第172話 エルフの国で健康診断
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あれよあれよという間に、俺はエルフの国のどこかの施設へと連れて行かれ、真っ白で殺風景な部屋の中に連れ込まれた。
「う、なんかこの光景は……。」
妙に胸が締め付けられるような光景に少し不安を感じていると、いつの間にか看護師のような服に着替えていたカリンさんが、こちらを見下ろしながらとんでもないことを言ってきた。
「さてと、では服を脱いでもらうのじゃヒイラギ殿。」
「えっ……と、それって?」
「全部じゃ。上着も下着もすべて脱いで、全裸になるのじゃ。それでこの検査着に着替えてもらう。」
「あ、あのじゃあ一回一人にしてもらっても?」
「む、何をそんなに恥ずかしがるのじゃ?今から体の中身を隅々まで見られるのじゃ。外側を見られる程度、なんともないじゃろ?」
「い、いや、流石に恥ずかしいです。別に中身を見られるのは一向に構わないんですけど……。」
「ふむ、そういうところは人間らしい感性じゃの。では着替え終わったら呼ぶのじゃ。ワシは外で待っておるからの。」
「柊君、私も出といたほうが良い?」
「できれば……。」
「オッケー、じゃあカリンちゃんと一緒に待ってるよ~。」
2人揃って部屋を出て行き、取り残されたのは俺一人となった。
「シア達をルカに預けてきて正解だったな。ここに連れてきていたら多分退屈だったろうし、何よりこんな姿を見られたくはないからな。」
そう呟きながら、俺は用意されていた服に着替えていく。検査着は薄くて、なんかひらひらしていて、ちょっとした風で舞い上がってしまうのではないかと不安になるようなものだった。下着まで脱いでしまって、股下がスースーしているから、そういう不安が生まれてるのかもしれないけど……。
一先ず着替え終わったところで、俺はドアの向こうにいるであろうミカミさん達に向けて声をかけた。
「着替え終わりました。」
そう声をかけた直後、カリンさんが勢いよく扉を開けて、ミカミさんと一緒に戻ってきた。
「念のため確認じゃが、下もちゃんと脱いでおるか?」
「脱いでますよ。そう言われたので、ちゃんと。」
「うむ、ではそこのベッドに横になるとよい。」
促されるがまま、ベッドに横になると、カリンさんと同じ格好をしたエルフの人達が部屋の中に入ってきて、ベッドの周りを取り囲む。マスクをしていてわかりづらかったけど、その中にはフィースタさんの姿もあった。
「ではこれから検査を始めますので、動かないでくださいね。」
フィースタさんがそう言うと、吸盤のようなものが付いた植物をペタペタと体の至るところに張り付けられていく。
「メディカルプラント装着完了です。」
「うむ。では情報を紙に投影するか。」
カリンさんは俺の体に張り付けたメディカルプラントという植物に手を添えながら、1枚の紙に向かってもう片方の手を翳した。すると、その紙に文字が浮かび上がっていく。
「ふむ、ワシが確認した通り、ステータスは一般的な人間と大差はない。スキルは料理だけ……か。普通、その歳まで生きていれば、他のスキルも身についているとは思うのじゃがなぁ。これが引っかかる。それに運のステータスがMAXか……これも常人ではあり得ん数値じゃ。」
ぽつぽつとカリンさんがその紙に書かれた情報を見ながらつぶやいていると、ミカミさんが彼女の方に飛んでいった。
「カリンちゃん、肝心の病気の方はどうなの?」
「ん、そっちの方は少々待つのじゃ。フィースタ、ヒイラギ殿の体液を。」
「かしこまりました。ヒイラギさん、ちょっとお口を開けてもらえますか?」
「へ?わ、わかりました。」
口を開けると、綿棒のようなものを手にしたフィースタさんがそれで唾液を採取して、メディカルプラントの葉っぱの上に垂らした。
「体液採取完了です。」
「うむ、ではそろそろかの。おっ、そう言っておる間に来たのじゃ。なになに……病の反応は無い。じゃが、少々疲労がたまっておるようじゃな。」
「ほっ、病気は発見されなかったんだね。安心したよ~。」
ホッと胸を撫で下ろして、ミカミさんはこちらに飛んでくると、俺が頭を預けている枕に座った。
「良かったね柊君。病気は無いってさ。でも疲労がたまってるって話だから、何処かでリフレッシュしないとね。」
「それならば、我が国の薬湯にでも浸かっていくとよい。7日ぶっ通しで研究に励んでも疲れが吹き飛ぶ、素晴らしい温泉じゃぞ。」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて、いただきます。」
「うむ。」
カリンさんは俺の情報が書かれた紙に目を通しながら、体のいたるところにに張り付けていたメディカルプラントを取りはずしてくれた。
「しっかし、結局世界樹の種が芽吹いた理由はわからずじまいか。」
カリンさんのその言葉にフィースタさんが反応した。
「世界樹の種が芽吹いた?カリン様今そう仰いましたか?」
「うむ、これを見よ。」
カリンさんは芽を出した世界樹の種をフィースタさんに見せた。すると、マスク越しでも驚いているのがこちらに伝わってくる。
「い、いったいどうやって……しかもこの数は。」
「なぜかは知らんが、ヒイラギ殿が世界樹の種を手にした途端に芽吹いたのじゃ。故にここで体を検査し、原因を究明しようとしておったわけじゃ。」
「あぁ……急にヒイラギさんをここに運び込んだのはそういう理由だったんですね。ようやく理解できました。」
「ま、残念ながら原因の究明には至らなかったがの。じゃが、ヒイラギ殿はこれからも協力してくれるらしいからの。究明の機会は何度でもやってくる。」
「ではそれに備えてメディカルプラントの品種改良もした方がよさそうですね。さらに詳しい情報を得られるように……。」
「そうじゃな。それは大至急で取り組むべきじゃ。」
そう話しながらこちらにチラリと視線を送ってくるカリンさん達の目は、新しいおもちゃをもらった子供のように好奇心でいっぱいなのが伝わってきた。
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