第173話 世界樹研究施設
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検査を終えた後で、俺達は世界樹を研究している施設へと案内してもらっていた。その施設に向かっている途中、世界樹の姿をこの目で見ることができた。
「ヒイラギ殿、ミカミ殿、アレが我が国が誇る世界樹じゃ。」
「でっっっか。」
「何メートルあるのあれ?」
「この前測った時で1000メートルほどあったはずじゃぞ。」
「1000メートル……。」
カリンさんの口から飛び出したとんでもない大きさに、思わずもう一度遠くに見える世界樹を二度見してしまう。ブロッコリーのようにもっさりとなっている世界樹のてっぺんは、空に浮かんでいる雲を今にも貫きそうだ。
「ちなみに、研究所は世界樹の麓にあるからの。近づけば近づくほどその大きさに驚かされるぞ?」
それから数分かけて世界樹の方に向かって歩いて行くと、世界樹がどんどん巨大になっていく。そしていざ世界樹の麓に辿り着くと、その巨大さに圧倒されてしまう。
「遠くからでも存在感あったけど、近づいてみたらやばぁ~……。」
「幹の太さは直径約300メートル。いかにワシらが矮小な存在なのか、これを前にするとわかるじゃろう?」
「ですね。こんなの見たことない。あの芽を出した世界樹もこんなに大きくなるんですかね?」
「それはこれからの研究次第じゃな。」
少し楽しげに言いながら、カリンさんは世界樹の近くに建てられた木造建築の小屋の扉を開ける。しかし、中には家具も研究道具も何もなくて、ここが本当に研究施設なのかと疑ってしまう。
「こ、ここが研究施設なんですか?」
「そうじゃ、正確に言えば……。」
カリンさんは小屋の中央に歩いて行くと、少し色の違う床を足でコンコンと独特のリズムで叩いた。すると、パカンと音を立ててその床が開き、下へと続く階段が現れた。
「さて、参るのじゃ。」
カリンさんが先頭に立って地下への階段を下っていく。その後に続いて階段を下っていくけど、意外にも地下に続いている階段は明るく、足元もハッキリと見える。
「さて着いたのじゃ。」
階段を下りた先には扉が一つあって、その扉をカリンさんが開けると、中から薬品っぽい匂いがこちらに漂ってきた。
「わ、薬品の匂い……病院みたいな匂いだね。」
「あんまり俺この匂い好きじゃないです。」
「くはは、研究ではいろいろな薬品も使うのでな。今使っていなくても、すっかり薬品の匂いが壁に染みついてしまっておるのじゃ。」
その扉をくぐって中に入ると、中では世界樹の種が薬品の入った瓶の中に入って浸けられていたり、おかしな色の土に埋まっていたり、いろいろな研究の痕跡が垣間見える。そしてその世界樹の種よりも目につくのは、とんでもない量の書類。ちらっと見ただけだけど、一日一日の世界樹の種の変化の様子などが事細かに記録されているようだった。
「ワシらの数百年分の記録が全てここにはある。世界樹の種を芽吹かせるために、成長を促す薬液に浸したり、魔力を多く含む土に植えてみたり……。ま、とにかく数えきれないほどいろいろな実験の記録がここにあるのじゃ。」
カリンさんはたくさんの書類が重ねられていた机を魔法で片付けると、そこに芽吹いた世界樹の種を置く。
「さて、これをどうしようかのぉ……。いざ芽吹いたとはいえ、その後のことを全く考えておらんかったのじゃ。」
「じゃあさ、どうして世界樹の種を芽吹かせようと研究をしてたの?」
「む?それはもちろん、世界樹が万が一枯れてしまった時に備えるためじゃな。」
「世界樹の実を量産しようとかってわけじゃなかったんだ。」
「うむ。」
カリンさんは少し悩みながらも、俺が植木鉢に植えた世界樹の種以外の芽吹いたやつを、試しに青色の薬品に浸した。すると、みるみるうちに種から生えていた根っこが何本にも枝分かれし、芽吹いていた芽もとんでもない速度で大きくなっていく。
「むぉっ!?と、とんでもない成長速度じゃ。」
驚いていたのも束の間、あっという間にその薬品を残さず吸い取って、大きく育った世界樹はポンと花を咲かせた。
「は、花ぁ!?馬鹿な、今ある世界樹は樹齢100年を超えてやっと花を咲かせたのじゃぞ!?」
「カリンちゃんが今吸わせた薬品が栄養たっぷりだったってこと?」
「そ、それだけが要因とは思えぬ。」
カリンさんは今度は青色の土を植木鉢にたっぷりと敷き詰めて、そこに芽吹いた世界樹の種を植えた。するとまたさっきのようにとんでもない速度で成長し、花を咲かせる。
「成長促進の薬品に浸したものと遜色ない速度で花をつけるか……。という事は世界樹の成長に栄養は対して関係は無いのか?」
「今の土は何だったんですか?」
「通称青土と呼ばれるこの土は、魔力を豊富に含んだ土なのじゃ。栄養は特に普通の土と変わりはないのじゃ。それでもこの速度で育つという事は……。」
チラリとカリンさんはこちらに視線を向けてくる。
「やはりヒイラギ殿の存在が特殊だったという事かの。」
「け、結論は俺に至るんですね……。」
「そりゃあそうじゃろ。だってそなたが世界樹の芽を芽吹かせたのじゃからな。そういうわけで、これから研究にもしばしば付き合ってもらうぞ。ヒイラギ殿……くっくく。」
まだまだこれからエルフの国にはたくさん来ることになるそうだな……と、その時俺は確信してしまった。
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