第179話 友達の距離感
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朝から大変な出来事があったものの、とりあえずみんなで朝食をとった。その後、ミハエルさん達ヴェイルファースト一家には、エルフの国……パーピリオンの観光をしてもらうこととなった。
今日はケーキの販売はお休みだから、観光を楽しんで、気持ちのリフレッシュをしてもらえればいいな。
かくして俺はというと、ミカミさんやシア達と共に、カリンさんの屋敷へと招かれていた。しかし、今朝友達になることを約束してから、どうもカリンさんの様子がおかしい。
「うむむ……。」
俺の隣に座りたい意思は伝わってくるけど、どうにも友達の距離感がわからないらしく、悩んでいるようだ。
そんなカリンさんの様子を見たミカミさんがクスリと笑う。
「あははっ、カリンちゃん。初心だね〜……。とてもじゃないけど、580年間も生きてきたとは思えないよ。」
「し、仕方なかろう。わ、ワシ……友達というものを作ったの初めてじゃし……。」
「え゛っ?今まで友達とかいなかったの?」
「若い頃、他のことを全て放り出して魔法の研究に精を出していたせいで、気が付いたときにはエルフの族長となっておったのじゃ。故に、友達などという対等な者がいたことがないのじゃ。」
「わぉ……やっぱりエルフって特殊だね。寿命の概念が薄いからかなぁ。あ、そうだ!!」
ミカミさんは何かを思いつくと、カリンさんへとある提案を出した。
「それなら、人間の国に行って、友達の作り方〜みたいな本とか買いに行けば良いんじゃない?」
「おぉ、それは名案じゃ!!エルフの書庫にはそういった本はないからのぉ……。」
パチンとカリンさんが指を鳴らすと、俺達は一瞬にして、エミルへと移動させられた。そしてミカミさんの案内で本屋に赴くと、カリンさんとミカミさんの2人は、恋愛とかそういう系の本を探しに中に入って行ってしまう。
「ヒイラギお兄ちゃんは、読みたいお本ないの?」
「う〜ん、せっかくだから、料理の本とか見てみようか。」
「お料理の本っ!!シアも見たい!!」
「料理の本とか見てたらお腹減ってきそうっすね〜。」
「さっき朝ごはん食べたばっかりだろ?規則正しい食生活を心がけないと、太っちゃうぞ?」
「うっ、それは困るっす。自分、昔に1回太りすぎて飛べなくなったことがあるんすよ。あのときは大変だったっす。」
苦笑いしながら、グレイスは自分の体験談を語った。
「ちなみに、その時はどうしたんだ?」
「ガリガリになるまで、10日くらい絶食したっす。あれは本当にキツかったっすよ。」
「…………一応ワイバーンについて書いてある本とかも探してみようか。グレイスの体重管理は結構大事かもしれないからな。」
「た、体重管理って何するつもりっすか?」
「もし、ワイバーンについて詳しく書いてある本があったら、それに従って、体重の維持とか……それぐらいかな。」
「そ、それをやるってなったら、も、もういっぱいご飯食べれないっすか?」
「はは、冗談だよ。」
みるみるうちに顔を青ざめさせたグレイスの頭を撫でてから、俺も書店の中へと足を踏み入れて、料理本のコーナーで足を止めた。
「えっと……おぉ、色々種類はあるな。」
料理本のコーナーに置いてある本で、多く目につくのは『簡単な自炊飯100選』とか、そういう系の手軽な料理が載っている本だ。本格的な料理本は少ないな。
本格的な料理本を探している途中、とある作者の名前を発見し、思わず俺はその本を手に取ってしまった。
「作者……マイネ・フルール。これ、もしかしてマイネさんの本なんじゃ……。」
その本の題名は『家庭で作れる、お手軽宮廷料理』。王都であれだけ知名度があった人だから、本を出していたとしても何も不思議じゃない。
「も、もし本当にマイネさんが書いたものだったら申し訳ないけど、少しだけ立ち読みさせてもらおうかな。」
パラパラとページを捲ってみると、本の中に書いてあったのは誰でも簡単に作れるように、簡略化されながらも、押さえるべき要点はしっかりと押さえられている、わかりやすい料理のレシピだった。
「うん、確かに題名通りわかりやすい。これなら素人の人でもちゃんとレシピ通りに作るだけで、美味しい料理ができるだろうな。」
少し中身を読んだところで、俺はその本を棚に戻した。
「あれ、買わないっすか?」
「今の本はあくまでも一般家庭向け。俺が探してるのは、プロの料理人とかそういう人達向けの本だからな。本当にマイネさんが書いてるかもわかんないし……。」
あとでマイネさんに、この本を書いたかどうか聞いてみよう。もしマイネさんが書いたものだったら買おうと思う。
それからまた料理本を探すが、見つかるのは一般家庭向けの本ばかりで、プロの料理人向けの本はなかなか見つからない。そうこうしているうちに、何冊も本を買った、カリンさんとミカミさんがこちらに歩いてきた。
「待たせたのじゃ。」
「あ、そっちの方は良いのありました?」
「うむっ!!ワシは満足じゃ〜。」
どうやらあちらは満足できるようなものがあったらしい。俺の方はまた今度、もっと大きな本屋で探してみるとしようかな。
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