイバーンとかドラゴンとか、ある程度上位の魔物なら、間違いなくオークでレベル40ぐらいまでレベリングしてるっすね。」
「そうなんだな。」
グレイスの話を聞いていると、異変を察知したらしいオークがまたこちらに向かってくる。しかし今度先頭に立っているオークは、先程倒した普通のオークとは違い、鎧を身に纏っていた。
「鎧のオーク?」
「アレがオークエリートだね柊君。めっっっちゃ美味しいやつ!!食べたいなら逃がしちゃダメだよ。」
「もちろんです。」
レヴァを構えると、鎧をガチャガチャと鳴らしながら、こちらに歩いてきていたオークエリートが歩みを止め、背中に背負っていた両刃の大剣を片手で引き抜いた。そして鎧を着こんでいるとは思えない速度で距離を詰めてきた。
「っ!!」
あっという間に距離を詰められ、大剣が目の前に迫る最中、俺の体は勝手に動き、落雷のように落ちてくる大剣の刃にレヴァの峰を当てて軌道を逸らし、レヴァはそのままに俺は地面を蹴ると、飛び上がってオークエリートの顔面に飛び膝蹴りを叩き込んだ。
「ブモォォッッ!!」
鎧の兜が陥没し、使い物にならなくなったことで、オークエリートは兜を脱ぎ捨てて、豚ッ鼻から血をぽたぽたと垂らしながらこちらをぎろりと睨みつけてくる。
「ん~、めちゃくちゃ怒ってるみたいだよ柊君。」
「さ、流石に俺でもわかりますよミカミさん。」
「ブォォォォォォッ!!」
直後、オークエリートがけたたましい咆哮を上げる。すると、マンドラゴラの生息地の森の方からぞろぞろと、普通のオークやオークエリートが現れる。
「げっ、こ、こんなにたくさん……。」
「柊君、囲まれないように気をつけないといけないよ。」
「ど、どうすればいいですか?」
「ん~、手っ取り早いのはやっぱり全部パパッと倒しちゃうことじゃない?そのレヴァちゃんとスキルがあれば余裕でしょ?」
「ただ倒すのは簡単かもしれないですけど……オークたちには利用価値があるので、せっかくなら、全部食用にしてギルドに納めたいんですよね。」
必死に頭の中でイメージを思い浮かべながら、俺は目の前に迫るオークの大軍に向かってレヴァを構えるのだった。
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